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ある熟女の日々
【熟女/人妻 官能小説】

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義弟とのデート-1

 体調の変化に気付いて産婦人科を訪ねたら、案の定妊娠していた。会社から帰った夫に伝えると普段は感情を表さないのに、さすがに心を動かされたようだ。

 「へえ…、オレ、父親になるのか…。ピンと来ないな…。キミはどう?」
 「わたしも母親になるって言われても、初めてのことだし…」
 「まあ、そういうものなんだろうね。実家には伝えたの?」
 「ええ。昼間、電話して伝えました」

 そんなやり取りを夫としたのを覚えている。それから数カ月して、いよいよお腹も大きくなってきた。いつものとおり夫と買い物に行こうとすると、今日は一緒に行くのを渋っている。

 「まあ、なんていうか、キミのお腹もいよいよ目立ってきてさ。大きいお腹をしたキミと歩いていると、いかにも『ボクが原因をつくりました』ってな具合じゃないか」
 「そんなこと気になるの? どこの夫婦も平気で歩いているんじゃない?」
 「まあ、そうなんだろうけどさ…」

 原因を作ったと見られるのがイヤだというようだが、それなら大きなお腹を抱えてふうふう歩いているこちらはどうなるのか…。思いもしなかった夫の自意識過剰ぶりに呆れてしまうが、食材やら何やら買い物には出かけなければならない。さすがに妊婦に荷物を持たせるのは気が引けたのか、夫はスーパーマーケットには同行し、買い物が済むと荷物の入ったレジ袋を両手に提げて帰り道をさっさと歩き出した。

 社宅の手前には傾斜は緩いものの長い坂道があるが、夫は足を速めてスタコラと社宅に向かっていく。わたしは、とうに一緒に歩くのはあきらめて、つまづいたりしないようにゆるゆると大きく遅れて歩いていく。

 「やあ、ねえさん」

 後ろから声を掛けられる。義弟だ。

 「どうしたの? 義姉さん、ひとりなの?」
 「なんだか、お腹の大きな妻と歩くのが恥ずかしいらしいのよ」
 「へえ。兄貴らしいと言えばらしいけど。でも、たまったもんじゃないね」

 わが意を得たりというところだが、迂闊に相槌を打つわけにもいかない。

 「オレだったら、この女を孕ませたのはオレです! って自慢したいけどね」

 それもどうかと思うが、義弟なりの慰めの言葉なのだろう。

 「でも、確かに随分大きくなってきたよね。大変じゃない?」
 「まあ、自分ひとりじゃないっていうか。転んだりしないようには気を付けているけど…」
 「兄貴は仕事人間だからね。その点オレは学生だから、何でも言ってよ」
 「ありがとう。でも、今日はどうしたの?」
 「バイトで今日はこっちの方に来ててさ、さっき終わったんだけど、せっかくだからちょっと義姉さんの顔でも見ていこうと思って。一応さっき家に電話入れてみたんだけど、誰も出なかったから、空振りでもまあいいかと思ってね」
 「それは悪かったわね。ご覧のとおりで外に出ていたから…。すれ違わなくてよかったわ。寄っていって」
 「まあ、でも今日は兄貴もいるんでしょ。日曜だろうが仕事に行っちゃう人なのに今日は運が悪いな…。今度、平日にでも出直すよ」
 「ここまで来て帰らなくてもいいじゃない。久しぶりにお兄さんにも会っていったらいいじゃない? 寄っていきなさいよ」
 「まあ、家には上がらないけど、兄貴の代わりに一緒に歩いてあげようか」
 「あら、うれしいわね」

 もちろん戯れで…なのだろうが、義弟がわたしの手を握ってくる。束の間の疑似夫婦の気分で道を歩いていると、この状況を終わらせてしまうのが惜しくなる。夫の姿はとうに見えなくなっている。

 「ちょっと遠回りしていこうかな。こっちに公園があるから…」
 「いいね。でも、義姉さん、疲れたりしてない?」
 「大丈夫よ」

 公園の門をくぐって散策路を手をつないで歩いていく。前から日傘をさした老婦人がこちらを見て微笑みかける。

 「いい赤ちゃん産んでくださいね。ご主人も奥さんをしっかり応援してね」
 「ありがとうございます。しっかり応援します」

 あたかも自分が夫であるかのように返事をする義弟。老婦人とすれ違ってしばらくしてから義弟がささやきかけてくる。

 「義姉さん…しっかり『応援』するからね。兄貴じゃ足りない分を…」
 「…え?」
 「明日、行くよ」

 そう言い残すと、引き留める間もなく、戸惑うわたしを置いて義弟は走り去っていった。社宅に着いて階段を上っていると、公園のスピーカーから午後3時のチャイムが流れている。

 「…悪かったな。今度は一緒に歩くよ」
 「ううん、大丈夫。ちょっと公園に寄ってたの」


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