初めての視姦-8
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「ーーでは、また。
佳織さん、ご用命あれば、またお申し付け下さい。いくらでも見せてあげますよ」
ホテルを後にして、冴子は二人を駅まで送って解散した。
当然、悠斗と佳織の家は同じ方向なので、同じ電車で帰らねばならない。
だが、佳織は一言も話さず、俯いているままだった。
悠斗も、話しかけない方がいいだろうと、特に話しかけることをしなかった。
二人の住むマンションの最寄り駅に着いたのは、夕暮れ時だった。
マンションに着くまでも佳織は一言も発さない。
だが部屋の前で、今の時間、岳がいないから家に上がって欲しいと悠斗は頼まれた。
気まずそうに、悠斗がリビングのソファーに座ると、佳織は悠斗の右隣に腰をかける。
しばらく沈黙が続いたあと、佳織がぽつりと呟いた。
「見なきゃ、よかったのかな」
「え…?」
「飯塚さん…すごく綺麗だった。あたしなんかより若くて、細くて…余裕もあって」
では何故、見たいなどと言ったのか、と聞くことは簡単だったが、悠斗は口を閉じたままだった。
「あたしが他の人として…悠斗くんは飯塚さんとしてて…だからこそ、こうなったじゃない?あたしたちって。
だからさ…見たら興奮するのかなって安直に思ったの。でも違った」
佳織の声は震えていた。
今にも泣いてしまいそうな声だった。
「だって、飯塚さんと悠斗くんが今まで何回も、何回もしてるのわかっちゃったんだもん。むしろあたしの方が……先輩後輩の関係を超えて、しかもやらしいことしてるだけじゃなくて、信頼してる二人の間に割って入っちゃった感じがしたの。
すごくショックだった」
悠斗は何も言えなかった。
「わかってるの。あたしが悪いこと。だって夫への不義理を理由にして、悠斗くんのこと断り続けてたんだから。その間に悠斗くんが誰としてたって、責めようがない」
「ーーあのさ」
悠斗は佳織が話すのを遮った。