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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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レナードの覚醒(中編)-10

「ん〜、おはよう、セレスティーヌ」
「おはよう、マキシミリアン」

セレスティーヌとまだぼんやりしているマキシミリアンがキスを交わした。

マリカが動揺して、アルテリスが瞬きをして驚いていた。
ストラウク伯爵とテスティーノ伯爵も、マリカとアルテリスに起こされている。

「伯爵様、お酒呑むなら声をかけてくれたらいいのに!」
「あらあら、スト様、私たちがいないうちに、ずいぶんお酒を飲まれたみたいですね」

起こされた3人が温泉にゆったりつかっているあいだに、セレスティーヌはマリカと一緒に朝食の準備をした。
アルテリスは先に用意したレナードの分のスープとパンを、レナードの部屋へ運んで食べさせていた。
精霊たちはレナードの口に匙を運んだりちぎったパンを入れて食べさせているアルテリスに、話し合った結果を小鳥が囀ずるような声で伝えていた。

「え、レナードの身体の中に入る?」
「パンとかスープみたいに?」
「レナードに食べられるってこと?」

アルテリスに精霊たちは方法を説明しようとして、困っていた。

「わかった。とにかく、みんなでやってみるって言ってたって、伯爵様に伝えればいいんだな」

アルテリスに詳しく説明するのはあきらめたらしい。どうすればいいか、方法をかなり精霊たちは話し合っていた。
自分たちの考えた方法ができるか伯爵様に確認してみよう、というところでレナードが空腹で目を覚ましたので、精霊たちは話し合いを中断したのである。

後宮ではアーニャの亡霊が、ローマン王の隙ができる瞬間を狙って気配を絶って待っていた。
後宮で妻妾と交わり、血を奪いながら射精した瞬間に、ランベールの身体に飛び込む。ローマン王の意識が恍惚としている一瞬が好機だが、その前にヴァンピールたちに気づかれたら滅ぼされてしまうかもしれないと警戒していた。

「普段は伯爵様が、お食事の準備をなさるんですか?」
「マキシミリアンは料理だけでなく洗濯もしますよ。ただし、何かに夢中のときは、急に何もしなくなりますけどね」

マリカはダンジョンで暮らすマキシミリアン公爵とセレスティーヌ公爵婦人の普段の生活の話を聞きながら、朝食のスープ粥を煮込んでいた。

「スト様は、私が来る前からこの家でひとり暮らしをなさっていましたから、本当はなんでもひとりで、ちゃんとできる人なんです。でも、私に任せてくれてるんです。それに、今朝みたいに朝までお酒を呑んで起こされるのもめずらしいんです。私より早起きなんです。よっぽど昨夜はお酒を飲みながら話していて、楽しかったんだろうなって。私とスト様だけだと、あんなに飲みつぶれるほど飲みませんから」

セレスティーヌは、ストラウク伯爵のことを、マリカがとても大好きなことが話していて良くわかった。

「マリカは、ストラウク伯爵のことをとても愛しているのね」
「え、あ、愛して……」

普段、ストラウク伯爵とマリカとの会話の中で、好きとか愛していると口に出すことがないので、セレスティーヌに言われて、動揺していた。

「あら、ストラウク伯爵やマリカは、愛してるとか、自分から言ったり、言われたりはしないのですか?」
「し、し、しませんよ。恥ずかしいじゃないですか!」
「朝、目を覚ました時と、寝る前にキスもしないのですか?」
「ええっ!」

セレスティーヌは、ストラウク伯爵やマリカの愛情表現は、愛し合っているけれど、もどかしい感じだと思った。

(ゼルキス王国の人たちって、みんな、こんなに大胆なのかなぁ?)

居間で集まって朝食を食べている時、アルテリスから精霊たちの伝言を、賢者マキシミリアンは聞いた。

「セレスティーヌ、朝食のあと食器の片づけが終わったら、レナードのところに行ってみようか」
「そうね。あの子たち、朝まで話し合っていたのかしら」

それを聞いて、ストラウク伯爵とマリカか顔を見合せた。

「公爵様、食器の片づけはマリカがしますから」
「セレスティーヌ様、あの、そんなに気を使わなくても大丈夫ですから」

それを聞いてマキシミリアンが首をかしげて、少し不思議そうな顔をした。

「公爵様、客人へのもてなしという習慣があります。食器の片づけなどを客人にさせるのは、失礼なことなのです」

テスティーノ伯爵が、マキシミリアンとセレスティーヌに説明した。

「しかし、テスティーノ伯爵、執事やメイドがいるわけではないのでしょう?」

セレスティーヌがそう聞いた。

「テスティーノ、街や王都ではどうなのかね?」
「兄者、貴族が客人を招いたり、泊めたりすると、その邸宅の執事やメイドが客人について、何でも応対します」

すると、会話のやり取りを聞いていたアルテリスがクスクス笑い出した。

「公爵様は、あたいと同じだね。旅ばっかりしてきたんだね。旅暮らしをしてると、何でも自分でやらないと落ち着かないから。あたいも伯爵様の館に行ったときは、変な感じがしたよ」

それを聞いて、ストラウク伯爵が納得したような顔になった。

「マリカ、公爵様は王族なのに偉ぶることもせず、身のまわりの世話をされるのも、苦手な人のようだ。この地へ来た初めての伯爵も、きっと公爵様のような人だったにちがいない。村人たちと暮らせば漁や狩りを一緒にして、宴には一緒に焚き火の前で酒を村人にまざって酌み交わすだろうよ」
「では、公爵様、セレスティーヌ様、お片づけは手伝っていただくことにしますか。でも、調べものや何か準備があればそちらを優先でお願いします。私の仕事がなくなってしまいますから」
「たしかにマリカはメイドの人たち10人分ぐらい、よく気が利くよね!」

アルテリスはそう言って笑った。
テスティーノ伯爵の邸宅で、メイドたちと同じ服装で館内の掃除などをアルテリスは手伝ってみたりしていた。

「マリカ、おかわり!」


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