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『僕っていけない女の子?』
【SM 官能小説】

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『僕っていけない女の子?』-3

 翌々日から、見舞いの人たちが来るようになった。
 まず午後一番にママと言っていた女の人が花束を持って来て、窓際に飾ってくれた。
「ねえ、僕は死のうとしたみたいだけど、何があったのかな?」
 ママならいろいろ教えてくれるだろうと思って、探りを入れてみた。
「……薫は何も覚えてないの?」
「な、なーんも思い出せない」
「薫が自殺を繰り返すような悩みが何なのか、ママにもよく分からないんだけど……」
 彼女の説明によれば、僕は学校から帰宅して、制服を着たまま大量の睡眠薬を飲んで浴槽に潜り込んで水死しょうとしたらしい。どういう加減なのか、頭をひどく浴槽の縁にぶつけてしまい、恐ろしいほどの出血をしていたと言う。
「変なこと訊くみたいだけど、僕は昔から女の子だったの?」
 ママらしい女性は一瞬驚いたような顔をして、それから笑い転げた。
「うふっ、あははっ……何を言い出すのかと思ったら。薫は昔からずっとお人形さんみたいに可愛らしい女の子じゃないの。馬鹿ねえ」
 だけど、僕は時々「僕」とか「俺っち」とか言うことはあったらしい。
「や、やっぱりそうなんだ。じゃあ、どうして今の僕は男の子なんだろ」
「気味のわるいこと、言わないで……本気で、男だと思ってるの?」
「僕は……気が付いた時から、男なんだ」
「不思議ねえ。薫はそんな娘じゃなかったのに」
 彼女にも理解が出来ない僕の性認識らしい。
「早く自分のことを思い出してくれるように、明日、赤ちゃんの頃からのアルバムを持って来るわ」
 彼女はそう言って帰って行った。

 夕方近くに見舞いに来てくれた男子は小野田卓也と名乗ったかなりのイケメンだった。やはり小さな花束を持ってきてくれた。
「カオルうっ。俺、心配で心配で、この一週間、夜もろくろく眠れなかったよ」
 彼は涙ぐんでいるような目だった。
「僕は……記憶喪失らしくて。君のこと、何も覚えてないんだ。ごめん」
「ええっ。マジかよ。そんなのあり?」
 彼は馴れ馴れしい態度で、僕とは長く付き合っている仲だと告げてきた。
「んじゃ、僕とエッチもしてたり?」
 僕は思い切って大胆に切り込んでみた。
「そんなことも覚えてないの?」
 卓也は顔を赤らめながら、僕の拘束されている手をギュッと握ってきた。
「してたってこと?」
「う、うん。カオルだけは、俺のことを理解してくれてたのに……」
 卓也はそう言って、僕の手の平に頬を寄せてくる始末だ。
「早く俺のことを思い出してくれよな」
 彼は30分ほどいてから、しょんぼりとして帰っていった。

 夜になって病室に押し掛けてきた二人は革ジャンを羽織ったいかにも不良っぽい雰囲気の男たちだった。二人は黒岩とタケシと呼び合っていた。
「へへへ。カオル、また死に損なったそうじぇねえか」
 黒岩という男はベルトに付けているチェーンを弄りながら、僕の顔を覗き込んでせせら笑うのだ。
「おまえ、頭から血を流して倒れてたって聞いたけどよ。頭、イカレちまってねえか?」
 タケシって男は花瓶に活けてある花束の花ビラを乱暴にむしり取るような奴だった。
「ぼ、僕と君たち……どんな関係?」
「はーん?……何言ってんだ、こいつ。やっぱ、頭、イカレてやんの。僕だってさ」
「君たちのこと、僕は何も覚えてないから……」
 まだ首も腕も固定されていて、僕は身動きの出来ない人形みたいなものだった。
「ふざけんじゃねえよ。こうして見舞いに来てやったのに、なんて言い草だよ」
 黒岩は怒りを露わにして、僕の顔の前にタバコ臭い顔を突き出してきた。近くで見ても見覚えが無いのだから、どうしょうもない。
「へへっ。おまえが退院すりゃ、また可愛がってやるからよ。連絡を寄越しな」
 脅かすようなセリフを並べて、二人は早々に去って行った。

 宮内薫って女の子はかなりの不良少女だったのかもしれない。卓也というイケメン男子と付き合っていながら、不良たちともイケナイ遊びをしていたみたいだ。
 だけど、その女の子と僕は別人で、赤の他人としか思えない。



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