ガルドの復讐-1
はぐれオークの楽園に暮らす母親ルーシーの元から離れ、ガルドは旅立った。
「ガルド、モウ大人二ナッタ」
満月の夜になるとオークたちは、欲情してルーシーと激しく交わる。
奇妙なことだが、ルーシーは何年たっても老け込むことがなかった。
ガルドはルーシーよりも背が高くなり、オークたちよりかは大きくならなかったが、筋肉がついて逞しく育っていった。
オークたちは、食べ物に困らず敵がいない上に老いることがない世界で、ガルドだけは、自分たちやルーシーよりも先に老いて死ぬとわかった。
育つということは、やがて老いていくことだからである。
さらに、ガルドも満月の夜に欲情するようになった。
5匹のオークに精液まみれになって、くったりとしどけなく草の上で、月明かりに照らされている横たわる美しいルーシーに、ガルドは欲情した。
「ガルド、嫌っ、私はあなたの母親なのよっ、ううぅっ!」
上からルーシーを押さえつけ、オークたちとルーシーの交わりを見ていたガルドは、そそり立つ肉棒をルーシーの秘裂に突き入れていた。
「うぅ、あぁ、ガルドっ、ダメぇ……ん、あっ、ダメぇ、あぅっ、ああっ!」
興奮したガルドが、ルーシーの膣内の肉がねっとりと締めつけてくる快感に、腰を本能に従い激しく動かし続ける。
「ダメぇぇ、ガルドっ、抜いて、中に出したら、んああぁぁっ!!」
ガルドはルーシーの膣内に精液をぶちまけてしまった。
ガルドは初めての快感に夢中になり、ルーシーを日が昇ったあとも犯していた。
オークたちに引き離されて、ガルドはしばらく暴れていた。
ガルドは10年で、もう大人の体になっていた。ルーシーはガルドは、まだ子供だと思っていたのでショックで泣きじゃくっていた。
オークたちは、ガルドが一人前のオスになり、新しい群れを作るために、自分たちとは離れる時期が来たと判断した。
ルーシーは、いずれガルドがこの森と湖しかない小さな世界から出たがっても困らないように、言葉や計算などを教えていた。
オークたちは、ガルドを外の世界に人間族として旅立ちさせるために、ダンジョンに何度も潜り、最後の1匹になってしまうまで、ガルドのためにいろいろな物を拾い集めてきた。
ダンジョンの生成した生き物だと思われて、ハンターから攻撃されたが、オークたちはハンターを殺害して、強奪した戦利品も持ち帰った。
ルーシーはガルドに貨幣や道具の使い方を、ひとつずつ教えていった。
「どうして、オークの父さんの子だと、人間たちに言ってはいけないんだ?」
「ガルド、それは人間が群れで生きていて、自分たちとは違う特徴があったり、なじめない者を追い出したり、避けたりするからなの。オークは人間よりも大きくて、力も強くて、醜く乱暴だと思われているからよ」
ガルドはよくわからなかったが、うなずいて、聞き流した。
その意味を、ガルドは身をもって知ることになる。
最後のはぐれオークとルーシーは、まだ空が染まり初めた早朝に、ニアキス丘陵まで出てきて、ガルドを泣きながら見送った。
ガルドは、はぐれオークのようには、森と湖の小さな楽園までの通路が見つけられず、門も開くことができなかったからである。
その時を最後に、ガルドはオークの父親と母親のルーシーは会っていない。
ニアキス丘陵の周囲は森とまばらな平地が広がっていて、平地には人間族の小村がぽつりぽつりと点在していた。
ダンジョンが存在する以前の、蛇神信仰が信じられていた頃よりも、人間族の村は閉鎖的になりつつあった。
蛇神信仰が盛んだった昔は、神殿に巡礼する信者が村に立ち寄ることもあった。
さらに、蛇神の祭の夜は、どの村でも宴が行われ、その夜だけは、どこの者でも一緒に浮かれて騒ぎ、踊った。
また肉欲に身をまかせて、夜這いして交わることが許されていた。
蛇神の祭の夜に孕んだ女性は、祝福されし者として村では大切にされ、生まれた子は、その村の住人の全員の子供として育てられた。
ガルドが外の世界に出てきた頃は、すでに蛇神信仰は失われている。おおらかにニアキス丘陵の周囲で暮らす人間たちが貧しいながらも助けあっていた習慣も失われていた。
ガルドはニアキス丘陵から、すぐにターレン王国に潜伏したわけではなく、旅人として、ニアキス丘陵周辺を巡った。
いくつもの小村が、風習のつながりが失われたことで、それぞれ、ゼルキスかターレン、どちらかの王国とのつながりを強めていった。
考え方や習慣なども古いものから、どちらかの王国の影響を受けて、変化していった。
ゼルキス王国に近い村では、豊穣と愛の女神の信仰や、血筋や結婚という考え方が定着した。森で収穫したものを商人に買い取りしてもらい、必要な物を購入するようになっていった。
ターレン王国に近い村では、養えない子供たちは奴隷商人に売られていた。
また、果実酒を製造して売っていた。
ガルドは、容姿や服装などからダンジョンを探索するハンターだと、どの村でも思われた。
どちらの村でも、王国から来た者は商売相手として歓迎される。
ただし、ハンターだけは、宿無しのならず者として、信用されず距離を置かれていた。
ハンターたちは村人たちにダンジョンで拾った貨幣を払えば、宿泊したり、食事を提供してもらえる。
オークたちが命がけでダンジョンから集めできた金があるうちは、ガルドは生活に困らなかった。
ターレンの影響下の村では、一夜限りの相手をする村の女性たちもいた。
ガルドの所持金が少なくなると、森で果実などを見つけて食べていた。
ここらで果実を勝手に取って食えば、盗人として、ゼルキスに引き渡すと、村人たちに囲まれたこともあった。
果実酒を作るために栽培している果実を盗んだと、ガルドを袋叩きにしようとする村もあった。