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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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祓魔師の乙女たち-8

サンドワームの発生とサンドワームに寄生される疫病の問題を神聖騎士団が処置したことは、砂漠の死地としての効果に影響をあたえてしまったと考えられる。そのため、大陸西方の平原からすれば僻地の地域を次の死地にする計画なのかもしれないと参謀官マルティナは予想したのである。
ダンジョン以外に魔獣が発生するのは、穢れが流れついて溜まっている死地以外ではあり得ない。地上の魔獣は穢れのなれの果て。サンドワーム駆除までは依頼していない、クフサール王国で発生した霊障と思われる被害者の治療だけを行えばよかったと神聖教団からの苦情を聖騎士ミレイユは受けた。
クフサール王国出身のサルージュとガーナ、褐色の肌ど黒髪の祓魔師の乙女たちは、クフサール王国の住民の穢れだけでは魔獣の幼虫が発生するのはおかしいと考えた。穢れの集積地の砂漠に何がいてもおかしくはないが、砂漠からクフサール王国へ穢れが流れ込むのは逆流している。クフサール王国には聖地のかわりに海がある。海沿いにはワームは出現しておらず内陸部に問題が発生した。
王国の土が悪くなったということにしてクフサール王国の依頼者の貴族には説明して、処置を行った。霊視できる者がクフサール王国にいれば、砂漠から小さな虫が大量に渡ってきているのを視て鳥肌を立て、海沿いへ引っ越しするだろう。
海で作られた塩をふりかけると、あっさり浄化されたので、クフサール王国の海辺の王都から塩を輸送してもらい、問題が発生した街では塩まき祭を一年に一度行ってもらうということになった。
砂漠の死地としての力が弱まっているのではないか、という報告書が参謀官マルティナによって神聖教団へ提出されたのは2年前のことである。
サルージュとカーナがワーム嫌いになったのはしかたがないと、他の隊長たちの乙女たちは同情した。
神聖騎士団の隊長たちは、エルフの大樹海を囲む12ヶ国の平原連邦国出身の祓魔師の乙女たちと、東方の元シャーアン王国、現在では海商の国エレイン出身の貴族令嬢ルディアナなど、大陸各地から聖騎士ミレイユの元へ集まってきた者たちである。
ミレイユは、エルフの王国で育っているので王族ではあるが、故郷は大樹海である。マルティナは、神聖教団の本部である古都ハユウで育てられている。
大陸各地から神聖教団に依頼された問題を解決するゼルキス王国の騎士として叙任された9人の乙女たちは、全員教団の元聖職者ではない。
聖騎士ミレイユと参謀官マルティナは、僧侶リーナを10人目の騎士隊長として迎えるつもりで考えていた。
9人の騎士隊長たちは、霊障や祟りなどの事件を、聖騎士ミレイユやマキシミリアンが解決した時についてきた。

(父上は、この王国の危機にどこで何をしていることやら)

執務室で聖騎士ミレイユは、マキシミリアンがいれば別の対策案を参謀官マルティナと9人の乙女たちに示してくれるはずだと思い、深いため息をついた。
父親のマキシミリアンと母親のセレスティーヌが、ダンジョンを神聖教団にも無断で改築し、のんびり暮らしていることを、ミレイユは知らない。
3日間の休暇を出したのは、聖騎士ミレイユは、エルフの王国に両親が滞在していないかひとりで探しに行くつもりだからである。叔父の国王アレンドロには、3日間不在にすることを、騎士団会議の前日に謁見して伝えてある。
魔剣ノクティスをエルフの王国へ持ち込むのは気が引けるが、置き去りにしたらノクティスが拗ねて問題が起きるのが予想できるので、携えていくことにした。

(セレスティーヌさんに顔が似てるな。さすが親子って感じだけど、耳のかたちはちがう。本当に人間とエルフ族でも子供ができることがあるんだな)

エルフの王国には、ドワーフ族の細工師ロエルと、弟子で恋人の青年セストがまだ滞在していた。

「セスト、そんなにじろじろミレイユを見たら失礼」

師匠ロエルに言われて、セストがミレイユに頭をぺこぺこ頭を下げて慌てて謝罪するのを、ミレイユは思わず笑って許した。魔剣の取り扱いについて、以前に相談した時のロエルの雰囲気とはちがっているのに気づいた。
セストという青年が、ロエルの恋人だとすぐにミレイユにはわかった。

聖騎士ミレイユは、父親と母親が錫杖になったリーナを見つけたことや、大陸に蛇神のしもべがあふれ出した時のための対策を、すでに大陸各地に施していることをロエルから聞かされ驚かされた。

(リーナは連れ去られたが、どうにか生還している!)

マルティナの姉エルヴィールも、意識を魔石に宿らせ遺言を伝えた。肉体は奪われたが、リーナも意識を錫杖に宿らせて意識だけは異界から脱出したことをミレイユは理解した。
マキシミリアンは錫杖をロエルに依頼して、賢者の石に錬成してもらった。それにとんな意味があるのか、ミレイユには見当もつかない。

「ミレイユ、人体に魔石を融合して心と体を切り離すのはダメ。肉体に戻せなくなる」
「ロエル、私には知識が足りない。マルティナを納得させられない」
「わかった。マルティナに会わせて。いろいろ話してみる」

セストは、ロエルが一瞬だが口元に微笑を浮かべたのを見て、少し嫌な予感かした。騎士団の参謀官という人が細工師のように魔石を融合できると聞き、おそらくロエルは単純に会ってみたくなっただけなのではないかと思った。
ゼルキス王国へ行くということはルヒャンの都から、家ごとエルフ族の隠れ里へ避難させてもらった意味がなくなる。
あえて障気が満ちているような危険なところに出向くなんて、と考えて顔をしかめているセストに、ロエルは言った。

「セスト、おねがい。私と一緒について来て」

(あー、そうですよね、そうなりますよね、心配だし、そんな顔されたら、ついて行くしかないじゃないか。おねがいとか言うのは、ずるいですよ)

参謀官マルティナは、ロエルを師匠と呼ぶようになる。祓魔師の乙女たちの強化に、ロエルは協力することになった。


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