花のごとく〜痛みという快楽〜-2
シルクのつるつるとしたシーツが敷いてあるベッドにねころがり、長い手足を無造作に広げ大の字になった。
「誰かいないの…」
不意に口にだしてつぶやいてみる。
誰か私を妻でおわらせないで。
女として満足させて。
私のヴァ○ナはこんなにも潤っているのよ………。
しかし、いつもその声は二十畳あまりの部屋にむなしく散ってゆく。
(わかってはいるけれど……やりきれないわ…)
佳代がため息をついたその時だった。
不意に、ベッドの横のヴェランダに面した大きな窓に何かが当たったような大きな音がした。
「だっ、誰っ!?」
佳代がそう叫ぶと窓がゆっくり開き、一人の汗にまみれた汚らしい男が出てきた。
日に焼けた黒い顔をよおく見てみると、庭師の喜一であった。
「喜一、何をしているの?!?」
佳代は思わず叫んでしまった。
あまりの予想外の出来事に頭が真っ白になったが自分が裸であった事を思い出し、いそいでシーツを引き上げ体を覆う。喜一は答えず、佳代体をじっと見つめた。
佳代も喜一を見る。
喜一の家は代々ここの庭師なので、佳代は幼いころから喜一と顔なじみであり、かつ毎年避暑に訪れる佳代のいい遊び相手であった。
年頃になってからは身分の違いからか、思春期の照れからか全くといっていいほど声をかけあわなくなったが、ここに来るときには必ず初めに喜一は佳代に挨拶をすることになっている。
あまり顔を上げず、うつむいたままぼそぼそと一言二言話し仕事にもどってゆく、真面目だけが取り柄といってもいい喜一を今回も初日に見たばかりではないか。
しかし目の前にいる男は――……。
足袋のまま板張りにあがり、体格がめっぽういい。
顔は佳代をみて興奮し、瞳は野獣のようだった。
「お…奥様、俺は……」
喜一が沈黙をやぶり何かを言いかけたその時、部屋の外からは階段を登る音が聞こえ、入り口のドアが勢いよくノックされた。
「奥様、奥様?いかがなさいました」
一連の騒ぎの音の大きさを心配したメイドが様子を見に来たようだった。
我に帰った佳代はメイドに助けを求めようとしたが、ドアを開ける手前ではっと気がついた。
今、自分は一糸まとわぬ姿で、部屋に喜一と二人っきりなのだ。
助けを求めようともこの状況を他人が見たらどう思うだろうか…?
ふりかえって喜一を見る。日に焼けた黒く太い首にだらだら汗が流れ落ちてゆくのがみえた。
(ペ○スは勃起しているかしら……?)
そんな事が一瞬頭を通り過ぎたが、そんな卑しい事を考えるなんて、と佳代は下半身が熱くなるような恥ずかしさを感じて首を振った。
しかしきっとこれを見られたら、面白おかしく盛られた噂に尾ひれがつき、自分に好意的なものではなくなるだろう。
そうなるならば……