カルテ1 藤堂倫 27歳 新聞記者-4
高層ホテルのスイートルーム、アイボリーを基調とした清潔感のある部屋だった。
ベッドサイドに置かれたスタンドのスモールライトが淡い光を放っている。
カーテンの開かれた窓から望める東京のネオンが部屋に忍び込んでくる。
倫は背中で幸介の体温を感じていた。
胸元に組まれた腕が離れ、180度反転させられる。
そして、両頬を包まれ薄い唇がゆっくりと近づいてくる。
軽く瞼を閉じて、その瞬間を待った。
乾いた唇が触れる。
頬を包んだふたつの手のひらは背中へ移動し、さらに一つはくびれたウエストへ下って行く。
さっきまでの緊張はすっかり融けて、胸の前にたたんだ両腕も力が抜け落ちた。
ボタンを全て外され、小さな声で「シャワーを」と呟いた。
初夏の夕暮れを小走りに歩いた汗が気になった。
倫の指に触れる幸介の胸はさらさらと乾いている。
「汗をかかないのね?」と聞いてしまった後に、こんな時に言う台詞じゃないと後悔した。
幸介は倫の言葉を無視してブラウスを肩から外した。
そして、そっとソファーに投げ捨てるとタイトミニのスカートに手をかけた。
サイドファスナーを音もさせずに下ろすとスカートは床に落下する。
下着だけになった倫の前で自分の服をとり始めた。
ストライプのシャツとスラックスを絨毯に脱ぎ捨てる。
倫は身動きせずに幸介を待った。
幸介はボクサーパンツだけになると、倫の背中に両手をまわしてブラジャーホックに指をかけた。
カチッと微かな音とともに豊かな乳房が圧迫から開放された。
幸介は恥ずかしげもなくボクサーパンツを脱ぎ、あっさりと絨毯に落とした。
両腕でバストを隠し幸介の様子を見つめていた倫が、目の置き場に困り横を向いた。
しかし、ドレッサーの鑑にすべてが映っていて、あわてて瞼を閉じた。
幸介は揺れ動く倫の心の波長を全身で感じ取っていた。
再び強張ってしまった身体を軽々と抱き上げベッドへ運び、純白のシーツの上にゆっくり降ろすと、しばらくその場に立って優しい目で倫を眺めてみる。
まだ両腕で胸の膨らみを隠し続けている倫は、幸介の温かな視線を受けて身体が熱くなるのを感じた。
このまま見つめ続けられたら変になってしまうと顔を横に背ければ、モスグリーンのソファーに自分が着ていた白いブラウスと薄いピンク色のブラジャーがあった。
そして絨毯にはグレーのタイトミニと脱ぎ散らかした幸介のシャツ、スラックスが落ちている。
単色のボクサーパンツがまぶしかった。
幸介はまだ倫を眺めている。
白い肉体には縁のない眼鏡とショーツだけが残されている。
ブラと同じピンク色のショーツは、発育したヒップを隠すには少しだけ小さすぎる。
白く豊かな乳房とくびれたウエスト、肉付きのいいヒップから長くまっすぐ伸びた脚が部屋の空気によくマッチしていた。
倫の上に引き締まった幸介がいた。
その逆三角形の背中の筋肉がゆっくりとうごめいている。
幸介は倫の頭の下に置いた左腕で自分の体重を支えながら、紅潮した顔をしばらく眺めてから唇を耳たぶに軽く当てた。
そして左の乳房に右手を伸ばしていく。
倫は薄い肌で幸介の指を追いかける。
乳房の麓に辿りついた指は、そこから頂上に向かって螺旋を描くように上っていく。
たっぷり時間をかけ登山を楽しんだ指は、頂上にたどり着く手前で足取りを止めて、登って来た道を麓へと下っていく。
胸の左右の丘にこれが繰り返された。
倫の神経は乳首に集中させられ、そこは触れられる前から痛いほどに固く尖ってしまっている。
(もう焦らさないで)と言葉にしたいのを堪えた。
下腹部は熱く疼き、滲みだした愛液がショーツに染みを作っているはずだ。
感度の良すぎる肉体が憾めしい。
私はそんな淫乱じゃないと心で否定しつつも、両腿を固く閉じその瞬間が訪れるのを倫は待っていた。
結局、幸介の指は乳首に到達することなく下腹部へと下って行った。
ゆっくりだが真直ぐに敏感な突起を目指して降りて行く。
指の歩調にあわせ、うなじを刺激していた唇も鎖骨から豊かな乳房へと移動して行った。
待ち望んだことがもうすぐやってくると、倫は嬉しさに身体を震わせた。
幸介の指はショーツの上からしげみを愉しみ、そして、いよいよ倫の望むそこへ辿り
つこうとしていた。
濡らしてしまっていることを知られたくないから両腿をきつく閉じようとした。
しかし欲望が邪魔をするのか、脚に力が入らない。
指はあと数ミリで到達する。
シーツを握り締め、その瞬間を待った。