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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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禁忌の呪術-3

呪物となった蛇神のナイフに念を込めることで、シャンリーは、亡者のローマン王に苦痛を与えることができるようになっていた。

2000人の寄せ集めの軍勢を率いて、ガルドは異変が起きている森林地帯に、兵糧を置くための拠点を置くと、会議に参加していた貴族から、シャンリーは報告を受けていた。

(ふふふっ、蛇神のしもべがあふれている森で、ガルドが呪われたら、どうなるのかしら?)

シャンリーは後宮から庭園へ出ると、王都トルネリカに昇っている月をながめていた。
三日月は蛇神のナイフのように思えた。
蛇神のしもべを支配して、信者を従えていたという蛇神の神官の伝承の力を、シャンリーは、蛇神に与えられつつあると感じていた。
ガルドの率いるあぶれ者の平民たちは、新たな贄となると想像して、シャンリーは恍惚とした気分にひたっていた。

ターレン王国の貴族の娘たちが、凌辱されて、あられもない姿で気絶していたのも、シャンリーにとって気分が良い。
蛇神を信仰する神殿を破壊し、そこに王都トルネリカを造った異教徒どもの末裔が、ターレン王国の王族や貴族たちなのである。

僧侶リーナの蛇神の錫杖に潜んでいた、蛇神の神官たちの怨霊が、異界でリーナの肉体に憑依したまま呪縛され、逃げ出すこともできずに、淫獄で責め苛まれていることを、シャンリーは知らない。

異界の門が開いた世界で、蛇神の力を操つり崇められる真の支配者となる。
シャンリーもまた、野望の妖しい炎を胸の奥底に燃やしているのであった。

傭兵ガルドを討つべく、森林地帯の村を巡っている聖騎士ミレイユは、焼き討ちされずに残った村で、傭兵ガルドがターレン王国の騎士となった噂を聞いた。

(ガルドは森に潜伏していない。ターレン王国にガルドはいる。さて、どうしたものか?)

ミレイユの選択は、このままターレン王国へ向かいガルドを討つか、異界化の異変を伝えるためにゼルキス王国に帰還するか、このどちらかである。

ターレン王国では、手配書が回されて追われているハンターのレナードと、狐耳に赤髪の獣人娘の商人アルテリスが、旅を続けていた。
レナードはまだ呆けた状態で、狼頭の獣人族の奴隷として、アルテリスに連れられていた。

ターレン王国では、領主などの封土を世襲して維持する貴族は実権を失い、国王と国王の廷臣として議会の議席や公職を得た貴族が、国の実権を握る時代に変わっていた。
爵位は、単に貴族の格付けのみを示すのみに変容したといえる。

王と王都トルネリカの廷臣と、各地の自治を任されていた領主の実権をめぐる対立は、ローマン王の崩御から、ランベール王の即位ということの裏で権力闘争が行われていたのである。
ローマン王の直系血族であるランベール王が世襲するのか、伯爵の地位にあり、王族の遠縁にあたる人物が格上げされ王位に就くのかで、宮廷側と地方の領主側で、どちらが国の実権を握るのかの争いが行われていた。

ガルドが騎士として、平民階級の身の上から、貴族階級の士爵という爵位を王から与えられ、男爵よりも上の格付けとなった。これも、権力闘争の結果、王と宮廷側が実権を握っていると誇示するために行われた人事であった。

議会はあれど、王が最終決定権を持つ王都トルネリカ以外の、ある程度までは自治権を与えられている領主たちは、平民階級から税金を搾取して、王や宮廷の上流階級の貴族へ上納してきた。

平民階級の貧しい者の中たちには、自分の娘たちを奴隷という下層階級の格付けに身を落とさせる者が増えつつあった。また、平民階級から抜け出すために、貴族の者に金を貢ぎ婚姻することで、爵位を得る者たちもあらわれた。

男爵という爵位は、世襲制で継ぐこともできた。また、その本人の一代のみで継がないこともできた。官僚という立場を示す爵位であり、貴族の中でも最も多い爵位である。

伯爵という爵位は、街やいくつかの村の領主を示す爵位である。平民階級との婚姻も可能ではあったが、貴族たちの多くは愛妾という立場でとどめ、正式な婚姻関係を結ばなかった。

伯爵家の世襲する子は子爵という爵位を生まれながらに持ち、親の領地の4分の1の権利を持つ小領主としての立場である。親から伯爵の地位を譲渡されたら、子爵は伯爵に格上げとなる。公爵家に後継者となる子がいない場合は、男爵の爵位を持つ者を養子として迎え入れ、後継者とするのが慣例となっていた。平民階級の者は、領主となることはできなかった。

しかし、奴隷商人シャンリーには、重罪人としてバルテッド伯爵から没収した領地であるバーデルの街が与えられた。
女伯爵シャンリーには、バーデルの街では、宮廷公認で奴隷の売買ができる許可が出された。それまでは、ターレン王国内での奴隷の売買は禁じられていた。
だから、シャンリーは辺境で、村人を買いつけしていたのである。

ターレン王国において、平民階級でありながら、国王より爵位を与えられたのは騎士ガルドと女伯爵シャンリーのみである。これは、世襲制を慣例とする地方貴族に対しての王と宮廷が実権を握っていると誇示といえる法改正であった。

他の地方領主たちは、シャンリーが女伯爵となったことに対しては、内心では納得してはいなかった。しかし、自領に暮らす平民階級の女性たちを売ることで、自領に収入となるため、バーデルの街を利用した。

平原の王国で、獣人娘たちが人間族の奴隷商人に売買されているように、ターレン王国では、貴族たちが平民階級の娘たちを売買することになった。

ターレン王国軍は、まず半分の1000人の兵力が先発隊として辺境へ出た。500人はガルドの手下が隊長の部隊で、残り500人の兵士は拠点作りや物資運搬の役割を任された。
拠点が整備され確保されたところで、残りの1000人が後発隊として、兵糧を運搬しつつ合流するというであった。
ターレン王国の国境の宿場街に、後発隊は駐屯していた。


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