蛇神との邂逅-4
魔剣ノクティスは、聖騎士ミレイユの自意識を、朝まで自分の領域である館から帰さなかった。
ミレイユの美しい彫像のような裸身をうっとりとながめて、うれしそうに撫でまわしている。
魔剣ノクティスは、ダンジョンで生成された赤竜をミレイユが退治した時に出現した剣に、ノクティスという魔物が宿っていたのである。
村人たちが集団で操られ、さらに館が異界とつながるほど強力な影響をもたらす魔物の領域にリーナが連れ去られたとして、脱出する手段はひとつしかないと、ノクティスはミレイユに教えた。
ノクティスが剣に宿ったまま眠りについて、ミレイユが手にしたことで目覚めたように、リーナが錫杖に宿り、錫杖がダンジョンの力で異界からこちら側に引き寄せられて流れつけば、リーナの意識だけは戻ってくることができる、と。
ノクティスは魔物なので、ミレイユが気にするリーナという人間の娘にとても嫉妬して、戻って来ないほうがいいと思うと残酷なこともミレイユに語る。
リーナの意識も戻って来ないで、異界の主と同化してしまえば、その魔物はもう別の世界へ異界の門を開いて干渉してこなくなると、ノクティスはミレイユに教える。
「村の館に異界の門が開いたのは、そのミレイユという娘がそこにいたから」
異界の門を開いて、人間の女性を連れ去るのは、その魔物がお気に入りのミレイユを探しているからである。
ミレイユがその魔物のところにいれば、他の人間の女性は不要。
「その娘がひとりいなくなれば、他のたくさんの人間が連れ去られなくなる。私のミレイユが、連れ去られる心配もなくなる」
ノクティスがミレイユに惚れているように、リーナは魔物の伴侶として狙われ続ける運命らしい。
魔物を鎮めるリーナというひとりの犠牲と、世界の均衡が崩れるたびに異界の門が開き、犠牲者が増えていくのでは、どちらを世界の人々が望むのかとミレイユは考えてみる。
おそらく、リーナひとりを犠牲にして、自分たちの安全を望むだろう。
「世界の均衡を崩す者が現れなければ、異界の門は開かない」
「ミレイユに手を出してこなければ、私は、どうでもいい」
ミレイユは傭兵ガルドを始末したら、ダンジョンに潜り、ミレイユの錫杖を探すことを決意した。
「私は彼女を守ってあげられなかった。だから、錫杖を必ず見つけてみせる」
「しかたない。ダンジョンでミレイユに死なれてどこかに流されたら、探すのが大変だから、守ってあげる」
伴侶の私を探して、ノクティスはどれだけの長い旅を続けてきたのだろうと、ミレイユは思い、少女の姿のノクティスを抱きしめた。ノクティスがミレイユにキスをねだる。ミレイユはうなずいて、唇をそっと重ねた。
少女の姿をしたノクティスの柔らかくすべすべとした肌は、どこか儚げで、ふれているうちに手の中から消えてしまいそうな気分になる。
「ミレイユ……もっと強く抱きしめて」
目を潤ませたノクティスが、ミレイユに切なげな声で囁く。
ノクティスの小ぶりな美乳に耳を当ててみても、鼓動は聞こえない。
抱きしめられるとミレイユの鼓動が伝わってきて、一緒になれた気持ちになるとノクティスが恥ずかしそうに言う。
重なる吐息、愛撫の快感。
ミレイユとノクティスはおたがいの恥丘に顔をうずめて、恥じらいつつ淫らな声を上げながら、秘裂の奥から溢れてくる愛蜜を舐めあう。
ノクティスが、ミレイユの敏感な小粒ね肉芽をちろちろと舐め転がすたびに、ミレイユは腰をくねらせてしまう。ノクティスの鼻先で、ミレイユの濡れた秘裂がほころび、ひくひくと小さく震える。
ミレイユはノクティスの可憐な小粒の蕾を、同じような舐めかたを意識しながら舐めると、ノクティスの腰がびくっ、と震えた。
「ノクティス、気持ちいいのか?」
「んっ、はぁ、はぁ……ミレイユの気持ちいいのが伝わってくる。もっと一緒に気持ち良くなりたい」
ノクティスがミレイユの蜜穴に舌を入れて、激しく舐めまわした。
「あぁっ、んあっ、あっ、ノクティス、そんなに激しくされたら、ノクティスをかわいがれなくなる……んっ、はあぁん、んああぁっ!!」
ミレイユのほうが先に絶頂させられてしまう。ノクティスは絶頂したミレイユの頬を撫で、ミレイユが恍惚とした表情でわすかに口を開いていると、目を閉じて唇を重ねてくる。
ノクティスは、キスが好きなのかと聞いてみたことがある。すると、抱き合ったり、キスができない時間の分だけ、いっぱいしたい、と答えられて、ミレイユのほうが恥ずかしくなってしまった。
早朝、目を覚まして身支度を整えて館を出ると、村人たちは、まだ外で疲れ果て眠り込んでいた。
ミレイユは、オルコット夫妻を探して起こし、二人だけに、村で起きた異変を説明した。
「聖騎士様、このようなことは、今後も村で起こるのでしょうか?」
オルコットが泣いている妻のシンシアの体を撫で、慰めながら、怯えきった震える声で言った。
「女神ラーナの加護するゴーレムの神馬に、この村に異変が起きぬよう護らせよう。神馬は昼間は動かないが、夜になったら村の中を朝まで、歩きまわる。
神馬は、目に見えぬ魔物を踏み祓う。おぞましい夢をみた者がいれば、必ず神馬に触れさせるように。
ただし、満月の夜、村の外へ誰も出てはならぬ。出た者が男性なら操られ、女性を村の外へ連れ出そうとする。出た者が女性なら、戻れぬところへ連れ去られてしまうだろう」
ノクティスによれば、オルコット夫妻の館の異界の門は閉じきらず、村人たちには見えない蛇が、夜になると這い出てきて、少しずつ溜まるらしい。
オルコット夫妻には、毎日、館に戻ってきた神馬を撫でてやり、女神に感謝するように伝えた。
村人たちに憑く前に、見えぬ蛇を神馬に踏み祓わせた。
リーナの乗って来たゴーレム馬は、神馬として使われた。