社内秘 飯塚冴子@-1
友達の母親は未亡人
飯塚冴子編ー『社内秘 飯塚冴子』
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(ああ…結局、慈善事業したみたいになってるじゃない…)
飯塚冴子、もうすぐ四十一歳。
アパレル会社の本社で、生産管理部に勤めている。
要は在庫管理をするような職で、元々冴子は店舗に勤めていた販売職だったのだが、十年ほど前に本社に異動になった。
社内に結構いいセフレーー生産管理部の同じチームの門井悠斗を見つけたと思っていたのに、冴子より年上の素敵なオネーサマと結ばれてしまった。
一応、関係は続けてもいいとのことらしいが、冴子が悠斗とのセックスを佳織に見せてからというもの、色々な不満や不安が解消されたのか……
あれから一ヶ月ほど、満たされている悠斗からは全く誘われる様子もない。
「あ。そういえば……タカギにこの販促用のポスター、倉庫に入れとけって言われたんだっけ…」
冴子の席の後ろに台車と共に置いてある、かなりの量のポスター。
タカギとは、同じ店舗に勤めていた同期の男性だ。
歳は冴子より少し上だが、同期入社のため、苗字を呼び捨てにしている。
今は広報宣伝部におり、店舗では実績があったのだが、冴子が本社に異動になった頃、本人も異動を希望したのだった。
時刻は十九時半。
今日は平日のど真ん中で、この部屋の中で残業をしているのは、冴子と、冴子の席からは遠いところにぽつんと一人座っている、男性社員のみであった。
冴子の呟く声が大きかったのか、遠い席から「あの、飯塚さん」と声が聞こえてきた。
彼は立ち上がり、少し大きな声で冴子に話しかける。
「僕も、高木さんに倉庫の整理頼まれてるんです。ポスター置くの、ウチが使ってる倉庫ですよね?」
「あ……はい。そうです」
ーー彼の名前が思い出せなかった。
今年の四月に入社した、広報宣伝部の男性社員だったはずだ。
「あ。今年の四月から採用になりました、原将宗(はらまさむね)と申します」
「ーー原くん…でしたよね。ごめんなさい。手伝わせちゃって…」
冴子は社内にある簡易的な倉庫の入口で、社員証を照らしてドアを開けながら言った。
「いえ、どうせ同じ時間に鉢合わせちゃいましたしね」
冴子がやるはずだった台車の移動を、将宗が率先してやってくれたのだった。
「台車、あとはあたしでやりますね。これ、所定の場所に置くだけなので、整理するところ、少し手伝いますよ」