リーフェンシュタールの結婚(後編)-1
身分を持たない立場を満喫という考え方は、ザイフェルトにはなかった。
リーフェンシュタールは、師匠の学者モンテサントから説得され、リヒター伯爵領にパルタの都から戻ってきた。
リーフェンシュタールの頭の中には、どの伯爵領の出身でも、身分階級も関係なく、集まった同志たちと組織を結成する構想を持っていた。組織の人数が少ないうちは、リーフェンシュタールはリヒター伯爵領を組織の本拠地として使うつもりであった。
リヒター伯爵は子爵リーフェンシュタールのこの構想をパルタの都から戻ってからすぐに聞かされており、協力や支援を行うと約束していた。
「人が集まり、村や街となり、やがて国となると私は考えることがある。国となるまでには、それこそ種が大樹となるほどの時間がかかるだろう。その最初の種は、この場にいる誰かなのかもしれぬ」
リヒター伯爵はリーフェンシュタール、ヘレーネ、ザイフェルト、メイドのエマの顔を見渡してそう言った。
「種が大樹になるためには、種が育つための大地や水が必要です」
「そうだ。この伯爵領は種が育つ最初の大地になるだろうか。そして、私は種に必要なだけの水になれただろうかと考えることがある」
「伯爵様は、まるで詩人のようですね」
ヘレーネはリヒター伯爵に笑顔で話している。それを聞きながらザイフェルトは自分にとっての水は、妻のフリーデの笑顔だろうと考えていた。
「この邸宅に一人でお仕えしているのは大変ではありませんか?」
ヘレーネは、伯爵の側で控えているメイドのエマに話しかけた。
「伯爵様と子爵様しかこの邸宅にはお住まいではありませんし、あと邸宅をお訪ねになるお客様の応対だけですから、大変ではありません」
「エマさんもこの邸宅でお住まいになっているのですか?」
「はい、前任の方は街に伯爵様が家を貸りて用意して毎日、御屋敷に通っていたそうです。それよりも御屋敷に一緒に暮らすほうが便利で安上がりだからと言っていただき、御厚意に甘えて伯爵様の御屋敷に住まわせていただいております」
エマの前任者は息子夫婦が村に暮らしていて、孫が生まれたので、トレスタの街から離れて息子夫婦の家で孫の世話をして暮らすことになったので辞めることになった。
後任のメイドをリヒター伯爵が探していた時に、村からトレスタの街で仕事を探していたエマを見つけて採用した。
エマは、リーフェンシュタールより3歳若い25歳。
リーフェンシュタールはパルタの都の官邸にモンテサントを追って邸宅を離れ、4年間ほど留守にしていた。リヒター伯爵とエマは二人で暮らしていた。エマは邸宅の使用人でもあり、リヒター伯爵の若い恋人となった。
リヒター伯爵が最近は長時間、眠り続けるようになり、起きていても吐き気や頭痛がひどい状態か、強い眠気とめまいで廊下で倒れてしまうこともあった。
久しぶりに笑顔で話しているリヒター伯爵を見て、抱きついて泣いてしまっていた。そのまま悪化していき、リヒター伯爵が亡くなるかもしれないと、かなり心配していた。リヒター伯爵が体調を崩してからは、エマの体を求めてくることが無かった。嫌われたり、飽きられたのではないことはわかっていたが、リヒター伯爵が勃たないと意気消沈していたのはエマだけが知っていた。
淫夢のせいで頭の中だけは、夢をみている間は、ずっと興奮や射精しているような状態で、目覚めてから、体には疲労や気だるさを感じ衰弱していく。
レチェが、淫夢の原因の障気を喰ったので、ヘレーネとレチェが寝室を出たあとで、リヒター伯爵が勃起したと恥ずかしそうに言うと、エマはリヒター伯爵の年齢から考えれば逞しく勃ったものを口で奉仕したあと、リヒター伯爵に壁に手をつくように言われた。メイド服のスカートをめくられ、激しく突き入れられた。
リヒター伯爵の体は禁欲していたような状態だったので、口での奉仕で射精した直後でも、しっかり勃起して持続力もたっぷりあった。
リヒター伯爵がより深く結びつこうと、前屈みになり、メイド服の上から激しく乳房のふくらみをつかみ、腰を打ちつけるように動かすたびに、パンパンパンと卑猥な音が響く。
エマは廊下をリーフェンシュタールや客人たちが通った時に、物音で交わっているのに気づかれてしまわないか気になっていた。声も抑えようと必死になっているが、リヒター伯爵がエマの子宮を熱い迸りを注ぎ込んでくると、エマは絶頂を迎えて、脚や艶やかな尻を震わせながら思わず声を洩らしていた。
「あっ……はっ……伯爵様ぁ……んあっ!」
リヒター伯爵がたっぷりと射精したものを、エマの膣内から抜き出すと、それを追うように膣内から白濁した粘液が滴り落ちた。
久しぶりの激しい交わりの余熱のようなものがまだ股間の奥にあるような感じがして、夕食の給仕をしているエマがそわそわとしている。
ヘレーネは、メイドのエマのそわそわして落ちつかない様子を可愛らしいと思いながら、話しかけている。
「もう一杯、お酒をいただけますか?」
「はい」
ヘレーネは一口また酒を味わいながら、エマの顔を微笑しながら少し見つめてみる。頬をわずかに染めてエマがヘレーネの側から離れた。
エマが伯爵に抱き付いて泣いていたのを見ていた。そのあと、寝室で何があったのかヘレーネは気づいている気がした。
エマの様子に、リヒター伯爵は気づいているが、リーフェンシュタールやザイフェルトはそれぞれ考えごとをしていて気づいてないようだった。
リーフェンシュタールの秘密。
繊弱な貴公子然とした美しい外見の子爵の心は、ローザという前世の女性の心を隠している。それをこの夕食の場で知っているのは、ヘレーネだけである。
この時、リーフェンシュタールは初めて異性を強く意識していた。
幻か夢か、美しい女性たちが交わる姿でヘレーネに似た者をみたことで、目を覚ましてリーフェンシュタールは自覚していないが、欲情していたのである。