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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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禁忌の呪術-2


(これで、あの性悪な牝狐が気づいたとしても、俺の勝ちだ。ざまあみろ!)

性悪な牝狐、とガルドが名づけた奴隷商人シャンリーは、ターレン王国の王妃になるために、神聖教団では禁忌とされている呪術をすでに行っていた。

奴隷商人シャンリーは、ランベールを王位につかせ、後宮で蕩らしこみ、口約束では王妃にしてもらう確約を取りつけていた。
性悪な牝狐シャンリーは、口約束を信じて王妃になるのを夢みるはずもない。
ランベールに、ただ抱かれていたわけではなかった。

ガルドが軍事会議で、自らの野望の炎に胸が熱くなっていた頃、後宮の寝所ではランベール王が新たに迎えた3人の寵姫たちを、気絶するほど嘲笑しながら犯していた。

ランベール王は、どうやって3人の寵姫を手に入れたのか。ランベール王は、のちに暴虐の王と語られることになる。

貴族たちから称号と領地を剥奪し、王城に幽閉した。貴族たちは、全員病死と記録されている。実際は毒殺である。その毒薬は、奴隷商人シャンリーから入手したものである。
幽閉された貴族たちの容疑は、ゼルキス王国に内通した反逆罪であった。
バルデット伯爵。
その息子の子爵オーギャスト。
この二人の貴族が、ランベール王によって抹殺された。

バルデット伯爵は、ターレン王国の都バーデルの領主であった。バーデルの都の領主は一人娘レナエルしかおらず、バルデットは男爵であったが、婿として領主の地位を受け継いだ。

バルデット伯爵は、1年前に令嬢アリアンヌを再婚して娶っていた。バルデットの親友の男爵ディオンの年齢の離れた異母妹である。ディオンはランベールの王位継承の反対派の貴族であった。
ディオンの急死により没落した貴族令嬢となったアリアンヌとバルデット伯爵は再婚したのである。

前妻レナエルとの間には、オーギャストとミリアという兄妹をもうけていた。
オーギャストは、バルデット伯爵と似ている。ミリアは前妻のレナエルと似た美少女として育った。ミリアは兄のオーギャストを、妹ではなく一人の女性として深く慕っていた。

ランベール王がバルデット伯爵と子爵であるオーギャストを捕縛したのは、オーギャストの結婚式の日であった。
この日、オーギャストは、花嫁となるシュゼットという令嬢と結ばれるはずであった。
シュゼットは、アリアンヌの姪である。どことなく、シュゼットの容姿は、性格はちがうが、アリアンヌと似ている。

アリアンヌ。
シュゼット。
ミリア。
この3人の女性たちを奪うために、ランベール王は、バーデルの都の領主である伯爵と子爵の親子を殺害した。

アリアンヌには、夫のバルデットとバーデルの緑の住人たちの助命を条件に、関係を強要した。
ミリアには、兄のオーギャストの助命を条件に関係を強要した。
シュゼットには媚薬の香を使い、ミリアの助命を条件に関係を強要した。
アリアンヌとミリアが、愛する者の死の絶望から逃げるように快楽に溺れた。
シュゼットは牢内のオーギャストの目の前で、ランベール王に純潔を奪われた。

まだ皇子だった頃のランベールを知る者たちからすれば、にわかに信じがたい暴虐の王の所業であった。

「満足なさいましたか?」

美しい貴婦人、美少女、令嬢の花嫁を犯し、快楽に汚して堕とし、嘲笑したランベールに、漆黒のドレス姿の奴隷商人シャンリーが、蛇神のナイフを手に艶然とした笑みを浮かべた。

「シャンリーではないか。そなたも余に抱かれに来たのか?」

シャンリーの表情から笑みが消えた。蛇神のナイフの刃が、蝋燭の灯に妖しげに煌めく。

「ローマン王、亡者の分際で誰にそのような軽口を叩いているのですか?」

誰が見ても、ターレンの王であるランベールに対して、奴隷商人シャンリーは、ローマン王と呼びかけた。

ランベールは、青ざめ、左胸を手で押さえて苦悶の表情を浮かべると、うわずった声でシャンリーに言った。

「す、すまぬ。許してくれっ!」

シャンリーが微笑を浮かべる。すると、苦痛は落ち着いたのか、ランベールは荒い息を吐きながら、ゆっくりとベッドに身を横たえた。

シャンリーは、すでに王妃の地位を必要としていなかった。禁忌の呪術により、ランベール王の肉体に、先代の王であるローマン王の亡霊を憑依させていた。
ただし、まだランベール王としての意識でいる日と、亡者のローマン王の意識が支配する日がある。

シャンリーが呪術を解けば、亡者のローマン王の意識は、ランベール王の肉体を離れて消滅してしまう。
その時に、ランベール王の意識はローマン王の意識と融合しつつあり、ローマン王の意識が引き剥がされた瞬間に、ランベール王の意識は崩壊してしまう。

ランベール王の心と、息子の肉体を奪いつつある亡者ローマン王の意識は、シャンリーに握られていた。

「会議に参加せず、何をしているかと思い後宮に来てみれば……滅ぼされたいのですか?」

「シャンリー、そなたに従っておれば、ランベールの肉体は余に与えてくれるというのを……信じて……よいの……か?」

最後は、うわごとのような口調になりながら、目を閉じたランベールが寝息を立て始めた。目を覚ました時は、ランベール王の意識に戻っているだろう。

満月の夜、シャンリーは、蛇神が若い娘を抱いている夢をみた。
夜中に目を覚まし異界の門が開いたのを確信した。傭兵ガルドを使い、村を焼き討ちさせて、蛇神に贄を捧げさせた。その効果があったのだろうと考えた。

ランベール王の肉体に、蛇神のしもべの淫らなる悪霊ではなく、亡者のローマン王が憑依したのは想定外だった。
ランベール王に呪いをかけて、支配するつもりだったのだが、亡者のローマン王を脅せるほどには、苦しめることができている。
これも、蛇神の異界へ通じる門が、わずかだが開いたせいだろうと、奴隷商人のシャンリーは思っていた。


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