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女子中学生 辱めの部室
【学園物 官能小説】

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あのショーは彼の人生をどう変えたのか 2-2

 高2で同じクラスになった佐々木美鈴は、見るからに清楚な感じの少女で、雰囲気もみさきを思い出させるものがあった。確かにこの時ばかりは茂正も強く心惹かれ、同じ委員に立候補したことを皮切りに、初めて彼から積極的にアプローチした。
 美術部員の彼女とは絵の話でも意気投合し、かなりいい感じにまで行った。彼女の絵を可愛く描いてあげると喜ばれた。何度かデートもした。一緒に美術展に行くのは定番だった。明確な告白は経ていないものの、付き合っているといっていい状態になった。

 とはいえ結局、茂正は彼女を通してみさきの面影を追い求めていたようなものだった。白い肌、華奢なからだつき、楚々とした物腰、それらがどこまでみさきに似ているか、どこまでみさきを思い出させてくれるかでしか、彼女を見ていなかった。美鈴はあくまで、みさきという永遠の女性像の影でしかなかったのだ。
 交際していた最中の時期だって、茂正は家では彼女よりもみさきの絵ばかり描き続けていたのだ。
 美鈴の方も、何か違うことをすでに感じていたようだった。自分と彼との間を、何かが隔てているような様子。茂正が見ているのは本当は彼女自身ではないこと、だ。

 そして茂正は致命的な失態をやらかす。「みさき」「みすず」と、「み」で始まりサ行が続く名前が似ていたせいもあったのだろう。彼女の名前を間違えて「みさき」と呼んでしまったのだ。

「そのみさきって、誰?」
 出会って間もない頃ならまだしも、数か月付き合っていたのだ。当然、美鈴からは浮気を疑われた。茂正は実際にそんなことはしていないが、本当の思慕はみさきにこそあり、心ここにあらずの状態だったから、ある意味では中らずと雖も遠からずだった。うまく弁明もできないまま、これで彼女の心も決定的に離れ、破局に至った。

 3年生に進級し、新しい教室で同級生の女子たちを見回してみると、彼女らもずいぶん大人に近づき、いよいよ少女としての時代を終えようとしていることに気づかされた。そうなれば、異性として惹かれるところが無くなっていく。当然茂正自身も思春期の終わりにさしかかっているが、それを過ぎても、彼が心動かされるのはもっぱらみさきを範型としたような可憐な少女以外に無い。それはきっと、一生変わらないだろう。自身のなかで、それを再認識させられつつあった。

 まだリアルの相手を求めたいという気持ちはあった。だが彼の思慕を多少なりとも埋めてくれるような女の子は、下級生の間にしか探せなかった。もう相方がいたり、その気がなかったり、あるいはやはり彼の理想像からはやはりかけ離れていたりで、付き合う機会を持つことはなかった。逆に告白してきた女の子が前年のクラスメートでいたが、清純派とは真逆のタイプだったから、本当に何とも思わずに断った。

 卒業を控えた頃には、大学生になれば、もう身近な異性たちの中にみさきのような女の子は求めるべくもなくなる。それを予感せざるを得なくなっていた。

 高校時代もずっと優等生で通した彼は、大学受験も順当に成功した。志望通りに関西の有名私大の経済学部に合格し、地元を離れることになった。

「新東中学校3年A組同窓会のご案内」
 高校卒業直後に、茂正のもとにも連絡が届いた。あの件は抜きにしても中学時代にあまりいい思い出が無い彼としては進んで出席したい気にはならなかったが、それでも迷った。みさきにもう一度会えるかもしれない。だが、今の彼女の姿を見るべきかどうか、だ。

 みさきの進んだ高校は知っていたから、それまでも文化祭の時にでも行けば彼女の姿を見られたかもしれない。だが、そういうことはあえてしないできた。だがこの機会はどうするか。
 あり得ない話だとは思うが、高校の3年間でギャルにでも変貌していたら目も当てられない。何もかもがぶち壊しになる。彼氏でもできているという話などあったら聞きたくもない。相変わらず清純派のままだったとしても大人に近づいていることは間違いなく、中学時代そのままではない。
 そもそも、たとえ顔を合わせたとしても、どうせ話もできるはずはないのだ。避けられるに決まっている。それなら実物を見るよりも、自身の中で彼女を永遠の女性像のままにとどめておきたいという思いの方が勝った。

 結局、「欠席」の返信もしないまま、参加は見送った。後で聞いた話では、みさきは出席していなかったという。彼女の高校卒業後の進路も、何も聞いていない。これで地元を離れる以上は、街で偶然に見かける可能性も、限りなく低くなったといえよう。

 これが、彼の観念のなかでのみさきが、現実の彼女と完全に切り離されたその時だった。
 彼にとってみさきとは、中学時代の清純無垢な美少女。それが全てとなった。絶対に手が届かない代わりに、いつまでもあれ以上成長せず、歳をとらず、あの清楚な美が移ろうこともない。誰と結ばれることもなく、穢れることもない。ただ心の中で思慕し続けるだけの対象であり、また女性の美の規範を彼に提供するものとなった。

 もはや彼にとって、「相生みさき」という固有名の意味も至って乏しくなった。それは彼の中にある永遠の女性像を示す符号の役割を果たすも同然になった。
 そこまで言うのが極端だとしても、せいぜい「キャラ名」に近かった。いつまでも姿かたちが変わらず、可愛く魅力的なままである一方で、決して三次元に現れることはなく、現実に結ばれる可能性は全く無いアニメキャラと変わらなくなったと言ったほうが適切かもしれない。

 あるいは、そう言ってよければ、彼女は見えない世界にいる女神様も同然となった。彼女に寄せる思慕は、ある意味では崇拝にも近いものになっていたのだ。


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