予想外な痴漢犯人-6
『パートタイム痴漢LOVER』という不道徳な言葉に杏奈は思わず眉をひそめる。だが、次の公平の少年らしいセリフには心がときめいた。
「ていうか、これ以上見知らぬおっさんに伯母さんがイタズラされるのを黙って見てるのは耐えられないんだ!!」
一呼吸おいて杏奈は公平に尋ねてみる。
「更衣室であんなことしてた伯母さんのこと軽蔑しないの?」
「俺だってもう高2だぜ、子供じゃないんだ。真面目な伯母さんが見たらびっくりするようなビデオみてオナニーしたりしてるし。ネットでいろんな情報手に入るからそういう趣味の女がいることも知ってる。実際、クラスで妊娠したくないからってアナルセックスしてる女もいるし、伯母さんも俺の年で妊娠しちゃったし信心深いから、ただ気持ちよくなるためだけに女性器を弄るのは抵抗あるんだろうなってて・・・伯母さんとは何年もレスだって孝一おじさん言ってたし・・・まだまだ女盛りの伯母さんが欲求不満になるのも当然だし、いろいろ悩んだ末の妥協点なのかなぁって」
ーこの子、私のことになると時々鋭いのよねー
杏奈がアナルオナニーに嵌まるようになった理由は概ね公平の想像どおりだった。そういう方法もあることを生徒から没収した雑誌で知り、生殖器ではなく排泄器であれば触れても禁忌に触れない気がしたし気持ちよくもないだろうからと身体が疼く夜にふと試してみたのが最初だった。
だがそれは予想以上に背徳的で初めての行為だったにも関わらす、杏奈に小さな快感をもたらした。その快感を貪欲に感じ取り、以降、できるだけ大きな快感を得ようと持ち前の生真面目さでアナルオナニーを重ねた結果、すっかり嵌ってしまったのである。
今では尻穴をいじると酷く感じてしまうので、電車の中で触れられると大きな喘ぎ声をあげてしまう恐れがあるため痴漢されることを避けている程であった。
「私が断ったらどうするの?その写真をばら撒くとか言って私を脅すつもり?」
「そんな伯母さんが困るようなこと、するわけないだろ!残念だけど、伯母さんと恋人になるのは諦めて美咲と付き合うことにするよ・・・」
自分を思いやる公平の発言にほっとする杏奈。しかし公平は真顔でこのように続けるのだった。
「伯母さんへの未練を断ち切るためにも、美咲とヤリまくるよ。美咲は見た目どおり軽い女らしいからすぐヤラせてくれるだろうし、妊娠したらデキ婚でもするさ。伯母さんと同じようにね」
さらに。
「どっちにしても痴漢なんていけないことだから、痴漢たちには然るべき方法でお引取り願うつもり」
「・・・・・・・」
ここにいたって杏奈は公平の提案を受け入れざるを得なかった。自分のことが大好きで、痴漢達に激しく嫉妬する甥。脅迫して言うことを聞かせられるにもかかわらず、そんな卑怯に手段をとらない男らしい少年。成熟した女の切なさを理解し特殊な性的嗜好を受け入れてくれる同じ仲間。逞しい体つきのスポーツマンで女の子にモテモテの若いオス。
そんな男を尻軽女子高生とデキ婚させて将来を棒にふらせるわけにはいかない。
「わかったわ、公平君の提案にのってあげる。だから、美咲ちゃんを妊娠させるようなことしちゃダメよ」
杏奈の承諾に喜色満面の笑みを浮かべ叫ぶ公平。
「そうこなくっちゃ!」
「もう、こんな悪知恵働くなら、勉強ももっとがんばれるでしょ!」
「はいはい、勉強もちゃんとしますっと」
「はい、は1回!痴漢とは私がちゃんと話しておくから危ないことはしないでね」
「はい!」
「それから、私のことは杏奈伯母さん、じゃなくて、杏奈先生、と呼ぶように」
「はい杏奈伯母さん!」
「こら!」
「はははは」
「ふふふふ」
杏奈に直接問えば否定するに違いないが、痴漢プレイという悦楽がなくなってしまうことを恐れ、また「恋人」との痴漢行為を期待してこの提案を杏奈が受け入れたことを公平はよく理解していた。
ーありがとう、護さんー
心の中でこうつぶやくと、面接室を後にする。
後に残る杏奈が写真を見ながら何をするのかわかっていながら、あえてスマホを置き忘れていくのだった。