面接-9
並んで歩くが、程よい距離感を保つ鉄平。馴れ馴れしく距離を詰めて来たらどうしようと思っていたが、そこらはわきまえているようで安心した。駅に着くといつも通り人通りはまばらだった。だがすれ違う女性がチラッとこちらを見て来る。鉄平の顔を見るのと同時に自分も見られているような気がする。
(ヤダ、何かオバサンがイケメン連れてるとか思われてそう…。恥ずかしいなぁ…)
確かにこうして見ると小さな町にしては目立つぐらいのイケメンで高身長。女性がチェックしない訳がなかった。それに男性と2人きりでこんな時間に歩く事はほぼないので少し緊張した。そんな視線を感じながら電車に乗り二駅先の新街駅に着く。
駅を出て少し歩くと爆笑爆笑と言うチェーン店の居酒屋があり、そこに入る。
「ここでいいかな?」
「はい。」
2人は暖簾をくぐり店員に案内され席につく。金曜日とあって客はそこそこいたが、ニ席ほど空いている。寂しくもなく、騒がしくもなく、ちょうどいいぐらいだ。
席に座り、すぐにビールを注文する。
「居酒屋とか、久しぶりだわ。」
「そうなんですか?俺は結構来ますよ。」
「女性と?」
「女性とも、です。」
「ふーん♪」
お互いニコッと笑う。間もなくビールが運ばれて来て軽く、乾杯まではいかないが、挨拶程度に軽くグラスを合わせて飲み始める。
「いつもこんな時間なんですか?帰るの。」
「そうですね、このぐらいです。」
「まー、CEOだから仕方ないか…。ちゃんと仕事してる証拠ですね。前にいた会社なんか上役は部下より遅く帰る時なんかなかったですよ。部下は結構遅くまで仕事してるんですけどね。」
「うちはフレックス制だから、仕事が終わらない時はその分早く来てするから帰りはみんな早いんですよ?」
「そうなんですね。自己管理がしっかりしてないとフレックスは難しいですよね。サボるる奴はサボるだろうし。でもその分後で跳ね返って来ますからね、サボってると。」
「そうね。その通りね。」
「でもみなさん生き生きと仕事してるようだし、女性は仕事真面目にしますもんね。男はいかにサボるかしか考えませんが。」
「そんな事ないでしょー。」
「いえ、やるべき事を自分で線引きして、勝手にやり切ったって判断してそこで仕事止めてサボったりするの、多いですから。」
「そうなんだー。」
何故だろう、ほぼ初対面なのに緊張感が解れるのが異常に早く感じた。すでにリラックスしている自分に気づく都姫であった。