第二十章 街-2
二人の先導で樹海のほとりにやってきた。
「革命は失敗に終わりました・・・」
キエフの説明で、二人はここ数ヶ月間の王国の変わり様を知った。
アズート司教が権力を欲しいままに使い、次々と民衆を弾圧していたのだ。
遂に蜂起したキエフ達の革命軍もアズートの魔力に操られた屈強の兵士達にことごとく捕らえられ、処刑されていった。
何とか逃げ延びて機会を伺っていたキエフも先日捕らえられ、見せしめのための鞭打ちの刑の後で処刑される所だったのである。
「もう、アズート司教を止められる者は
誰もいません・・・。
王様もお亡くなりに・・・」
「ええっ、お父様が・・・?」
「残念ながら・・・。
今、名目上はマチルダ王妃様が
王位を継いでおられます。
しかし実権はアズート司教が握り、
亡き王のための神殿として王宮よりも
大きな建物を建設中なのです」
キエフの説明を、ルナは悲しみと怒りに肩を震わせて聞いていた。
それをディオンが後から支えるようにしている。
新しい神殿建設のために民衆は駆出され、ただでさえ苦しかった生活が益々悲惨なものになっていった。
「もう、限界です。
民衆は再び蜂起します。
私もそれに加わるくもりです。
どうせ生きていたところで、
苦しむだけですから・・・。
姫様はお逃げ下さい。
あの男には誰も敵わないでしょう。
今、貴方の存在が知れると、
何をされるか解りません・・・」
振り絞るようなキエフの声であった。
ルナはその太い腕を取ると、リンとした表情で言い放った。
「いいえ、私は逃げません・・・。
ディオンと共にアズート司教と闘います。
たとえ敵わぬまでも、刺し違えてみせます」