ジェラシー-5
「え、いや、そんなことはないよ。しのちゃんのママのお友達の子供だから、親切にしてあげなきゃとは思ったけど……」
昔ファンだったジュニアアイドルにそっくりだったからつい、みたいなことは口が裂けても言えない。
「俺が好きな女の子は、しのちゃんだけだよ」
これは、嘘偽りない。
「……綾菜ちゃんが、あんなことしても?」
あんな、というのは抱きついてきたことだろう。
「うん、なんとも思わないよ。だって……」
しのちゃんの目を見る。さっきまでの睨むような目つきは消えて、いつものしのちゃんの表情に戻りつつある。
「俺の『こいびと』は、しのちゃんだけだから」
目線が絡み合う。しのちゃんの頬にかすかに赤みが差すのがわかった。しのちゃんを抱きしめたい。そんな衝動に駆られた俺が立ち上がると、しのちゃんはすくっ、と立ち上がって、玄関に通じる廊下へ歩き出した。
「しのちゃん……?」
「おしっこ」
ぼそ、とそう言ったしのちゃんがトイレのベージュのドアを開けて中へ入っていく。中腰になったままの身体をまたゲーミングチェアにあずけてふうーっ、と息をつく。たぶん、修羅場にはならないだろう。しのちゃんがトイレから出たら、まずしのちゃんを抱きしめて、機嫌が良くなったらさおりさんが渡してくれたメンチカツとパエリヤを温めて、しのちゃんが好きな動画配信を見ながら夕ご飯を食べよう。さおりさん、今日何時頃仕事終わるんだろう。終電のひとつ前で変えることが多い、って言っていたから、駅に着くのは十二時ちょっと前くらいかな。
「……お兄ちゃん」
トイレの、閉めたドアの向こうからしのちゃんの声がする。あれ、もしかしてペーパー切らしてたかな。立ち上がってドアに近づいて声をかける。
「しのちゃんごめん、トイレットペーパーなら上の棚にあるよ」
「……中に来て」
「え?」
「トイレの中に来て」
しのちゃんの、少し低い声が薄いドア越しに届く。棚に手が届かない、のかな。ノブを掴んで、そっとドアを開く。
膝の少し下あたりまでパンツを下げたしのちゃんが便器に座っている。トイレットペーパーホルダーには、まだペーパーが十分に残っている。
しのちゃんが、ワンピースのスカートの裾をゆっくりとおなかのあたりまで捲くる。洋式便器に少し足を開いて座っているしのちゃんの太腿が、そしてその太腿の間のワレメが露わになる。トイレの、やや暗めのLED照明に照らされたワレメは湿っている。
思わず喉が鳴った俺に、しのちゃんが小さな、でもはっきりした声で言った。
「お兄ちゃん、あたしのおしっこ、ふいて」