覚醒、欲しがる未亡人 本間佳織B-1
*
佳織は隣の席の隼人を意識しながら、なかなか仕事に集中できずにいた。
何となく、見られているような気がするのだ。
性的な視線を向けられているーー
そんな気がして、仕事に集中できなかった。
ーー隼人が異動してきてから初めての週末。
佳織は、以前夫との夜の営みのために購入していた、セクシーな下着を下半身に身につけて通勤電車に乗り込もうとしていた。
白いカットソーに、ハイウエストのグレーの、膝丈までのタイトなスカート。
何の変哲もない肌色のストッキングを身につけているがそれは太ももまでのセパレートタイプのもので、スカートの中のピンク色のガーターベルトと繋がっていた。
柄にもなく、隼人に誘われるかもしれない…とどこか思っていた。
ーー電車が佳織の最寄り駅に着いて、佳織は車内の乗車入口と、座席とのちょうど隙間の、角の位置に体を滑り込ませる。
車内はかなり冷房がきいているはずだが、如何せん、人がぎゅうぎゅうと押し寄せてくる。
臀部付近にかいた汗が、スカートに張り付いてしまう、いつもとは違う感覚があった。
そんなときだった。
すっ……と臀部を何かがなぞる感覚があった。
(ーーえっ……)
気のせいか、と思ったのもつかの間……
すー、すー、と佳織の髪の辺りで、嫌な息の吸い方をしている男が後ろに立っていることに気づいた。
(髪…嗅がれてる…?やだ、気持ち悪い…)
男は、すー、はー…と佳織の匂いを嗅ぎながら、佳織の臀部の感触を手のひら全体で楽しむように、じっくりと撫で付けている。ねっとりと汗ばんだ男の手の感触が、佳織の臀部へと伝わっていった。
ただ匂いを嗅ぐような呼吸の合間に、はあはあ、と荒い息が混じる。
男が興奮してきた証だった。
(…当分、ドア…開かない…。嫌…!)
佳織の胃がしくしくと痛み、今にも吐いてしまいそうだった。
前回、痴漢にあったのは悠斗が偶然同一車両に乗り合わせた時だったが、今は誰も助けてくれるものはいない。
佳織はこれまで痴漢に合う方ではなく、その回数も数えられる程度だった。
「はあ…はあ…」
男は興奮して、佳織の腹の辺りに左手を回して、自身の股間を佳織の臀部に押し付ける。
半ば固くなったそれを、電車の揺れに合わせて擦り付けてきた。
佳織は逃れようとするが、この満員電車の中では、むしろその動きによって、男の股間に臀を押し付けるような形になってしまう。
「い、や……」
蚊の鳴くような声で、佳織は抵抗の言葉を吐き出す。