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「向こう側」
【ファンタジー その他小説】

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「向こう側」第四話-6

コツ コツ コツ

ドックン ドックン ドックン

足音と心臓の鼓動が軽快にリズムを刻む。
スグルの視界に男の靴が現れた。

たのむ…このまま通り過ぎてくれ…!

コツ コツ コツ

望み通り男はスグルの前を通り過ぎた。

(ほっ…助かった…ん?)
安堵の息をついたスグルだがあることに気がついた。

足音が止まった。

(ま…まじかよ!ふざけんなよ!)
うずくまりながらスグルは心の中で叫んだ。心臓がまたもや激しく脈を打つ。

「…小僧、こんなところで何をしている?」

冷たく研ぎ澄まされた声がスグルの頭の上から降ってきた。

(どうする!?俺!シカトするべきか、それとも…)

覚悟を決めたスグルは立ち上がり、男を真っ正面から見据えた。

「人を待ってるんです。あなたには関係ないことだと思いますけど?」

ここでスグルは男の顔を見た。銀色の長い髪、整った顔立ち、そして、あまりに冷たい目をしていた。
スグルはこんなに冷たい目をした人を見たことがなく、自分の心も冷えきってしまいそうな感覚がした。

「誰を…待っていたんだ?」

ガシッ

男の右手がスグルの首を掴んだ。
突然の出来事にスグルは訳が分からなくなった。

(なんだよコイツ…頭おかしいんじゃないのか!?)

「…っ!は…なせよ…」

スグルは男を睨んだ。

「は?」

「この手を離せって…言ってるんだ…!」

男の目がスグルの顔を突き刺すように見続ける。

「…ふん、おもしろいガキだ」

そう言うと男はスグルから右手を離した。


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