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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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パルタ事変-7

仲間の商人マルセロが、財貨や食糧が帳簿の記録よりも、パルタの都にある財貨や食糧が、実際はかなり多いことを確認している。
そのため、騎士ガルドの兵士たちの食事は捻出できた。また、しばらく一年半ほどは、パルタの都の小貴族から納税する必要はなかった。
収穫期までに国王か宮廷議会から、伯爵領からパルタの都への収穫物を集めるのを中止とする命令が出されなければ、パルタの都に財貨と食糧が集められる。
伯爵たちは理由はあっても、勝手に納税の法を破れば国王への反逆罪とされるからである。そうなれば、さらにパルタの都の貯蓄は増える。

「エルナントの自信を回復させることが必要というわけだな。そして、カテリーナ婦人と対等なぐらいにまで、夫婦の信頼が回復すれば、令嬢グローリアの信頼も回復してくる可能性がある」

モンテサントが、ソフィアの意見を聞いて解決策を考えた。商人マルセロはパルタの都の財貨や食糧を管理する仕事に追われて、他の仕事に手がつかない様子で毎日、忙しく過ごしている。

「モンテサント、エルナントさんの家族をマルセロの補佐をするように、みんなで相談すればいいのね?」
「うん。ソフィアには了承は取った。イザベラ、君はどう思う?」
「いいと思うわ。赴任先に戻れない小貴族の人たちを仲間にするのね」
「マルセロさんが小貴族の人たちをまとめることに納得してくれるかどうかと、ガルド将軍が納得するかどうかだな。君たちの話し合いで、人を雇うことに決まったら、小貴族の人たちには、私が声をかけてみるつもりだよ」

マルセロは平民階級である。それを気にして小貴族の住民たちが、平民階級のマルセロの下で働くのは嫌だと言う者はいるとモンテサントは考えている。
ただし働けば多少だが収入として、パルタの都の貯蓄された財貨が、家庭に分配される。
あえてここは分配せずに今後のために残すか、ここをガルド将軍の本拠地にするために貯蓄を分配するか。
その判断は難しいところである。
王命でパルタの都の返還を求められる可能性は高い。そうなれば、騎士ガルドは返還には応じずにパルタの都を占拠し続けることになる。
そうなった時に住民たちの生活に密接に関わっていれば、パルタの都を独立させて法を整え、伯爵領のような自治権を宮廷議会に要求することもできる。
住民が返還を望めば、住民を虐殺して追い出すしか、騎士ガルドには打つ手がない。住民を手なずける代償として分配を決断するか、虐殺を選ぶか。

「なるほどね、このマルセロの補佐を雇う話には、そんな意味があるなんて思わなかった。この話がうまくいかなかったら、モンテサントはどうするの?」
「虐殺に手を貸すわけにはいかない。伯爵領にでも行ってみるよ」
「あたしは、モンテサントについていくよ。ねぇ、モンテサント、あたしなんかじゃ迷惑?」
「迷惑なんて思わない。イザベラこそ、私なんかでいいのか?」

イザベラの返事は、濃厚なキスだった。
モンテサントは目を閉じて、イザベラの差し入れてきた舌に自分の舌を絡めた。
騎士ガルドの説得は、ソフィアがベッドの上で行っていた。

「もしパルタの都の住民を虐殺することになっても、私はガルドと一緒に戦って死んであげる」

翌日、ガルドが執政官官邸でマルセロ、イザベラ、ソフィア、そして、モンテサントをソフィアに呼びに行かせて、話し合いを行った。

「モンテサント、住民が説得できる自信はあるか?」
「残念ながら、説得はうまくいくでしょう。ターレン国王の威厳と民の忠誠心、身分制度への信頼。それらが残っていれば、説得には応じる者などいないはずなのです。しかし、それらをランベール王の臣下のモルガン男爵やベルマー男爵は踏みにじりましたから」

それを聞いて、商人マルセロがうなずいて、ガルドに言った。

「このパルタの都の住民が、貴方の民として生きるか、ランベール王の民として死ぬか。どちらにせよ、この都に残っている者たちは、王都にも、伯爵領にも行けずに暮らしている者たちで、私たちと同じだと思われます。もし、パルタの都をうまく統治てきれば、去る者ばかりではなく、来る者もいるでしょう。我々には仲間が必要です」

ベルマー男爵の被害者、小貴族の令嬢グローリアが、マルセロの若妻となるのだが、それをまだマルセロは知らない。
パルタの都で平民階級と小貴族が、労働と契約によって結ばれ、協力して、騎士ガルドの支配下で暮らすという状況がパルタの都で作られた。貴族は騎士ガルドと令嬢ソフィアのみで、あとは全員、小貴族と同等の平民階級の都となった。

王都だけでなく、伯爵領でも身分制度は職業、結婚など人々の生活全体を規制していた。それを利用して、奴隷を作り出そうとしている女伯爵シャンリーも労働と契約によって人を品物のように扱うことを始めようとしていた。
女伯爵シャンリーは、蛇神の神官こそが最上位の権力者である国に、ターレン王国を作り変えようとしている。
ランベール王は、そのシャンリーの野望ために、亡者ローマン王の意識を持ったまま、シャンリーの呪術の力で生かされている。
シャンリーにとって、パルタの都は奴隷として売られる、身分階級の最下層の村人がいない都であった。場所も奴隷を仕入れる伯爵領からは離れている。さらに小貴族たちは、奴隷を買うほど裕福ではない。そこで、バーデルの都を選んだ。

もし、収穫物を集めるパルタの都が、バーデルの都の位置、伯爵領に囲まれた中心にないのは、伯爵たちが連帯して蜂起した時に、陥落するのが難しくなると考えた国王たちや宰相たちがいたということである。

騎士ガルドが国王の地位を狙いつつも、身分制度を作り変えてしまった。国王という地位も、身分制度に従う民がいるから存在している。

女伯爵シャンリーは最下層の奴隷という身分を作り出すことで、身分制度を強化しつつ、財力と呪術により、国王以上の権力者となるために行動していた。


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