第十章 見下ろした風景-1
第十章 見下ろした風景
シャワーをいただいた後、二階の寝室に連れていかれた。
藤本さんが繋いでくれた手の温もりが、嬉しかった。
階段を登りきると、階下のリビングのソファーに裕君が眠っているのが見えた。
毛布をかぶり、静かに寝息をたてている。
その脇に座るかおりさんは、母のように裕君を見つめている。
ふと、視線を上げた表情は嬉しそうで、人差し指を口元に当てた後、ゆっくり唇を動かせている。
『ご・ゆ・っ・く・り・・・・』
スローモーな動きから、そう、読み取れた。
バスローブ姿の彼女は妖しい色香を放ちながら、裕君へと視線を戻した。
目覚めを待つ時間さえも楽しいかの如く、幸せそうに寝顔を見つめている。
(かおり・・・さん・・・・)
私は嫉妬よりも、愛する夫を託す安心さを感じていた。
(裕君を・・・お願いします・・・・)
そして、藤本さんの胸にぶつけるように頭をもたれさせたのでした。