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Sorcery doll (ソーサリー・ドール)
【ファンタジー 官能小説】

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ゼルキス宮廷会議-1

初老のゼルキス王レアンドロは、騎士団長ミレイユと謁見し、ミレイユが退室すると、玉座でため息をついた。

焼き討ちの事実があれ、南のターレンとは、王族同士の婚姻を配下にはまだ明かさずに裏で進めている。

ここで焼き討ちについて、騎士団を派遣して事実を確認すれば、南のターレンとニアキス丘陵の利権問題もあり、戦への火種になりかねない。

ニアキス丘陵を開拓して利益を得たいと考えている貴族も、宮廷議会にはいる。ニアキス丘陵の利権をゼルキス王国が勝ち取ったとしたら、次は北と南の併合のために戦を始めようとするか、南のターレンがニアキス丘陵奪還のために侵略してくるか、どちらにしても、長い戦の時代が始まると考えると、ゼルキスの王レアンドロは憂鬱な気分になるのだった。

(騎士団の派遣ではなく、ミレイユが、単独で焼き討ちを行っている盗賊団の討伐を申し出てくれたが、さて、他の者たちは、どう反応するか?)

レアンドロはこの後、南のターレンで王が崩御して王位を継いだランベールがゼルキス王国に対して、宣戦布告してくるとは予想していなかった。

ニアキス丘陵の利権を得たいという貴族たちの意見もあり、戦ではなく外交で利権を分け合う方針で、国王レアンドロは政策を進めてきた。
ただし、南のターレンの王ローマンは、公平に半分では承諾できぬと、交渉は難航していた。

騎士団長ミレイユの実力は、レアンドロもわかっている。他国の戦場に派遣した過去の戦績も大陸中に知られている。
聖騎士ミレイユは、ゼルキスの戦女神とさえ呼ばれている。
騎士団長として、若いながらも宮廷議会のメンバーである。

(彼女に野心があれば、ゼルキスの女王になることもたやすいだろうに)

ゼルキス王家の血筋でありながら、ミレイユは騎士であることを望んだ。ミレイユは、レアンドロの姪にあたる。
騎士は貴族階級である。だが、貴族でも家督を継がぬ次男なとが就任することが多い。
レアンドロの兄マキシミリアンも王位を望まず、公爵であることを望み、ゼルキス王国を離れ、大陸を渡り歩き、多くの戦場で活躍した英雄である。

宮廷議会メンバーが、緊急で王命により召集された。

「南にも、村を襲撃した窃盗団の調査を依頼して、我が王国と合同で討伐するのはいかがですか?」

「国境の警備兵を増員し、窃盗団が侵入するのを防ぐべきではありませんか?」

「窃盗団の噂はあり、ターレンへ行く行商人には注意するように警告しておりましたが、騎士団長が動くのは、ターレンを刺激することになるのでは?」

ニアキス丘陵周辺の小村に、兵士を派遣して村人たちを守ってやろうという意見は、宮廷議会メンバーの貴族たちからはまったく出なかった。

「ハンターギルドとしては、この件が解決するまでニアキス丘陵のダンジョンの探索を規制させてもらう。ダンジョン探索前後に、近隣の小村で休養する者は少なくない。王命で窃盗団の探索の依頼を出していただき、賞金を用意してもらえれば、協力することはできる。他国から訪れたハンターが探索するなら外交上、問題になりにくいのでは?」

ゼルキスのハンターギルド長クリフトフの意見は、ハンターがまだ襲われていない村に多く滞在すれば、抑止力として焼き討ちを未然に防ぐことができるという意味が含まれている。

ミレイユは騎士団長と聖職者として、意見をメンバーの前で出さなければならなかった。

「騎士団の隊士を派遣するつもりはありません。隊士を派遣して、どちらに属している村であれ、ニアキス丘陵周辺の村を守らせたいところですが、ゼルキス王国が兵士を駐屯させて戦に備えていると警戒される可能性があるからです。近隣の小村の住人をゼルキス王国に一時的に王命で避難させる方法もあります。王国に避難民を受け入れる許可をいただければ、現在、国境警備を行っている少人数の兵を伝令とすることで避難は可能だと思われます。
すでに焼き討ちは行われており、壊滅した村の問題があります。
聖職者としての意見としては、ゼルキス丘陵を囲むように村が今後も焼き討ちされた場合、ゼルキス丘陵が呪われた地となることが懸念されます。
そうなる前に傭兵団を壊滅させる必要があり、また被害を受けた村の浄化も必要となります」

呪われた地だと?
何をこの小娘は言っているのだ?
という顔になった貴族たちが、まわりのメンバーと顔を見合わせていた。

(やはり、こうなってしまうだろうな)

実際に被害に合った者や、命の危険を感じたことがある者しか信じられない話ではある。単独討伐や、村人の避難の提案も、それで我々にはどんな利益があるのかという事しか興味ないことが雰囲気がわかる。

トレジャーハンターギルド長のクリフトフだけが顔色が変わった。
クリフトフは過去に愛人の亡霊に祟られた経験がある。
再婚した2人目の妻を呪殺され、さらに今は受付嬢の無理のフレイヤも原因不明の高熱を出した。貴族たちとは知識と経験がちがう。

もうひとり、眉をしかめたのは国王アレンドロであった。
もともとゼルキスは呪われた地であり、それを浄化して国としたいう伝説が、王家には密かに伝えられている。
弟のマキシミリアンは、必ず聖騎士になる娘を産める女を見つけてみせると、アレンドロに王位を譲り、旅立った。
先代国王はマキシミリアンに王位を譲るつもりだったが、しかたなく、アレンドロを王にしたのであった。

父親や弟が信じがたい伝説を強く信じていたからこそ、王位を継承されたアレンドロ王は、姪の聖騎士ミレイユが、これから起こる重大な厄災に対して、何かをしようとしていると直感的に理解した。

「ここにいる諸君は、ミレイユが何を言っているのか理解できないようだ。私も信じたくはないが、この場で話さねばならぬことがある。なぜ、ダンジョンがニアキス丘陵に存在するかを知っているのは、私とミレイユだけであろうな」


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