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午前零時のイブ
【ファンタジー 官能小説】

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午前零時のイブ-4

「それでは私が舞踏会に行けません」
「まだ行こうなんて思っているの」 大姉がイブの二枚しかないドレスを引き裂きます。そして、「そうね、その仕事が全部終わったなら好きにすればいいわ」
「そんなの、できるわけないじゃないですか」
「あら、そうなの。のろまね」
継母と姉達は笑いながら行ってしまいました。
しばらくして下姉が怒ってやってきました。
「あなたのドレス何よ、欠陥品だわ。こんなものを私に渡すなんてどういうつもりなの。返すわ」 放り投げると、交換と言った自分のドレスを持って出て行きました。
イブはせめて、自分のぬったものが帰ってきたので、満足でした。ベッドの上に広げて置きます。
レースの飾りや縫い付けたリボンでできた花が少しちぎれています。何とか頑張れば治せるかもしれません。そう思って調べていると、ドレスのウエストの部分が大きく裂けていました。
きっとお菓子の食べすぎです。ウエストが入らないのを、無理やり着ようとしたのでしょう。
それは最初からやり直すしかない、どうしようもないものでした。
これでは仕事が終わったとしても着ていく服がありません。
その間に、玄関が騒がしくなりました。継母と姉達の馬車が来てお城へ向かうようです。
それは美しい二頭立ての馬車でした。
「いってらっしゃいませ」そう言って、シュミーズ姿で見送るしかありませんでした。
「どう私きれい」大姉がクルッと回って見せます。
「私が見染められたらどうしましょう」下姉が夢見心地に言います。
「あらお前は無理よ」
「それはお姉さまでしょう、乙女でもないくせに」
「お前に言われたくないわ」
「これこれ、いい加減にしなさい。黙っておけば分からないでしょう。ほら行きますよ」カリスが割って入りました。「痛い痛いと泣いておけば、男に違いなんてわかりゃしません」
「やっぱりカリスだわ」大姉が感心します。『お母様』とも呼びません。お城ではそう呼ぶように言いつけられているのです。
三人が出て行きました。イブは炊事場に戻って、モップを持って立ち尽くします。
≪何からしよう≫ でも何も手につきません。≪何もかもほっておいて寝てしまおうか≫
他に良い考えを思いつけませんでした。
裏の扉を叩く音がします。だれが来たのか、開けました。
乞食が立っています。 「何か恵んでくださいませんかね」
「そうしてあげたいのですが、私はもう何も持ってないの」
「こんな立派な屋敷に住んでいて、それはないんじゃないですか」
「確かに家は立派よ。でもここは私の家ではないのかもしれません」
「じゃあお前さんの持っているものは何だね」
「私にはこの体しかありません」
「ではその体で私を包み込んで、あたためてくださらんかね。最近は冷たい風が吹きはじめて、体が冷えるのです」
かまどの火はもう小さく落としてあります。仕方なく抱きしめてやりました。
少しだけのはずなのに、男は胸に顔を押し付け、おしりに手を回して触ってきます。
このまま襲われるような気がしてきます。
そんなこと考えちゃいけないと思っても、身を引き離そうとしてしまいます。
「どうしたんだ。突き放して逃げないのか」
「逃げさせてくれますか。わたしは意に沿わない人に抱かれるなんて何度も経験させられています」


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