第十六章 試練-1
(呪いは・・・まだ解けてはいないのですか?)
祭壇で祈りを捧げるルナは、この言葉を何度心に浮かべたであろう。
あの時のディオンの複雑な表情の訳を、今更ながら理解するのであった。
自分達の試練は終わりではなかった。
アズートの呪いは一夜で解ける程、甘くはなかったのだ。
城に戻ってからもルナの「月のもの」が続く間、二人は貪るように互いを求め合った。
ルナの泉から溢れる聖水をディオンは飲み干し、日に日に体力を回復していった。
ルナもディオンの愛を受け止め、「澄み切った精気」の力で心の中の邪悪な欲望も徐々に晴れていき、発作も和らいだように見えた。
しかし、その力も長くは続かなかった。
「月のもの」が終わり、金色に輝く聖水が枯れてしまうとディオンも奮い立たなくなってしまった。
ルナの懸命の愛撫もむなしく、再び苛立ちの募る日々が続いていった。
次の過ぎ越しの日が近づくにつれ、ルナの身体は火照り、夜ごと狂おしく男を求めるのだがディオンにはどうする事も出来なかった。
まだ呪いを解くには力が必要だったのだ。
ディオンとルナは、残酷な試練が待ち受けている事を悟った。