恋愛宣言-5
「待ち受けかよ!」
ぱかんと開かれた携帯があたしの目の前に差し出される。待ち受けは、引きつった顔で笑うあたしと『ポチ』の写メ…。
「だってぇ〜、春嬉さんのこと好きなんですもん〜」と、くねくねする先輩。バカだ。
「あの…もしもし、先輩…」
「本当は、ちゃんとした告白したかったんですけど、近くにいるって思った瞬間、頭真っ黒になって」
真っ白です。
「言っちゃってました」
てへへぇと笑う先輩は、本当に可愛いくて、優しそうで、案外悪くないなんて思っちゃって…。
「広夢先輩、やっぱり敬語やめて下さい」
「何でですか?」
そう言って、不思議そうに先輩は首を傾げる。
「だって…付き合ってるのに、敬語は変じゃないですか…」
うっわ、恥ずかしいぃ。自分の気持ち言うのってすごい勇気いるんだ…。
「…分かった」
ぽかんとしていた先輩がみるみる内に笑顔になった。
「でも、さん付けはやめません!春嬉さんは春嬉さんですっ!!」
何だい、その自論は。まあ、それくらいならいいけど…。
「オッケー」
先輩はとても嬉しそうに笑った。
「じゃあ、俺からもお願い♪」
敬語じゃなくなってる。うん、自然自然!
「広夢って呼んで!付き合ってるのに、先輩は変でしょ?」
…何っ!?予想外だわ…。呼び捨てって相当恥ずかしくないっすか?ヤバくないっすか?
「ひ…ひろっ、ひっ…ひ、ひ、ひろ…」
あたしは壊れたおもちゃか!ぃよっし、女は度胸!!
「ひっ、ひろ…む…」
はっずかし…。でも、たぶん、もともとオレンジ色に染まってるから紅潮してるほっぺはバレてないと思う。
「はいっ!!」
にこっと笑って、俯くあたしを覗き込む。恥ずかしくて、でも嬉しくて、だけど照れ隠しってやつをした。
「見るな…」
『ひろむ』の頬をポンと軽く叩いてみた。
「………………」
無言?エ、無言?バカだから本気しちゃったかな!?
「…照れる春嬉さんもかぁわいぃーっ!」
…んなっ!?
「春嬉!あんた、広夢さんと付き合ったの!?」
「ちょっと、広夢さんから告られたんだって!?」
「うちらも狙ってたんだけどっ。ねぇーっ」
「おっ、結局どうなったんだ?」
「春嬉!あんた、広夢さんと突き合ってるの!?」
それは違いますよぉー。
やっぱりっていうか、当然ていうか…。想像してた以上だわ、こりゃ。
どうやら、あたしと亜美が知らなかっただけで、広夢ファンは大勢いたらしい。あぁ、ファンのみなさん、すみません……くふ♪謝りつつも、優越感に浸るあたくし。まぁ、正直、気分はいいっすわぁー♪
「春嬉さーん!」
「なぁに?」
教室中の恨めしそうな視線を浴びるのだって、悪くないなぁ、なんちて。
「お昼一緒食べよう!俺、庭園のベンチで待ってるからっ」
「うん、あっ、亜美も一緒にいい?」
「もっちろん!」
「んじゃ、後でね」
手を振る広夢が三学年棟にいくのを見届けて、席に戻る。
くあー、たまんねぇー。あたし、突き合って…いやいや、付き合ってるんだぁ。楽しいなぁ。楽しいなったら、楽しいなぁ♪
「顔…」
不意に、亜美の不機嫌な声がした。