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『真由〜不確かな現実と、確かな欲情の中で〜』
【その他 官能小説】

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『真由〜不確かな現実と、確かな欲情の中で〜』-3

カーテンを抜け、レジの真由へ歩み寄る。心持ち突き出した腰が、勃起したペニスの輪郭をより鮮明にする。薄手のジャージ。秀典を見る真由。その視線が、秀典の股間を、見る。一瞬、囚われた視線は、真由の意志によって強引に外される。秀典の思惑。背中を走る歪んだ悦楽。
“見ろよ…ほら、もっと見ろよ…”
 ほくそ笑みながら、猛烈な自己嫌悪に襲われ、秀典の感情は大きく振幅する。
「ご返却は…」
 乾いた喉で真由の声。左手の薬指に小さく光る指輪。
「今日…」
 真由に語り返すことで、ビクンとペニスが一度上下に揺れる。
“もうここには来れないな…”
 ふいに湧く罪悪感。ペニスの先端を濡らした液が、無性に悲しく、秀典の意識を急速に現実に引き戻していった…。

 真由は手慣れたように、秀典が選んだビデオのバーコードを読み取る。見せつけることで、真由に、勃起した自身を気付かせることで得られ悦楽の時。秀典は鼻をすすりながら足下を見る。充血したペニスがゆっくりと頭を下げ、萎えていくのがわかる。自責の念と、後悔の思いが交錯する。異常な盛りを誇った性欲が、冷たい理性の前に伏していこうとしている。犯罪にならない猥褻行為。秀典の企みは、終わった…。
「これから?」
 心臓を射抜く真由の声。秀典の血が温度を上げながら逆流する。幻聴?気のせい?垂れていた頭を上げ、恐る恐る真由の顔を見る。
「楽しい?これ」
 予想だにしなかった真由の問い掛け。赤面を隠しきれず、秀典は言葉を探し損ねていた…。

 薄いメイク。小さく後ろに束ねられた髪。
「彼女、いないの?」
 未だ何一つ言葉を返せない秀典に、真由が話し掛けてくる。
「いたら…苦労しないさ」
 ようやく口を突いた言葉は、余りに不格好で弱々しかった。
「これから?」
 もう一度同じ問いが真由から放たれる。
「うん…」
 顎で秀典が頷く。同時に視界の左隅から男が割って入ってくる。
「お疲れさま。いいよ、上がってもらって…」
 シフト交替。真由はビデオとお釣りを秀典に差し出す。受け取る手の平に汗が滲んでいる…。レジを抜けようとする真由と、店を出ようとする秀典が擦れ違う。
「駐車場で…」
 小さく、真由が秀典の耳に落として立ち去る。振り返る余裕すらなく、秀典は歩を進める。店を出ると、午後の日射しが、直接脳に熱を浴びせてきた…。

「こっち、こっち」
 秀典の背後で真由の声。事務所から出てきた真由が、振り返る秀典を見て微かに笑う。無造作に車に鍵を差し込む。助手席の窓を開け、真由のまっすぐな視線が秀典を捕らえる。目。促す、目。スクーターに差した鍵を抜き、真由に車に歩み寄る。目。促す、目。助手席のシートと秀典の顔を交互に見る。ぶら下げ持ったビデオの袋が、カサカサと風に音を立てる。息を飲み、乗り込む。車内の芳香剤が、別な世界を思わせる。
「天満町のどの辺?」
 走り出した真由の車。
「何で知ってるの…?」
 ウインカーを倒しながら真由が答える…
「会員様だもの。常連の。」
 笑い声が、開けたままの車窓から風に乗って流されていく…。

 道順だけの会話。今の、この状況を、互いが触れないまま。ベージュ色の外壁。4階建て。ワンルームばかりの薄っぺらなマンション。
「ここなら大丈夫よね?」
 サイドブレーキの固い音。パワーウインドゥのモーター音。
「駐禁…」
 真由が秀典を見る。路上。車内。戸惑いと思惑。じれたように真由が秀典の顔を覗きこむ。
「帰らせる、気?」
 慌てて真由の目を見る。慌てて首を横に振る。艶やかな唇が、濡れているように見える。
「散らかってるけど…」
 車を降り、腕を背後に回し、リモコンでドアロックをかける。数センチの距離に互いの肩を並べ、階段を上がる。秀典の全身の血が、ジワジワと局部に集まり始めていた。

 部屋の鍵を開け、入ろうとする秀典の脇を真由が擦り抜け、先を越す。キッチンを抜け、6畳の部屋の真ん中に立つと、真由は大きく大きく息を吸い込んだ。遅れて入る秀典を見る。もう一度、大きく息を吸っては、ゆっくり吐き出す。薄手のピンクのセーター。胸の膨らみ。ジーンズ。腰の線。ファスナーの下の秘部の熱。ビデオの袋を床に落とし、真由の体を正面から抱き締める。欠壊した堤防。血液がペニスへと流れ込む。精液がざわめき始める。唇が触れ、唾液が溢れる。舌先が絡み、鼻と鼻が何度もぶつかる。背中に回した腕は真由の神経を撫でてゆく。
「この部屋…精子の匂い…」
 真由が囁く。
「好き…この匂い…」
 真由が囁く。
「精子の…匂いで…いっぱい…」
 真由が、囁く。


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