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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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蛇神祭祀書-6


悪徳と頽廃。
バーデルの都の住人たちは、ランベール王が都の広場で行われていた子爵オーギャストの結婚式の途中で、兵士を連れて都へ乗り込んで来て、結婚式に参加していたバルデット伯爵の身内を全員まとめて民衆の前で拘束し、王都へ連行していくのを見ていた。
広場で結婚式を行うのは、バーデルの都がまだバーデルの村だった頃からの古き習慣の名残りである。
領主だけでなく、都の住人でも裕福な者は広場で結婚式を行う。子供たちが祝福の歌を披露し、別の土地から来た花嫁を歓迎する。
花嫁の令嬢シュゼットの唇を、それも新郎の子爵の目の前で、ランベール王が強引に奪い挑発したのも、都の住人たちは見ている。
都には子爵様の婚礼祭として、一週間前からすでに噂を聞きつけ、バーデルの都には人が訪れ、盛り上がっていたので、この祭の当日の国王の花嫁強奪は、住人たちにとって衝撃的な事件だった。

バルデット伯爵の再婚した若妻アリアンヌ。子爵の花嫁シュゼット。バルデット伯爵令嬢の少女ミリア。この3人の美しい女性たちを国王ランベールが妻妾としたことが、ベルツ伯爵の裏工作で、バーデルの都に情報は噂として広まった。

国王の暴政を抑えられない宮廷議会を批判する風評を流しておくことで、バーデルの都を伯爵の誰かに国王が任せた時に迎え入れられるようにベルツ伯爵は手を打っておいた。パルタの都のように、モルガン男爵の言いなりになる執政官が、宮廷議会の名門貴族から選ばれて赴任してきた場合には、周囲の伯爵領を監視する目的があると予想し、牽制する目的もあった。
バーデルの都を、他の伯爵に任せるのでも、執政官を赴任させるのでもなく、後宮の妻妾に女伯爵の爵位を与え、新しい領主とするとは。ベルツ伯爵は予想できなかった。

バルデット伯爵が投獄され、シャンリーが女伯爵として赴任するまでの執政者が不在だった期間に、バーデルの都の市場が閉鎖された。また、パルタの都の伯爵領官邸も閉鎖された。無政府状態の食糧不足の都では、暴動が起きた。
バーデルの都の住人たちは、いつまで市場が閉鎖されるのかわからず、一週間後に、ロンダール伯爵とフェルベーク伯爵が密かに闇市を開いて、自領の貯蔵の食糧を売った。
闇市を支配していたのは、バルデット伯爵が定めていた公定価格ではなく自由価格、いわゆる闇値である。
闇市では物さえあれば金を手に入れることができ、金さえあれば物を手に入れることができた。買った品物の価格にさらに上乗せして、転売することで、品物の価格は上昇し続ける。
果実酒の闇値は、公定価格の40倍から50倍まではね上げることに成功した。これは獣人族の行商人がゼルキス王国とターレン王国との戦を警戒して逃げ去ったので、辺境から果実酒が入荷しないために品薄だったことが影響している。
また他の伯爵領からの盗品なども、闇市では、公定価格の5倍から10倍で売れるために多く持ち込まれた。
わずか1ヶ月の混乱だったが、それまで親しかった隣人とパンひとつを奪い合った。それまでの善良な都暮らしの富裕層の住人たちの仮面が砕け、生きるために金銭や食糧を奪い合う、およそ1ヶ月間の混乱は、人への信頼を失わせるには充分すぎるものであった。
女伯爵シャンリーが、ロンダール伯爵とフェルベーク伯爵から買い入れた衛兵隊を使い、6日間で暴徒を鎮圧した。

少女エステルは、バーデルの都に暮らしていた小貴族の令嬢だった。パルタの都へ避難する前夜に、暴徒に邸宅を襲撃された。両親は暴徒に惨殺された。邸宅に火を放たれる前に衛兵隊によって暴徒が殺され、エステルは生き残った。

「ここが良さそうね。市街地から離れているのも気に入ったわ」

シャンリーが住むはずだったバルデット伯爵の邸宅は、シャンリーが来た時には暴徒によってすでに焼失していた。シャンリーは、エステルの暮らしていた邸宅から衛兵たちに指示を出した。

「容赦せずに殺しなさい。そうしなければ、殺されるわ。戦だと思いなさい」

衛兵たちに暴徒を殺害させることで、蛇神に贄を捧げることができた。
他の伯爵領から持ち込んだ盗品を闇市で売って稼いでいた盗賊団の4人の首領たちは、全員、ロンダール伯爵とフェルベーク伯爵から物資を入荷していた。

シャンリーは盗賊どもの稼いだ財貨のありかを吐かせるため、首領たちを嬉々として拷問した。そして、盗賊団の首領たちが共同で隠して貯めていた財貨を没収することに成功した。

盗賊団の首領たちはバーデルの都をアジトにするつもりだった。手下たちには、他の盗賊団の連中は殺せと命じていた。しかし、4人の首領全員が、女伯爵シャンリーに捕らえられてしまった。
盗賊団の手下たちは、バーデルの都から逃げ出しても手配されていて伯爵領へ戻れず、このまま野盗として放浪するよりも、バーデルの都の衛兵隊として、シャンリーに傭われることを選んだ。バーデルの都の闇市をめぐって抗争していた4つの盗賊団の手下たちは、シャンリーの配下になった。
つまり、それぞれ別の伯爵領から逃げて来た4つの盗賊団たちが、バーデルの都で、女伯爵シャンリーを首領とするひとつの盗賊団として合併した。

「シャンリー様、俺が首領……ですか?」

シャンリーの邸宅に呼ばれたのは、ギレスという名前の青年である。彼はロンダール伯爵領から来た若手の衛兵で、バーデルの都の暴徒鎮圧と盗賊団の首領捕縛を経験した。

「ええ、呼び方は違っても何をするのかと言えば、バーデルの都に集まったならず者たちの首領をやってもらいたいの」

シャンリーの書斎は、執務室を兼ねている。ソファーに腰を下ろしたシャンリーと、そのすぐ脇にメイドのエステルが立っている。ギレスは扉とソファーの間に立っている。女伯爵から出された提案を聞いて、ギレスは驚いていた。

バーデルの都に駐屯している衛兵隊のうち、フェルベーク伯爵領から来た衛兵隊は、すでに都からの引き上げが決定して通達されていた。


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