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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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妖国記-5


ベルツ伯爵の令嬢ヘレーネには、父親のベルツ伯爵自身は気づいていない術師の資質と母親アリーダの感応力の資質や法術の知識が受け継がれている。
ヘレーネもまた、バーデルの都からは、南西の裏鬼門にあたるストラウク伯爵領を目指して旅を続けていた。

山地に囲まれたストラウク伯爵領から続く地下水脈は、パルタの都の井戸だけでなく辺境の森にまで続いている。ターレン王国の霊地ともいえる土地が、ストラウク伯爵領である。

地下水脈の恩恵によって大伯爵領は広大な耕作地となっている。ただし、長年使われて作物の根張りが悪い土壌の劣化した土地があった。その土地は改善するために風葬地とされていた。
人が死ねば、やがて遺体は土に還る。その土はやがて子孫たちに豊穣な実りをもたらすという考えがあった。
先祖の血肉である豊穣なる大地を守るという考えを持つ者たちと、新たにやって来た移民たちの戦いは、激戦の末に、移民たちの勝利によって終結した。
土壌の劣化した墓所であり、同時に他の土地の土壌が劣化した頃には、救済をもたらすはずの土地は、移民たちによってバーデルという名前の石造りの都に変えられた。
これによりターレン王国には風葬の習慣は失われ、死者はそれぞれの耕作地の近くに土葬されるようになった。
土には亡くなった者たちの強い思いが宿るという考えから、罪人は火焙りにするターレン王国の刑罰は、もともとは処刑される死者の怨念を火によって浄化してから、土に還すという意味があった。

蛇神の信仰は、蛇神の都から辺境地域で信仰されていた。ターレン王国の南方では、移民たちが伯爵領として支配する以前までは、土に対する先祖崇拝と山岳信仰があった。死者の血肉は土に還り、子孫に作物の実りをもたらす。では心は山から天へ昇り、浄化され風となり渡り、雨となって大地へ降りそそぐと信じられていた。最も空へ近い場所が、山であった。これはエルフ族の世界樹の信仰とも少し似ているところもある。
人の心は天から来て、肉体を離れるのが死であり、山から天へ帰ると、また雨や風として地上へ降りてきて、草木や女性の胎内の子など、さまざまな生き物に宿ると考えられていた。
エルフ族の場合は、世界樹の樹洞に赤ん坊が出現するので、生き物に宿るという考えはないが、世界樹により天界へ昇るという考えかたは似ている。
古代の人間族は古代エルフ族と共に協力して魔獣と命がけで戦っていたので、その頃に古代エルフ族から得た知識が山岳信仰として残ったのかもしれない。

ストラウク伯爵領へ幌馬車でアルテリスたちは、テスティーノ伯爵領内を移動している。ストラウク伯爵は愛馬に乗り、幌馬車に並走している。
ようやくパルタの都へモルガン男爵の暗殺を命じられた美丈夫のザイベルトが訪れ、国境へ令嬢ソフィアが兵糧輸送と遠征軍後発隊の解散を命じられ派遣される少し前である。

流浪の民の末裔であるヘレーネと獣人娘のアルテリスは、それぞれ同じ目的地を目指していた。

ストラウク伯爵は、山の上に家を建て、焼き物作りをして暮らしていて、ターレン王国の情勢には興味を持たず、自領から出ることがなかった。
山のふもとで暮らしている地主の村から相談事が持ち込まれると、たまに山から降りてきて領主らしいことをするが、山で山菜を採取したり、兎を手作りの投げ槍で仕留めてみたり、焼き物を作っていなければ、昼寝するか瞑想している。
白髪の蓬髪で、細身だが筋肉の衰えていない体つきをしたこの初老の伯爵が着飾っている姿を、領民たちは一度も見たことがなかった。
このストラウク伯爵領は、他の伯爵領のような戦いが行われて平定された歴史を持たない土地であった。
疫病が蔓延していたのを、移民として訪れたストラウク伯爵の先祖の術師が治療を行った。山に囲まれたストラウク伯爵領は盆地であり、低地にはスヤブ湖という広い湖がある。
この湖で人々は漁師をしていた。農作物を栽培する他の土着民たちとはちがう暮らしを営んでいた。
疫病の原因がスヤブ湖にあると、土着民たちを一時的に山の中腹あたりに避難させて治療を行い、さらに湖で疫病を鎮める祈祷を行ったと伝えられている。
滅びかけていた人々を救ったので、人々から敬われて、そのまま伯爵の地位が持つ貴族だから領主になったのではなく、祈祷師として、この土地の主となったといういわれがある。
領民と一緒に山で狩猟された獣肉を干し肉にした。山腹に村を造った。山ヤギの飼育や乳酒などを作り、保存用の甕などを焼き物で作った。こうした貴族らしからぬ生活をした歴代の領主たちは、山に村人たちと同じように埋葬されている。

村娘のマリカは、ストラウク伯爵と一緒に昼寝につきあわされていた。

「あぁん、はぁっ、スト様ぁ……んあっ……ひああぁっ!」

ストラウク伯爵に下から激しく突き上げられて、騎上位でまたがっているマリカは、ストラウク伯爵の胸に倒れ込んだ。
ストラウク伯爵は初老の男性なのだが、胸板がしっかりある。腹筋も腕も脚も、細いわりにかなり逞しく、鍛え上げられた体をしていた。
領民たちはストラウク伯爵を「伯爵様」とは呼ばずに「スト様」と呼んでいた。すべての集落の村おさという認識なのである。パルタの都からの小貴族たちは、この山の土地には赴任していない。耕作地は家の裏の畑がある程度で、バーデルの都から干し魚や干し肉、乳酒などの特産品を年に数回、村へ買いつけに来る商人が訪れぐらいしか他所との関わりがない。

なぜ昼間から、若い村娘のマリカとストラウク伯爵が子作りをしているのか。それは、どの集落も男児がこの10年ほどでまったく生まれなかったからである。さらに集落の男性たちが、近年ではまったく勃起しなくなったり、挿入する前に射精して萎えきってしまうという事態が発生していた。
ストラウク伯爵だけが、勃起する男性になってしまったのである。
その異常の原因は、ターレン王国全体の目に見えない地脈の乱れにあった。


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