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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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王都奇譚-12

その習慣のために、モルガン男爵がまだ子爵の頃、夜這いをかけたが、間違って使用人の寝室ではなく未亡人の寝室に侵入、犯された未亡人が自殺してしまい、報復を恐れ王都から逃亡するという出来事が起きていた。
モルガン男爵は権力を握り貴族の未亡人が再婚できる法律に改正した。しかし、モルガン男爵に女性同性愛者に対する特別な配慮はなかった。結果として男色家も新たに伴侶にしたい男性と再婚できるという法律になった。フェルベーク伯爵領で男色文化が生まれる土壌は、モルガン男爵が用意したともいえる。

「だから、ロイドが私と再婚しても、ヨハンネスがブラウエルに嫁いでも、何も問題ありません」

ジャクリーヌ婦人に情熱的に言い切られて、ロイドは頭を抱えてしまった。

(貴族様っていうのは、まったく俺には訳がわからないぞ!)

このジャクリーヌ婦人との再婚を、ロイドが断ればどうなるのだけはわかる。この会議に集まっている全員が、ジャクリーヌ婦人によって殺されかねない。
脅迫して金品を強奪して逃げるはずが、手下全員を人質にされて、ロイドは捕縛されて処刑されるか、ジャクリーヌ婦人と婚姻するか、どちらかを選ぶことを脅されて返答を迫られているのだった。

「お前ら、ここでずっと使用人として暮らしたいのか?」

手下たちがうなずいていた。

「4人ともメイドとして仕えるのか?」
「伯爵様になれば、側室は多いほど良いかと思いますが」
「酒場で伯爵様より偉い人が来るとしたら王様ぐらいだよね」
「もう街に戻りたくありません」
「帰れなんて言わないですよね」

メイドの4人がロイドに答えた。

「あー、ヨハンネス、ブラウエル伯爵は男性だぞ。いいのか?」

ヨハンネスが、頬を赤らめながらうなずいた。

「再婚するか、しないかは、ブラウエルが戻るまでに決めてもらえば。それよりも、今夜はメイドたちではなく、私の相手をお願いします。明日の朝、私が死んでしまうかもしれませんから」

牡のリングと牝の指輪の呪い。
10日間、牡のリングを装着した御主人様と牝の指輪をつけた奴隷が交わらなければ、呪われて死ぬ。

「そんな話、信じるのか?」
「疑う余地がありません」

ロイドが絶倫になった。ジャクリーヌ婦人は見た目が若返った。
ならば交わらなければ10日間で、呪われて死ぬのもありえない話ではない。

覚醒してサキュバスになっているジャクリーヌ婦人は、10日間の呪いからすでに脱している。しかし、このロイド窃盗団の会議の場では、そのことを知らなかった。

運命は変わり続けている。
子爵ヨハンネスがブラウエル伯爵が領地へ帰ってきて自殺していたら、ブラウエル伯爵は失意のあまり母親のジャクリーヌを地下室へ幽閉して餓死させる。その後、フェルベーク伯爵と青年将校のギレスと共謀してバーデルの都へ自領の兵を率いて攻め込むが、女伯爵シャンリーを王都へ更迭後、ギレスとの情事の時にバーデルの都で暗殺されてしまう。
牡のリングをギレスに装着され、そのままフェルベーク伯爵の思惑通りにブラウエル伯爵はギレスと交わり、逸物の激痛に悶絶して気絶した隙に殺害される。
ブラウエル伯爵の運命が、ロンダール伯爵から、ロイドに牝の指輪が届けられ、ジャクリーヌ婦人にはめられたことで、子爵ヨハンネスが自殺せず、ブラウエル伯爵は母親を幽閉することや、暗殺される死の運命から逃れることになった。

ブラウエル伯爵は、フェルベーク伯爵領から帰り、若返った母親から、ブラウエルが男色家だと見抜いていたことや、子爵ヨハンネスがブラウエルを慕っていることを告げられる。
ブラウエル伯爵は母親に自分が男色家であることを告白し、母親と息子は胸のうちを語り合う。
なぜ、女嫌いになったのかをブラウエル伯爵は母親に恨みをぶつけた。ジャクリーヌ婦人は、愛情を持って交わっていたのにと激怒した。
母親と息子は、つかみ合いの喧嘩になったがロイドに止められ和解した。
母親と息子の別居という妥協案で、ブラウエル伯爵は子爵ヨハンネスとの蜜月を満喫したのでフェルベーク伯爵とギレスの陰謀に加担しなかった。

ベルツ伯爵領では、納税の取り立ての不満や、窃盗団を取り逃がし野放しにした不手際から、ベルツ伯爵に対し暴動が起こりかけていた。子爵シュレーゲルが結婚をベルツ伯爵に報告するために帰り、ザイフェルト夫妻がベルツ伯爵領の祟りの状況を調べていた。シュレーゲルとザイフェルト夫妻は再会し、村人たちの状況を話し合った。

暴動を煽っていたのは、フェルベーク伯爵領から潜入した間者たちだった。村人たちの助っ人のふりをして暴動に加わるはずだった。元地主で顔がきくので暴動を止めようと説得するザイフェルトを密かに間者たちは始末しようとした。だが間者は逆に全員捕らえられた。
フリーデがロイド窃盗団の被害者の女性たちの心の悩みの相談に、真摯に答えて対応した。彼女が子爵メルケルに強姦された被害者であることは風の噂で知られていた。復讐して相手が死んでも心の傷は消えないが、誰かを愛することで心は癒される、私の場合は夫のザイフェルトだったと村人は聞かされた。フリーデに励まされると被害者女性たちは涙をこぼして感謝した。

またザイフェルト夫妻に対し、ベルツ伯爵が村に訪れ村人たちの前で謝罪した。

「息子を殺されたことを恨んだが、ザイフェルトが手にかける前に、私自身で裁きを下すべきだった。許してくれ」

この謝罪に村人たちは感動した。こうして、暴動の火種は、ベルツ伯爵とザイフェルト夫妻の和解によって消えた。

村人たちは暴動の密談を止め、子爵シュレーゲルの結婚を祝う相談を始めた。
結婚式には、リヒター伯爵領から子爵リーフェンシュタール夫妻とカルヴィーノ夫妻が招かれた。ヘレーネの人気はベルツ伯爵領の村人たちに絶大である。シュレーゲルが、これでは誰の結婚式かわからないとぼやいていた。


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