あのショーは彼の人生をどう変えたのか 1-1
あの出来事がなかったら、自分の人生はどうなっていただろうか。
少なくとも、こんな嗜好を持つ男になってはいなかったかもしれない。
そう、田野茂正は振り返る。
あれは中学3年生の夏休み前の、ある日のことだった。
放課後、クラスメートの佐藤朝菜から「いいものを見せてあげる」などと言われ、わけもわからないまま水泳部の部室にまで連れてこられた。
そこで彼は、思いもよらぬものを目にする。
それは、下着しか身に着けていない女の子の姿だった。顔を見ると、同じくクラスメートの相生みさきではないか。
「あ、相生さん……」
彼女は物静かで控えめな女の子だが、学業では学年トップクラスの優等生。勉強だけが取り柄だった茂正も、彼女のためにこの間の試験もクラスで二番に甘んじていたから、それだけでも気になっていた。
だがそれ以上に、彼女は可愛い。ほんとに清楚で可愛らしい。それでたびたびその顔を見やっていた。掃除の班が一緒だったので、その機会など、特にだ。
とはいえ淡い憧れ以上のものではなかった。自分のような冴えない陰キャ男子はそもそも女の子には縁がないし、ましてあれほどの美人なんて手が届くはずがないと思っていた。野球部のエースで女子に大人気の西永浩介が彼女に告白して振られたという噂も最近耳にしている。なおさら、高嶺の花以外の何ものでもない。
だがそのみさきが、ブラジャーとパンティだけの姿に剥かれて目の前にいた。
これがいじめの光景であることぐらい、茂正にもすぐわかった。
中心はC組の赤倉瑞華。クラスが一緒だったことはないが、派手好みで女王様気取りで、気に入らない相手にはつらく当たりがちなキツイ女だというのは知っていた。事情はよくわからないが、みさきがそのターゲットにされたのだろう。単に可愛いから気に入らなかっただけかもしれない。
それに茂正は憤りを覚えはしたものの、これに便乗すればあんな可愛い女の子の下着姿を存分に見られるのだ。
茂正はそれまで母親の厳しい教育方針のもとで思春期の性的興味を徹底的に抑圧され、まだ漫画雑誌の水着グラビア以上のものは見たこともなかった。そういうものすら買って帰ると叱られかねず、店での立ち読みか、友達のものを見せてもらうぐらいしかなかった。スマホも持たせてもらえず、PCもR-18のものは絶対に閲覧できないように設定されていたし、実質彼専用なのにリビングに置かれ、ほとんど母親の監視下でしか使えなかった。
そんな彼にとって、千載一遇ともいうべきチャンス。邪な思いに、彼は抗うのをやめてしまった。
「見ないで!」
恥じらうみさきをよそに、茂正は彼女の下着姿にすっかり見入った。透き通るように真っ白な肌やむき出しのお臍、儚げなからだの線が、彼の目をすっかり奪う。さらに、彼女の下着に覆われている部分が気になってきた。
それを見越したかのように瑞華たちは下着まで剥いで、みさきを裸にしてしまった。
「いやぁっ!」
茂正もここまでやる瑞華たちの酷さに気圧され、唖然としつつも、連中に加担してしまった以上、もう後戻りはできないと自分に言い聞かせた。そうして恥じらいにわななくみさきの裸身を、まじまじと見つめた。
みさきの一糸まとわぬ姿は、息を呑むほど美しかった。透き通るように白い肌が、本当にくまなく露わになっている。胸の慎ましやかな膨らみは、まだ色気には乏しいものの、彼女の楚々とした雰囲気によく合っていた。
そしてまさか生で見られるなんて夢にも思わなかった、女の子の秘密の部分。みさきのそこには、恥毛がまったく生えていなかった。中学3年生にもなってこれは珍しいが、そのおかげで、これまで茂正も妄想をめぐらせてきたものがどんな形をしているのか、はっきりと観察できた。
恥ずかしげにぴったりと綴じ合わさった、一本筋のワレメだった。とても可愛らしかった。
そのワレメが押し広げられ、性器の奥まで晒されると、目玉ごと吸い込まれそうなぐらいの様子で彼は見入ってしまった。
もう興奮が限界に達していることを見透かされたのか、瑞華にズボンのチャックを開けられて、すっかり屹立したモノを晒された上、その先を弄ばれた。そして我慢できずに白濁液を射出してしまう醜態を晒してしまった。
あまりに屈辱的なことだった。瑞華たちのいじめに便乗して、自分の性的好奇心を満たそうとした報いかもしれなかった。
「これ、あんたの中に突っ込んじゃおうかな」
床に落ちた彼の精液を拭き取ったティッシュをみさきの性器に突き付けて、瑞華がこんな風に言った時には、さすがに彼も狼狽した。
そんなことをされたら、みさきは妊娠してしまうかもしれない。しかも、その子供の父親はほかならぬ茂正自身ということになるのだ。
どうせそうなるのなら、自分で彼女に挿入したかった……酷い話だが、茂正はそんなふうにもふと思ってしまった。
実際には瑞華もみさきの恐怖を煽る目的で、そんなふうに言っただけだった。
ショータイムは、これで終わった。先ほどの醜態もしっかりスマホで撮られ、それを盾に口止めされた。
ようやく制服を着終えたみさきともども茂正は部室の外に出されたが、もはや罪悪感と恥ずかしさで彼女の顔も見られない。
「相生さん、ごめん!」
そう言うなり、矢も楯もたまらずその場を駆け去るだけだった。一度だけ振り返ると、みさきはまだ茫然と立ち尽くしていた。
茂正はその日も放課後は塾があった。だがあの時に見たみさきの裸が頭を離れないままであり、とても授業を聞くどころではなかった。
その晩、家で改めて独り遊びに耽った。みさきには申し訳ないと思いつつ、あの裸身を思い返すだけでドキドキし、男のモノも頭をもたげてくる。昼に一度瑞華たちの手で弄られ、無様にも射精させられたが、思春期ただなかで旺盛に産出されるものは、あれぐらいで尽きることはなかった。