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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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魔獣変化-5


「僕はセレスティーヌと結婚したから、エルフ族の考え方と人間族の考え方のちがいに驚くことがある。生きるのも、死ぬのも伴侶は一緒という考え方がエルフ族には強くある。たから、果実は他人の妻に譲ってしまうわけだ。ドワーフ族はあまり結婚したって話を聞いたことがない。ロエルがセストと出会う前は、自分の果実は、自分で探せばいいって感じの考え方だったよ」
「帰って来たら、お師匠様に聞いてみたいと思います」

マキシミリアンの話を聞いていて、セストは嫌な気分にならない。どの種族の考え方が良いとか、悪いとか、決めつけたりはしないからだろうと思う。

「僕が王族だと知って、身分階級がセストは気になったかもしれないけど、大昔からの習性のなごりとわかったら、王や貴族が平民や奴隷に偉そうな態度をしがちなのがなぜかも、もうわかったはず。それは逆効果で、偉そうにするほど、果実がひとつになった時は、譲ってもらえなくなるのにね」

「マキシミリアン、獣人族はどんな感じなの?」

セレスティーヌが種族の習性の話に、とても興味を持ったらしい。

「獣人族は、人間族みたいに王国を作らなかった。群れを作る習性ではないんだろうね。恋愛した話はたくさんある。でも、結婚もした話は聞かないな」

獣人族は恋多き種族で、異種族どうしでも気に入ったら、一緒に旅をしていたりもする。

「獣人族は、果実がひとつで3人で考えることになる前に行動しそうだね」

マキシミリアンは、セレスティーヌにそう言っただけだった。
セストは、それでなんとなく察した。

果実を持って来る男性がひとり、女性がふたりいたら、男性が果実を惚れた相手に渡すとわかっているので、男性が結婚してようがいまいが、惚れさせたほうが勝ちと考えて、どっちにくれるのか、はっきりと男性に決めさせる。
セストは獣人族の多く集まるルヒャンの都に暮らしていたので、獣人娘たちの考え方が、なんとなく聞こえてくる会話などからわかっていた。
譲り合うのではなく、はっきりとさせる傾向がある。

平原の王国で、奴隷として、貴族の館の召し使いや娼館へ売られていく獣人娘たちを、セストは旅の途中で見かけたことがあった。
ルヒャンの都で暮らしていると、獣人娘たちをかなり見かけるので、ふと、奴隷にされた獣人娘たちの姿を思い出すことがあった。

エルフ族の隠れ里の中を、初めにセレスティーヌに案内された時と師匠ロエルが聖域へ旅立った時以外、セストは自分からは家を出なかった。

マキシミリアン夫妻が毎日、顔を出してくれるので、退屈はしない。

セストは、師匠ロエル以外の女性と体の関係を持ったことがない。エルフ族の女性たちは美しく魅力的で、セストには刺激的すぎる。
浮気はしない。
師匠のロエルとセストは約束した。
その誓いを、破るわけにはいかない。

童貞のまま、ひとりで旅をしていた経験もある。しかし、ロエルと暮らしているのに慣れてしまって、夜、眠る時に勃起しながら、ロエルの体の感触や声を生々しく思い出してしまう。

ルヒャンの都で同じようにムラムラしていても、獣人娘たちが疲れ果てたような表情で並べられているのを思い出すと、セストは、手を出す気にはならない。

「マキシミリアン、セストくんは我慢できるかしら?」
「かわいそうだが、がんばってもらうしかないな」

セストの家を訪問して、毎日の食事の材料などを届け、話をしてマキシミリアン夫妻はセストの気をまぎらわそうと、ふたりはいろいろな知識を、セストに教えている。

ロエルのために魔法の服を仕立てていた時のように、何か集中できることがあれば、気がまぎれるはずなのはセスト自身もわかっている。

エルフ族の娘たちを、セストの家に近づけさせないように伝えてある。
マキシミリアンと同じ人間族で、素敵な衣服を仕立てる職人がいる。エルフ族の娘たちはセストに興味を持っている。
一夜限りでもいいという娘や、自分も素敵な衣服を贈られたいと思っている娘もいる。
それがわかっているセレスティーヌは、マキシミリアンと一緒にセストの家を訪問している。

マキシミリアンによると、結婚している人間族が、浮気心の誘惑を感じがちなのは妻が妊娠していて、すっかりなじんだ体の関係がない時だという。
それまで親密で仲が良いほど、つらいらしい。セストは、それに似たような状況である。

旅の途中で見かけた奴隷市の様子の嫌な思い出がセストになかったら、ルヒャンの都でセストの話し相手になって親しくなる獣人娘もいたにちがいない。
そして、ロエルと体の関係がなくムラムラしていたら、同情して、ロエルには内緒で、セストと体の関係を持つこともありえない話ではあった。
結婚にはこだわらず、会っている時だけは、自分に夢中になってくれるだけでもいいと思う獣人娘もいる。

もしも、蛇神のしもべが、ルヒャンの都にすでに侵入していて、マキシミリアンたちの目から逃れていたら、セストは憑依されやすいとふたりは判断して、家ごとエルフ族の領域へ連れて来ている。

夫が浮気をしたら、妻は許せるか、絶対に許せないか。ずっと浮気したことを忘れずに気になってしまっているのか。

マキシミリアンとセレスティーヌは、セストと話し合うことにした。

「セストがロエルと離れている間に、他の女性と体の関係を持っても、ロエルに対しての愛情を失うとは思わない。それでセストが心がわりをするなら、それはロエルの態度や行動にも、それなりに問題があったのかもしれないと僕は思う」

「もし、セストくんが浮気をしたら、ロエルは妥協はなしで、一生許さないと思うわ」

ふたりがとても、セストのことを心配してくれているのは、よくわかった。

「浮気をしたら、お師匠様に嘘をつけても、俺の中で隠し事をしてるって気持ちが態度に出てばれますから。それがこわいので、浮気できません」


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