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エロス・短歌倶楽部
【その他 官能小説】

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エロス短歌倶楽部の実態-1


雅美の知り合いのビルの二階にある会議室に会員は集まっていた。
その会の名前は「エロス短歌倶楽部」と言う。
主催者は、美しいと言われている綾川雅美である。

雅美が、そのエロス短歌倶楽部を始めたのは、短歌だけが生き甲斐だったからだ。
それ以外では、なにをしても雅美は好きになれなかった。
人から羨ましがられること、それは容姿だけである。
料理も上手くできないし、絵も上手く描けない。
スタイルが良いだけで誘われたダンスも、センスが無いと言われて続かなかった。
本を読むことは好きだったが、小説は書けない。
しかし、短歌を詠むこと、それだけが雅美にはあっていた。

その思いを強くしたのは、雅美が付き合った多くの男との性体験である。
なぜか雅美と付き合った男達は、偶然か短歌が好きだった。
雅美を抱きながら、男が口ずさんだ短歌というもの。

男に抱かれながら、それを耳元で聞いたときは嬉しかった。
膣に太いペニスを挿入されながら、その短歌を聞き、幾度も果てた。
抱かれながらじっと男を見つめて
「もっと詠って、もっと囁いて……」

抱きながら 逝くわと喘ぐこの女 愛に濡れにし 白きやわ肌
目を閉じて 抱かれて眠るその顔は 天使のように 美しきかな

甘える雅美に、男は苦笑しながら朗々と短歌を詠った。
その男は大学生の頃、短歌クラブに所属していたという。

だが、その男の詠んだ短歌は「短歌」と言えるようなものではなく
雅美との情欲のものが多かった。
男は雅美を興奮させる為に適当に詠んだもので、真の短歌とは言えない。
それを知らない雅美はそう言うものが「短歌」だと思い込んでいた。
それが今に繋がっている。

「エロス短歌倶楽部」を開催したのは、暇を持て余していた
雅美の自己満足の為であり、
もとより確かなる短歌を広めようとは思っていなかった。

故に、ここに集まって来るメンバーは、真から「短歌」を愛する人達ではない。
「エロス」という名前に興味を持ちながら、
雅美に打診してきた多くの短歌を詠む人達は
雅美の説明に失望して入会しなかった。
そういう背景がある中で、入会した人物の品性は自ずから分かると言うものである。

雅美は、今までの自分の性体験を誰かに聞いて欲しい
知って欲しいという思いがある。
そのとき閃いたのが、男達から教わったエロス短歌だった。
また自分と同じような思いの人のことも知りたい。
その思いを「短歌」という媒体で表現したいと言う単純な気持ちだった。

この後に、この倶楽部がセックス同好会のようになるとは
雅美自身もそこまでは考えていなかった。
単なる、エロチックな言葉遊び位しか考えていなかった。
それが思わぬ展開になっていく。

その頃に買って読んでいた著名な短歌人の歌集は、
雅美には感動を与えなかった。
もとより、動機が不純な気持ちの雅美が開催したその倶楽部、
そこに集まった人物達も同じ穴の狢(むじな)と言えるのかもしれない。



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