投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

Sorcery doll (ソーサリー・ドール)の最初へ Sorcery doll (ソーサリー・ドール) 119 Sorcery doll (ソーサリー・ドール) 121 Sorcery doll (ソーサリー・ドール)の最後へ

祓魔師の乙女たち-7

蛇神のしもべは人間に憑依し、その人間の心を揺さぶるような誘惑する。

(エルヴィール、お前の代わりに100人の贄を捧げれば、お前や妹の命を10年間だけ狙わずに見逃してやろう。見逃している間はお前に視力を与える。ただし視力が再び失われたら、また100人の贄を捧げよ)

参謀官マルティナは、姉のエルヴィールが、自分の命やマルティナの命の代わりに他の生贄を捧げることで、一時的に祟りから逃れられると誘惑されたことや、一瞬、マルティナを守りたいと考えた結果として、魔力を奪われたことを、血まみれの魔石から伝わってきた思念から知っていた。魔石の中でエルヴィールは、自分の肉体の魔力から怨霊が出現するのを霊視していた。視力は与えられていたが、その肉体は殺された。
また、帝国宰相ヴァルハザードも不老不死と呪殺という力の誘惑に従って、結果として大規模な内乱を引き起こし、多数の犠牲者を贄として異界へ捧げたのを知識として知っている。
神聖教団の聖騎士の試練も、ミレイユ以外の挑戦者は、異界へ捧げられた贄と考えることもできる。
参謀官マルティナは、異界の脅威を心の底から憎んでいた。それを聖騎士ミレイユはよくわかっていた。
ミレイユは異界の脅威の根源は、人間の心にあることをノクティスから教えられていた。ノクティスの脅威的な破壊の力は、人間の憎しみや殺意であり、また恋愛感情や嫉妬もノクティスの存在の根源となっている。異界の神に人間が操られているのか、人間によって異界の神が利用されているのか。それはどちらでもあり、同じことなのだと聖騎士となったミレイユは悟っている。
人間や生き物がこの世界から完全に死滅してしまえば、異界の神も消滅し、異界とのつながりは絶たれるだろうとミレイユは考えている。しかし、それは許されざる選択である。

神聖騎士団の祓魔師の乙女たちは、参謀官マルティナが魔法の研究に没頭し続けていたのかわかった。姉を奪われる原因になった聖騎士の試練を行い続ける神聖教団のことも、障気から怨霊となり人間に憑依す蛇神のしもべのことも、自分さえ幸せであれば他人は犠牲にしてもいいと考える人間のことも、もしかすると、マルティナは姉を救えなかった自分自身も後悔して、憎んでいるのかもしれず、
だから、今まで祓魔師てはなく、研究者として引きこもり、必要以上に自分たちとの関わりを避けてきたのではないかと思った。
マルティナは冷酷な人間で、異界の脅威を祓う道具のようにしか祓魔師のことを考えていない参謀官だとは、祓魔師の乙女たちには思えなくなっていた。

「3日間の休暇を幹部全員に与える。私は聖騎士の最終試練を受ける時に、3日間、どうするべきか悩んでマルティナの姉エルヴィールに会いに行った。私が聖騎士となることで、聖騎士の試練の儀式を私が生きているあいだは中断されることを条件に最終試練に挑むと決断した。神聖教団で現在は聖騎士の試練は中断されている。だが、祓魔師の育成は継続され、諸君たちを参謀官マルティナは私に代わり育成してきた。この戦いには、終わりというものはない。それぞれの生き方に関わる問題だ。この機会に全員、よく考えてみてほしい」

聖騎士ミレイユは、参謀官マルティナと祓魔師の乙女たちにそう告げて、神聖騎士団の作戦会議を終えた。
参謀官マルティナの驚いて聖騎士ミレイユを見つめた表情を、祓魔師の乙女たちは見た。自分も休暇を出されるとは、参謀官マルティナが思っていなかったのがよくわかった。

参謀官マルティナが、大陸西方のゼルキス王国とターレン王国を、神聖教団は大陸全体の死地にしようとしているのではないかと予想したのには理由がある。
大陸南方の砂漠地帯というのは、過去に大陸の死地として選ばれた死地だからである。
大陸全体は広大で、幌馬車では一生かかっても全部の地域を巡ることはできない広さがある。
大陸の中心には大樹海があり、北方には荒れ地の先にドワーフ族や獣人族の都ルヒャン、その先には大山脈と古都ハユウがある。大陸東方は大河バールの周辺と海岸沿いに王国がある。
南方は荒れ地の先は砂漠で、さらに砂漠を越えた海岸沿いに王国がある。
平原の王国が12ヶ国、大樹海の中のエルフの王国をふくめて13ヶ国。東方の河沿いの小国造り4ヶ国と海岸沿いのシャーアン王国をふくめて5ヶ国。西方は小山脈と湿原の先にゼルキス王国とターレン王国の2ヶ国。南方は平原と同じように、砂漠となる前は帝国があったと伝えられている。海岸沿いのクフサール王国は、その名残りという伝承がある。
平原が神聖教団の教団ヴァルハザードが宰相だった頃は現在ほど砂漠が広がっておらず、南方から平原は攻め込まれることもあったらしい。褐色の肌の勇敢なる戦士が平原で姫君を救う物語もある。東方の大河の先のシャーアン王国とは、交易をしていた記録がある。
平原地帯には聖地といえるエルフ族の大樹海があるが、死地はない。大陸西方はヴァルハザードの死後100年以上続いた群雄割拠の時代に、戦乱を逃れてきた移民によって開拓された。
大陸南方で古代エルフ族は大陸各地で魔獣討伐を行ったときの激戦の結果、砂漠ができたというのはマキシミリアンがエルフ族の歴史の調査で判明したが、砂漠化が平原地帯に進行していないのは、ヴァルハザードが平原地帯を維持するために南方の住民を虐殺して、死地にした可能性がある。東方を死地にできなかったのは大山脈を水源とする大河バールの恩恵である。東方を死地にするには、平原にも続く大山脈の水脈を絶つしかない。それは平原の豊かな地を潰すことになるので、宰相ヴァルハザードは東方のシャーアン王国とは、戦を起こさない方針で国政を臣下に委任した。
砂漠からクフサール王国に害虫が現れるという問題を神聖教団からの依頼で、駆除と害虫避けを神聖騎士団が行った。
幼虫の時は、人の足の小指ほどの大きさしかないが、成長すれば巨大な魔獣サンドワームになる。砂中に埋もれていた魔獣卵が孵化したらしい。


Sorcery doll (ソーサリー・ドール)の最初へ Sorcery doll (ソーサリー・ドール) 119 Sorcery doll (ソーサリー・ドール) 121 Sorcery doll (ソーサリー・ドール)の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前