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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ザイフェルトの修行と厄祓い(後編)-5

フリーデはもし念が込められる小石に、人と同じのような感覚があるとしたら、どんな気持ちになるのか想像できた。

ザイフェルトが射精するときに、フリーデにぶつけてくる強い感情と快感をフリーデは、受け入れて陶酔する。

(小石は浮かんでいるとき、うっとり安心していると思うんですけどね)

ザイフェルトがアルテリスに抱きついたままボーッとなっていたのは、陶酔していたにちがいない。フリーデは察して、少しアルテリスを妬いて、小石を浮かび上がらせようとしていた。
雑念が込もってしまっていて、小石は浮かび上がらない。

「あの、私もザイフェルトと一緒に念の力の修行をしたい……」

小石をあきらめて足元に落としたフリーデが、アルテリスの顔を見つめて言おうとして、途中でもう言葉が喉から出なくなった。
アルテリスが両肘を軽くすっと曲げて、左の拳でフリーデの耳のギリギリにシュッと拳を打ち出していたからだった。
アルテリスの拳の速さに風が起きて、少し遅れてフリーデの髪が揺れた。

「ダメだ。フリーデは念の力の修行なんてしなくていい。人でも、獣でも、殺めて命の火を奪う気持ちなんかわからなくていいんだ。敵を殺めるってことは、自分も殺される覚悟がないと、死されるんだよ。ザイフェルトはそんなフリーデを見たくないんじゃないかって、あたいは思う」

真っ直ぐ打ち出されたフリーデには見えなかった拳に込められていた殺気に、フリーデの身体が恐怖に震えた。
アルテリスがフリーデに話しかけていた時には、すでにアルテリスはまた両肘を軽く曲げた構えに戻っている。いつ拳が戻されたのかもフリーデにはよくわからないぐらい速かった。
フリーデの目に、じわっと涙があふれてきた。

「ごめんな、フリーデ。怖いって事を知らないと命がけの殺し合いはできない。あたいたちがやってる修行は、そういうことなんだ。フリーデには、あたいにはできないやれることがあるよ、たぶんだけどね。ザイフェルトの優しいフリーデでいてやってほしいよ」
「……はい」

アルテリスはフリーデを抱擁すると、優しく背中を撫でていた。アルテリスの厳しい優しさの気持ちが、撫でられている背中から伝わってくる。
フリーデの心とアルテリスの心のつながりに、フリーデの感じた恐怖が、氷がとけていくように消え、さらさらとした涙が頬を流れた。

フリーデの気持ちが落ちつくと、アルテリスがニヤリと笑って言った。

「まったく、ザイフェルトの伴侶じゃなかったらフリーデをあたいの恋人にしたいぐらいだ。あ〜、かわいい。キスしてあげたくなるよ」
「あははっ、アルテリスさんが男の人だったら、いっぱい女の人が惚れて喧嘩しそうですね」

フリーデはアルテリスに交わりの時、ザイフェルトが勃起して射精する時に逸物から、強い愛情が伝わってくることを正直に隠さず話した。
ストラウク伯爵とマリカが淫らな行為で鍛練するように、アルテリスがザイフェルトに淫らな行為をして、ザイフェルトの見えない力に気づいたのかと疑ったことをフリーデはアルテリスに何度も頭を下げて謝罪した。

「あたいがザイフェルトにそんなことしたら、伯爵様が泣いちゃうからするはずないだろっ、まったく、あたいは性悪女みたいに思われてるのか。まったく、まいったな」
「性悪女?」
「リィーレリア……今はヘレーネって名前で姿も小娘だけど、あたいの旅についてきたことがあったんだ。男どもがたぶらかされまくって大変だったよ」
「ヘレーネ様ですか?」
「ああ、フリーデは性悪女と一緒に結婚式を挙げたんだっけ?」
「はい、ベルツ伯爵様の御令嬢で、仔猫のレチェを連れていらっしゃいます」
「フリーデ、性悪女はここに来てさ、マリカを大泣きさせたんだよ。まぁ、どんな男が性悪女に惚れたか気になるけど、伴侶の男はすごく苦労するんじゃないかな、あたいはその男に同情するね!」

ヘレーネがストラウク伯爵領へ来て、マリカが大泣きして家を飛び出した件をフリーデが聞きたがったので、アルテリスは、リィーレリアが生まれ変わってヘレーネになっていて、再会した話をフリーデに語った。

「で、性悪女は、マリカがスト様のそばに一緒に話を聞いているのに、スト様の子供を孕ませてほしいって言ったんだって。スト様は断ったから、たぶらかされなかったんだけどね。マリカは、悔しいやら、やっぱり貴族じゃないからスト様にはふさわしくないかもとか、私よりも見た目がきれいで勝てないとか、頭の中が大混乱さ。泣きながら家を飛び出したのに、スト様は追いかけて来てくれないから、もう村に帰るって、途中まで歩いてたんだけど、それも嫌で、道端でしゃがんで泣いてたんだ。そこに伯爵様とあたしが通りかかったんだよ。伯爵様は、マリカの父上様だからね、マリカの話を聞いて、先にスト様の家に大急ぎで馬で向かったんだよ。あたしとマリカは幌馬車で話しながらゆっくり行ったんだよ。で、家の前で泥棒猫出て来いって怒鳴ったら家から、レチェが飛び出してきた」

マリカの大泣きの件を聞きなから、フリーデはその時の様子を思い浮かべて、ドキドキしたり、生まれ変わりの話に驚いたりしていた。

「これはザイフェルトにも、今夜にでも聞かせてあげなくてはいけませんね」
「今夜は止めたほうがいいかも。ザイフェルトは念の力を一気に放出したから、伯爵様も今日は修行を早めに切り上げてザイフェルトにゆっくり体をしっかり休めるように、心配して言ってたから」
「えっ、ザイフェルトは、そんなに疲れきっているのですか?」
「うん、もっと熱が出たり体の調子がおかしくなってもおかしくないって」
「それは大変、どうしましょう」
「でも、病気とかケガじゃないから、マリカのごはんをしっかり食べて、お酒も飲んで、よく寝たら大丈夫。でも、体の調子が急におかしくなったらスト様や伯爵様に知らせるんだよ。今はマリカが様子を見てくれてるから心配ないからね」


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