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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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聖獣師と獣戦士と村娘-1

村娘のマリカには、好きでたまらない人がいる。父上のテスティーノ伯爵よりも歳上のストラウク伯爵。
他の村の娘たちからは、マリカは変わった趣味をしてるよねと言われる。村の娘たちから人気があるのは、兄上の子爵カルヴィーノ。
父上に似て顔立ちも悪くないのは認めるけれど、恋よりも剣術の鍛練が優先なところまで父上とそっくりなのを、マリカは知っている。
兄上は一緒に村で暮らしてくれない剣術バカの修行旅をしている風来坊だから、好きになったらとてもさみしい思いをすると思う。
ストラウク伯爵と村の人は呼ばない。マリカもスト様と子供の頃からずっと呼んできた。山と湖にある全部の村の一番偉いおさ様。でも、父上や兄上が訪ねてきていろいろな話をしている時は、この人は村の人じゃなくて、王国の貴族様なんだとマリカは思うことがある。
マリカは他の村の娘たちとはちがって、子供の頃に母上のアカネに連れられて、父上の統治している伯爵領に行ったことがある。街があって、村の人が着ている着物じゃない服をみんな着ている。父上の館には執事さんやメイドさんが働いていて、スト様と父上の暮らしは、すごくちがう。母上は村のほうが気がらくだと言って、兄上とマリカを連れて村に帰って来てしまった。父上は何回も一緒に暮らしたいと母上を説得に来たけれど、いつもひとりで帰っていった。
マリカは好きになった人とは、絶対に一緒に暮らしたいと思うようになった。
子供の頃、兄上の剣術の師匠は、父上とスト様だった。兄上は剣術修行の旅がしたいと、母上が亡くなってから父上とスト様にお願いしていた。村にいると、母上の思い出がありすぎてつらいとマリカに言ったことがあった。この頃はわからなかったけれど、スト様が亡くなったあと、子供ができなくて、ひとりになってしまったら、マリカも村から出て、旅に出るかもしれない。

「マリカ、旅をしているとさ、いろんな人に会えるのが楽しいよ。あと、美味しい食べものがたくさんある」

旅暮らしをしているアルテリスはマリカに言った。兄上が旅をして、父上のところか、子供の頃みたいに村で暮らさないのは、いろんな人に会えてさみしくないからなのかなと思った。
好きな人と一緒にいられたら、さみしくない。たしかにちょっと村の暮らしは退屈かもしれないけれど。
アルテリスが、村人と同じ着物を着てみたいと父上に言ったので、マリカが用意することになった。

「おっ、これはなかなか。思ったより動きやすくて、風とおりもいいねぇ」

胸がマリカより大きい。着崩れして胸の谷間が見えてしまう。それに脚も少しめくれて出てしまって。でも、似合っていないかと言われたら、絶妙に見えそうで丸見えではなくて、色っぽい感じに。
父上が目のやり場に困っているのが、マリカにはちょっとおもしろかった。
しっぽに布が乗って、めくれてしまわないようにしたり、少し手直しは必要だったけれど、とても気に入ってよろこんでくれているみたいで、マリカもうれしかった。

「アルテリスは、どこに行っても、そこでなじんで暮らせそうですね」
「おっ、レチェ、あ、こら、中に入ってくるな、くすぐったい」

アルテリスの着物の胸元に、レチェが入って顔だけを出していて、とてもかわいい。体温であったかいのか、そのまま、うとうとしている。
それを見てクスクス笑いながら、ヘレーネがレチェを着物の中から引っ張り出すと、ヘレーネの胸元に抱えられ、レチェが不満そうに鳴き声を上げた。

「レチェ、アルテリスのほうが胸が大きいかもしれませんが、あれば脂肪です」
「なっ、なんだと、ちがうぞ!」

このふたりは、本当に仲がいい。
母上も男勝りの性格だったと、スト様が言っていた。父上の好みは、わかりやすいとマリカは思う。
スト様を父上は兄者と呼ぶ。スト様は同じ剣術の師匠についた兄弟子にあたるそうで、父上とスト様も仲がいい。
マリカには、ふざけあって冗談を言い合えるような親友がいない。

「マリカ、仲がいいんじゃない。こいつは、あたいをからかってくるだけだ」
「すぐむきになりますから、からかいがいがあります」

アルテリスは、旅の途中で僧侶のリーナという友達ができた時のことを、マリカに話してくれた。

「リィーレリア、今はヘレーネだけど、こいつとちがって、僧侶のリーナは優しいやつで、焼き討ちされた村の人たちにお祈りしながら、かわいそうだって泣いてたよ」

その話を聞いていた父上とスト様が、気になることがあったのか、アルテリスに僧侶リーナから聞いたこと詳しく話してほしいと頼んでいた。

「神聖教団の僧侶は、亡霊とも意志疎通できるのか。焼き討ちした傭兵の名前はガルド。村で人を買いつけした女商人の名前はシャンリー。アルテリス、僧侶リーナは、そう言ったのだな?」

少し表情がこわばった父上に、アルテリスがうなずいた。

「伯爵様、それにスト様まで、ふたりとも変な顔して」
「僧侶リーナから、人探しを頼まれたとは聞いていたが、それでレナードはあんな状態だが、殺されずにいたわけだな」

父上が何を言っているのか、わからなかったので、アルテリスと首をかしげていると、ヘレーネがマリカにもわかるように説明してくれた。

新しい国王になったのは皇子だったランベールという人で、ゼルキス王国を攻めるための兵士を募集した。

「辺境の村がゼルキス王国に攻撃されたから、ターレン王国に攻め込まれないうちに、強い国だって見せつけるために、ゼルキス王国の国境まで兵士に行かせたのよ。他の伯爵領からは、地主の子たちが、俺らは騎士の末裔だぞってはりきって戦うために兵士になるために王都に向かったのだけれど……。ストラウク様、こちらではどうだったのですか?」
「連絡はあった。だが、参加するには遠すぎるとパルタの都へ返信して、王命ではないので無視した。村娘たちに、辺境で人を殺して来いとは命じる気になれなかった」


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