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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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預言者ヘレーネ-4

ヘレーネはストラウク伯爵と話していると、母親のアリーダと幼い頃に話した時のような、世界の秘密をこっそりと教えられているような気持ちになっているのに気がついた。

「強い思念を抱いていないまま死んだ人は、どうなるのでしょう?」
「蜘蛛の巣で捕らえられて死んだ蝶の亡霊を視たことはない。小さな虫にも体や命があると私は思うが、情念はどうなのだろうな。因果がめぐり、この世界に蜘蛛を喰う雛鳥にでも生まれ変わってくるのかもしれぬ」
「ストラウク様は、生まれ変わりというものを信じておられるのですか?」
「あってもいいとは思っておる」
「ふふっ、何でも見つけたものを食べてしまうと、いつかレチェを食べてしまうものになって帰ってくるそうよ」
「うにゃ?」

ヘレーネは、そばで歩きまわっているレチェに話しかけた。すると、返事をするように鳴いたので、ストラウク伯爵は思わず笑ってしまった。

「ははは、おぬし、人が話すことがわかる賢い獣なのか。おもしろいのぉ」
「どうなんでしょうね。賢いとは限らないと思います」
「にゃうぅぅっ〜」

ヘレーネは微笑を浮かべ、使い魔のレチェを膝の上に乗せ、そっと撫でながら言った。レチェに目線を落としているため少し伏せ目で、ストラウク伯爵はヘレーネの美貌につい目を奪われてしまった。

(これは、マリカが嫉妬するのも仕方ないな。ベルツ伯爵も、この娘のことを溺愛しているだろう)

ストラウク伯爵はこれはいかんと気持ちを切り替えて、ストラウク伯爵領へ来るまでに地脈の流れで気がついたことがなかったかとヘレーネに質問した。

「この土地はふたつの山とスヤブ湖があり、地図を見てもらえばわかりやすいかもしれないが……不思議な形をしている土地だと思わないかね?」

ストラウク伯爵は地図を取り出し、ヘレーネに見せた。ヘレーネは地図をのぞきこんでしばらく考えていたが、ストラウク伯爵に言われて、ハッと顔を上げて少し頬を赤らめた。

「そう、気づいたようだね。双子山は女性の乳房でスヤブ湖は女性の陰部の位置と見立てて考えると、この土地はまるで女性の姿をしている。大昔には崇拝されていた土地だった。ヘレーネ、ターレン王国が建国する以前に信仰されていた神については知っているかね?」

ヘレーネはターレン王国が蛇神を信仰していた土地だと知らなかった。

「伯爵の血統の者たちの祖先は、このターレン王国の土地に移り住んで来た者たちなのだ。ベルツ伯爵からは、こうした話を聞かされたことはないかね?」
「大昔のもともと住んでいた人たちの末裔が村人たちで、地主の者の中にはターレン王国の騎士の末裔の者がいることは聞かされて知っていましたが、もともと住んでいた人たちが信仰する神がいたとは父から聞いたことがありません。母は異国の人だったので、歴史には詳しくありませんでした」
「不思議なことだ。レチェを見ればわかるが、この国で今では失われた法術の使い手だった母上が、神話や歴史に詳しくないとは……まあ、それはあとでゆっくり考えるとしよう」

ターレン王国を建国する前は蛇神を信仰する神官たちが信者の民を支配している国だったのを、異国から訪れた者たちが神官たちと戦い滅ぼすことでターレン王国が建国された。

「今の伯爵領を開拓する時も、今のバーデルの都の地で雌雄を決する大戦があった。パルタの都からほぼ包囲するように攻めて、ターレン王国の軍勢が、今の伯爵領を平定することになった。戦に敗れた者たちは平民階級とされた。ただし、このストラウク伯爵領はこの大戦の時、出兵しなかった。はずれにあるからだけではなく、他の土地を伯爵領にするためにも戦いがあったのだろう。人が多く亡くなったためか、スヤブ湖の水の力が悪い影響をこの土地の民に病をもたらしたと伝えられている。私の先祖たちは、山へ民を連れて移り住み、民と協力してスヤブ湖の祟りを鎮めていた。だから、大戦どころではなかった。今でも、マリカや村の者たちは領主様とは誰も呼ばぬ。スト様と呼ばれておる。村人たちみんなの村おさということなのだよ。だから、他の伯爵領のようにもともとこの土地にあった信仰を捨てさせて忘れさせたりはしなかった。昔話などもたくさん残っておるのは、干し魚や干し肉をつまみながら山羊の乳酒をみんなで飲んで、ほろ酔いで眠くなるまでおしゃべりするしか楽しみがない辺鄙な土地だったからだけではないぞ」
「狸を落とし穴から助けてみたら、美人の妻が3人できた昔話も?」
「そうだ。動物を人だと考えてみれば、狸や山犬が山で暮らしていた民だったのだろう。山のそばで暮らしていた少年は山のふもとの村の民で、猟師は山賊だったのかもしれぬ。山賊は山の民に、山から追い出された。山賊の罠から女性を助けてやった少年が青年になったので助けてもらった3人が夫にして、山の民の仲間として迎えた話なのだろう。本当に狸が頼んできても、じゃあ3人で妻になりますとは思わないんじゃないかな」
「そうですねぇ、狸ですからね」
「他の伯爵領にも昔話として、その土地の民とのかかわりを伝えているものもあったはずだが、負けた民を働かせて支配するために隠したのだろう。私のご先祖様は、領主の地位を王から授かっても、この土地の民と同じように村人みたいな暮らしをしていたのだろう。ヘレーネの気に入った狸の昔話と同じように、スヤブ湖には、こわい昔話もあるのだよ」
「ストラウク様でも、こわいと思うお話なのですか?」
「ああ、蛇神にまつわる話だ」

スヤブ湖に巫女が7歳になると湖に生贄として石の棺に入れて沈められていた。そうしなければ、蛇神の祟りで呪われると信じられていた。
しかし、巫女に選ばれたの少女には優しい姉がいて、妹の身代わりに棺に入った隙に、巫女の少女を父親が連れて逃げる計画を実行した。身代わりになった姉と生贄の妹は同じ年齢の腹ちがいの姉妹。母親どうしは敵対していたが、この姉妹は、とても仲が良かった、


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