性従-1
「学校って、数学とか英語とか、職員室とは別にそれぞれの教官室あるんでしょ?穂花がいる数学教官室行こうよ。どこ?」
「こっちです。」
きっとそこでも良からぬ事をするつもりだろうと思いながらも数学教官室に向かう。
「あ…、ヤバい、誰かいる!」
穂花は数学教官室に明かりがついている事に気付く。
(今日の宿直、田中先生かな…)
田中は穂花と同じ数学の教師で、50歳。いつも同じ数学教官室で仕事をしており、分からない事など丁寧に教えてくれる、信頼出来る教師だ。他に近藤と言う40歳の数学教師はいるが、帰宅するのを見たから恐らく田中だろうと思った。見つかったらやばいと思い、流石に戻ろうとする。
「見つからないうちに、帰ろ?」
焦る穂花に修は言う事を聞かない。
「いや、何してんだか覗こうよ。あっちは明るくてこっちは暗いから、多分あっちからは見えないよ。」
「で、でも…」
「いいからいいから…」
修はソーっと扉に近づくと、何やら中から男女の話し声が聞こえる。
「おい、宿直の先生、女連れ込んでるぞ!?」
「えっ…?(田中先生に限ってそんな事しない…。じゃあ田中先生じゃないの…?)」
そう不審がる穂花を尻目に、修は扉をそーっと開けて中を覗く。そして飛び込んできた光景に驚きを隠せなかった。
「お、おい、女、生徒だぞ?」
「えっ…?」
まさか教師が生徒を連れ込んでいるとは…、穂花は信じられなかった。
「おい、見てみろ。」
穂花は扉に近づき、隙間から中を覗く。
「あっ…」
教師は間違いなく田中だった。そして生徒は、さっき話題に上がった安田里美だった。
「田中先生と…安田さん…!?」
「ん?安田って、安田里美?」
「う、うん…」
「マジか!?教師とも関係持ってんのかよ!」
修も驚いた。沙織の話から、相当遊んでいる感じはしたが、まさか教師にまで手を出しているとは思わなかった。1番驚いているのは穂花だ。信頼する田中がまさか生徒に手を出しているなど、信じられない。
(何か真面目な相談かも知れないし…。そうよね、きっと誰にも話せない悩みとか進路とか、田中先生が相談に乗ってあげてるだけよね…)
そう思ったが、そんな雰囲気ではない事には気付いていた。信頼する田中のまさかの顔に、穂花は頭が混乱した。