HAPPY LIFEC-1
(えっ、何?いやっ…。もう何なの?)
近すぎて目も開けられずに下を向く。
「明日香ちゃん、コレ」
恐る恐る目を開けてみると、先輩の手のひらが。
「髪の毛に付いてたよ」
よーく見てみると、白い糸屑がのっていた。
「あっ…ありがとうございます」
なんだ…。ビックリした。
顔が赤くなっているのが自分でもわかるから恥ずかしい。
「伸二、何やってんの?」
「あぁ、真由か。今行くからちょっと待ってて」
私のことを横目で見ながら、その人は教室に入っていった。
「彼女さん、ですか?」
聞きたくなかったけど、口が勝手に動く。
「ん…いちおうね」
こめかみの辺りを人差し指でかきながら言う。
「私帰ります。今ならまだ夕里に追いつくかもしれないんで。さようなら」
急いでその場から逃げた。
「はぁ…」
思わずため息がでる。まさか彼女さんが出てくるなんてね…。しかもスタイル抜群だし。
無意識にケータイを取り出して待受画面を見ると、受信メールありの文字が。
『さっきはごめんね。ミューカフェで待ってるよ』
ミューカフェというのは学校の近くにある喫茶店で、学生向けのメニューが豊富に取り揃えてあるからいつも学生でいっぱい。夕里や早絵とはしょっちゅうここに来ている。
「明日香、こっちこっち」
中に入ると、窓際に座っている夕里が手を振ってくる。テーブルの上には大きなお皿が置かれていて、そこには食べかけのワッフルがある。
「ここのワッフル、超おいしいんだよ。一口食べてみない?」
目を輝かせている夕里。よっぽど気に入ったのね。
「食べる!!私甘いの大好きなの」
「ねぇ、関口先輩と何かあった?」
なぜか小声で聞いてくる夕里。
「あるわけないじゃん」
「そっか。期待しすぎだったか。でも明日香、先輩のことちょっと気になってるでしょ?」
うぅっ…。
「ん…なんでわかるの?」
「バレバレだよ。明日香すぐ顔に出るもん」
「先輩にもバレてるかな…?」
「そうだね」
チョコレートソースのかかったワッフルを口いっぱいに頬張りながら断言する。
「夕里、どうしたらいいと思う?さっきね、先輩の彼女に会ったの。すごくスタイルいい人だった」
頬杖をつきながらまたため息をつく。
「彼女がどうゆう人かなんて関係ないじゃん?大事なのはこれから明日香がどう動くか…」
妙に強気な態度の夕里。まさか今の彼女から奪おうなんてこと…考えてるね、この様子は。
「私別に先輩と付き合いたいなんて考えてないからね。それに先輩には彼女がいるわけだし」
「彼女がいなかったら付き合いたいって思うでしょ?同じじゃない」
夕里…ちょっと怖い。
まぁ確かに彼女がいなかったら思ってたかも。