「向こう側」第二話-2
「はっ!何でしょうか!?」
どうやらアーリアムもこの老人には頭が上がらないらしい。
「お話の最中すまないね。さてバッジ君、私の耳が正しければそこにいる少年は『下の世界』の人間と言ったが確かなのかね?」
「まぁそうだな、“自称”だからまだ何とも言えねーけど、まさかじぃは信じるつもり?」
「信じる信じないの問題ではなかろう。これはその少年自身の問題じゃ。どれ、ちょっとこっちへ来てくれんかの?」
スグルはぎこちない足取りで老人に近づいていった。
近づけば近づくほど老人の存在に圧迫感を覚えた。
スグルが老人のそばまで来ると老人のしわくちゃの手がスグルの顔に触れた。
スグルはその老人の優しい眼差しに自分のすべてを見透かされている感じがした。
「ふむふむ、なるほど…少年よ名は何といったかの?」
「スグルです」
なぜだかわからなかったがさっき名前を言ったときよりスグルの気持ちは落ち着いていた。
「スグルか…いい名じゃ。ウィル、すまんが研究室の棚の一番右上にあるものをとってきてくれんかの?」
「はい!承知しました!」
ウィルと呼ばれた少年は重たそうな荷物を床に置いて急ぎ足で研究室へと姿を消した。
しばらくして大きな水晶玉のようなものをかかえてウィルが姿を現した。
「持ってきましたけど…これって一体何なんですか?」
「それはこれからわかることじゃ。スグルよ、これに手を触れてくれんかの?」
ウィルがスグルのそばに水晶玉を置いた。
「わ…わかりました…」
スグルが水晶玉に両手を添える。すると
ボワッ
水晶玉の中心が小さな太陽のようにまぶしく光りはじめた。
「うわっ!!」
スグルは驚きその水晶玉から飛び退いた。
水晶玉はスグルが離れると光を失った。
そして部屋の中ににいる全員が老人の言葉を待った。
ほどなくして老人の重い口が開いた。
「どうやら…このスグルという少年が『下の世界』から来たのは紛れもない事実のようじゃ…」
部屋全体にどよめきが起こった。
そしてすぐにアーリアムが異議を唱えた。
「ヴェラマージ様、お言葉ですが自分にはとても信じられません。御存知のとおり約60年ほど前を境にして『下の世界』の者は姿を現さなくなった。そして今突然新たな『下の世界』の者がやって来た。それがこの少年だなんて…やはり信じられません」
「ふむ、おぬしの言うとおりじゃ。信じられぬのも無理はない。しかし、事実なのじゃ。おぬしも見たであろう?これは簡単にいうと触れた者の内在エネルギーを形にする装置でな、『下の世界』はこの世界とは違って“太陽”という膨大なエネルギー源があるらしく、その世界に住むあらゆる生物にとってなくてはならぬものなのじゃ。つまり『下の世界』の者はこちらの世界からするととてつもないほどのエネルギーを蓄えているというわけじゃ」
スグルはこの世界の人達が自分のいる世界の存在を知っていることに先ほどから違和感を感じていた。
そして自分がこの世界にいるべきではないような気持ちがした。