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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(後編)-4

フリーデは、修行から帰ったアルテリスにアカネの墓が根元ある桜の大樹の場所まで連れ出されていた。
ザイフェルトには、とフリーデが言ったのは、フリーデには感応力の覚醒が進んでいたからである。
ザイフェルトには、修行していても、なかなか覚醒できない焦りがあった。
フリーデは、ザイフェルトには強い愛情を伝える見えない力があると射精した直後には言葉で伝えて励ましてきた。
興奮して勃起した逸物や射精した時に、見えない力がザイフェルトは強くなる。フリーデはザイフェルトの見えない力が修行中のどんなまぬ状況で、アルテリスやテスティーノ伯爵に確認されたのか気になった。気配を察知する感応力ではなく、アルテリスはたしかに念の力とフリーデに言った。

(まさかアルテリスさんがザイフェルトの股間の勃ったあれにさわったり、射精させたりしたわけじゃないですよね?)

「あたいが飛びかかって、ザイフェルトの腕と手首をつかんで投げるつもりだったんだ。今までだとザイフェルトはしっかり身構えながら待ち伏せして、あたいのつかみかかる腕や手首を逆に利用してつかもうとしてくるか、ギリギリで最近は半身になって避けたりしていたんだけど、今日はちがったんだ」

アルテリスが、身振り手振りをまじえながら説明していた。
飛びかかって、と聞いた時はドキッとしたが、淫らな行為ではなさそうだと思いなおして説明を聞いている。

(服の上から偶然、股間にさわってもザイフェルトの伝える見えない力を感じるのでしょうか。アルテリスさんは、腕力だけじゃなくて、見えない力も強いとスト様から聞いていますし)

「ザイフェルトも逃げたり、身構えたりしないで真っ直ぐ飛びかかってきた。あたしの腕を、ザイフェルトが先につかんで哭ける気なのかと思ったんだ。前もそうやって勝負を挑んできたことがあるからね。あとは、走るあたしの脚を蹴り払って転ばせる気なのかもと思った」

そこまで話してアルテリスは、ひとつため息をついた。

「ザイフェルトにはあたいが言いつけたんじゃなくて、ちゃんとフリーデが、どんな状況でザイフェルトの念の力を感じたのか、あたしに聞きたがったって言ってくれる?」
「はい、実際に状況を聞きたがったのは私ですから」
「なら、続きを話すよ」
「はい、お願いします」
「ザイフェルトが走りながら、バッと両手を広げたんだ。で、こんな感じでそのまま抱きついてきたんた。抱きつかれてもあたいのほうが勢いがあるから、体がぶつかって、ザイフェルトが尻もちをついて転ぶはずだった」

両手を広げたアルテリスに、フリーデはぎゅっと抱擁された。

「あたいは抱きついてきたザイフェルトに押し倒された。あたいも思わず抱きついてたよ」

アルテリスに抱擁されたフリーデはうつむいていた。胸の奥が切なくなって苦しくなった。

(この気持ちいいのに、胸の奥から切なさがあふれてきて、少し苦しくなる感じは何なのでしょう?)

何も言わないフリーデの抱きついた身体から離れると、アルテリスは足元に落ちていた小石を拾い、自分の手のひらの上に乗せた。

「こういう事が起きたんだ。フリーデ、小石を見て」

アルテリスの手の上に乗せられていた小石が、念が込められゆっくりと浮かび上がっていた。フリーデのぎゅっと握った握りこぶしひとつ分の高さで、浮かび上がったままだった。

「ザイフェルトに抱きつかれた時、あたしの体は爪先が届くけど地面が踏みしめられない高さにふわっと浮かんだ。ザイフェルトがあたいの体に念の力を込めてきたからだ」

アルテリスが開いた手を握って浮かんだ小石の真下からどける。石は重力に逆らわず、ストンと足元に落ちた。

「ザイフェルトはあたいに抱きついて、そのままボーッとのぼせたみたいになってた。あたいもさっきフリーデに抱きついた時みたいな気持ちになったけど、胸に顔を押しつけていたザイフェルトの頭を小突いて、そばに来た伯爵様に起こしてもらった。ザイフェルトは起き上がったけど、その場で座り込んだまま立ち上がれなかったよ」

アルテリスに抱擁された時に感じた感覚は、ザイフェルトに抱きつかれて押し倒れたアルテリスが感じていた感覚の記憶をフリーデに伝えたのだと、やっとわかった。

「ザイフェルトは全身から念の力を放ったせいで疲れちまったみたいで、伯爵様とあたいがお弁当を食べている間、空き地の木陰でお昼寝させておいた」

アルテリスは手合わせで押し倒されてザイフェルトに初めて負けた状況をフリーデに話し終えた。

「ごめん、フリーデ。抱きつかれて押し倒されていたのに、あたいもなんか気持ちいいから、なんかこのまま抱きついたままでいたい気持ちになっちまったよ」
「ザイフェルトの感じていた感覚を、アルテリスさんも一緒に感じていたということですね、きっと」
「たぶん、そうだと思うんだけど。うまく話ができない。あたしじゃなくて、伯爵様ならもっとちゃんと説明できると思うんだけど。伯爵様があたいに、フリーデにやってもらいたいザイフェルトの修行の手伝いがあるから、頼んでみてくれって言ったんだ」
「ザイフェルトの修行の手伝いですか、なんでしょう?」

アルテリスは全身から念の力を一気に放出し続けていると、疲労困憊したり、感応力のある女に快感を与え続けているような感じになるから、ザイフェルトに制御したり、アルテリスが念の力を手のひらに集中させて小石に込めたように、放出する身体のひとつの部分に集中させる練習を、ザイフェルトの手伝いをしてほしいと伝えた。

「私もアルテリスさんみたいに、小石を浮かび上がらせられないでしょうか。う〜ん、うまくできません」
「あたいだって、伯爵様がそばで念を込めた木刀を浮かばせて操るのをなんとか真似して、念を込められるようになったんだ、いきなりは無理じゃない?」

手のひらに乗せた小石を、フリーデはじっと見つめた。


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