麻衣ちゃんの乳首-5
俺は下半身裸のまま立ち上がると、脱いだ服を洗濯機に放り込み、精液が染み込み始めたティッシュをトイレに流すと、室内着に着替えてカップヌードルに湯を注いだ。麻衣ちゃんでオナニーするテンションで疲れ切ったから、とてもじゃないけれど夕食を今から作る気力はない。
カップヌードルと缶ビールをデスクに置き、ブラウザを開いて検索窓に「小学校 性教育」と打ち込む。検索結果をいろいろ読んでみると、小学校では具体的な性教育は4年生から、道徳と交えたざっくりした教育―たぶん貞操教育みたいな感じだろう―は1年生から始めるようだ。俺のときはどうだったかな。小中高大の十六年間を通して勉強嫌いだった俺に小学校低学年の頃の授業の記憶なんてほとんどない。
保護者の体験談や専門家の意見をまとめると、児童の性知識は結局、自然に覚えたり家庭環境によって早い遅いがあったりするもののようだ。確かに俺も、小3くらいのときに夜布団の中で無意識におちんちんをいじったりしていた記憶がある。性的に気持ちいい、という実感があったわけじゃないと思うけど―精通現象は中1だったし―、排尿以外に普段触ったりしない箇所を弄ったりDNAに刻み込まれている「おちんちん=生殖器」という概念にぼんやりと芽生えたりといった、一種の背徳感からの快感はあったように思う。
しのちゃんはどうなんだろう。はるかぜ公園で俺のおちんちんを見たがったのは母親の不用意な発言がきっかけだったのは明らかだ。でも、おちんちんを実際に見たときのリアクションや、その後しのちゃんのパンツを見せてもらう交換条件に俺のおちんちんを出してきたあたり、小学2年生のしのちゃんなりに性の淫靡さをどこかで感じているのかもしれない。
しょうゆ味のカップヌードルをすすり終わった俺は、しのちゃんフォルダを開くと、ずらりと並んだ画像や動画ファイルのひとつをダブクリ
した。動画ソフトが起動し、はるかぜ公園の小さな林をバックに中森明菜の「北ウイング」を歌うしのちゃんの姿が表示された。なんでこんな俺すらも生まれていないような頃の曲をしのちゃんが知っているのか謎だったけれど、どうやら人気声優がカバーアルバムで歌っているらしい。スピーカーからしのちゃんの歌声が流れる。俺にとっては明菜の声よりも耳に心地良いしのちゃんの歌声だ。
二番に入ると、俺のスマホは歌うしのちゃんの顔にズームした。画面いっぱいに広がるしのちゃんの顔の、歌詞のひとことひとことを丁寧に歌う大きく開いた口。乳歯から永久歯への生え変わり時期の、ところどころ隙間が空いた歯列や、母音に合わせて開いたり閉じたりする唇。しのちゃん、キスってなにで知ったんだろう。
画面の中で動く、しのちゃんの息臭が感じられるくらいにレンズが寄った、しのちゃんの口元。それを見ている俺の鼻腔や口腔に蘇る、しのちゃんとキスしたときの息臭や唾液の感覚。部屋着の下で、つい三十分くらい前に射精したばっかりのおちんちんが滾り始める。やれやれ。
しのちゃんが歌う動画のしのちゃんの口元を見ながら、しのちゃんの8歳の息の匂いや唾液の味を思い出し、歌い終わったしのちゃんが「いえーい!」とピースしたその瞬間で動画を一時停止させて、尖った先端がわずかに伸びかけている生えはじめの糸切り歯を見ながら、さすがにさっきよりはだいぶ薄まった精液を射精した。この性欲どっから来てんだろう。精のつくものなんかたいして食ってないのに。26歳の男ってみんなこんなもんなのかな。
もう一回トイレでティッシュを流し、ぬるくなりかけた缶ビールを喉に流し込む。半分くらい仰向けになった俺の目線に、コルクボードにぶら下げられた巾着袋と、その隣ではじけるような笑顔を見せるしのちゃんの四切の写真が入る。
しのちゃん、ごめんなさい。俺は今日も煩悩まみれで、しのちゃんじゃない女の子ですっごい気持ちいいオナニーをしてしまいました。でも、愛しているのはやっぱりしのちゃんだけなので、許してください。
そして麻衣ちゃんもごめんなさい、麻衣ちゃんの彼氏でもないのに麻衣ちゃんの乳首を見てしかも盗撮してそれでオナニーして。でも、麻衣ちゃんを性欲の対象にすることと、麻衣ちゃんを職場の仲間としてそして人として尊重することはちゃんと分けているつもりなので、どうか許してください。
夏の暑さと仕事の疲れに加えて短時間で二回も射精したことで上限に達した疲労感がビールの酔いを早める。俺はわけのわからない言い訳を頭の中でつぶやきながらゲーミングチェアの中でそのまま寝落ちした。