4日目-2
ふたりを乗せた車は、県外にある海辺の町に向かっていた。
「だけど不思議だね。3日前の夕方まで、僕はももちゃんの存在も知らなかったんだよ。それが今、世界で一番大切な子になってるなんて」
ももちゃんは、うれしそうだった。
「わたしが、かわいいからだよ」
僕も笑った。
「それ自分で言うかなぁ」
「わたしはもっと前から、お兄ちゃんのこと知ってたけどね」
「そういえば、いつ知ったの?」
「ナイショ。あのね、女はミステリアスな方がミリョクあるんだよ」
「そんなのどこで聞いたんだよ…まあいいか」
そう、過去の事なんてどうでもいい。
僕の疑問は何一つ解明されないままだが、今が全てだ。
こんな素晴らしい少女と愛し合える幸せ。他には何も要らない。
目的地までは結構遠いが、僕はあえて一般道で行くことにしていた。
単調な高速道路は面白くない。道中を楽しむには、この方がいい。
ももちゃんは助手席で楽しそうに
「あっ、あのお店、行ったことあるよ!」
などと話していたが…いつの間にか、眠ってしまった。
無理もないよ。あんなに早起きしたから。
まるで世話女房みたいに、洗濯して掃除して、旅行の準備して…本当に、しっかりした子だ。
しばらくすると、目を覚まして
「あれ?わたし寝てた?」
「うん」
「えーっ!?なんで起こしてくれないの?」
「早起きしたから眠いだろう?無理しなくていいよ」
「せっかくの旅行なのに、寝たらもったいないよ!」
「朝から色々してくれたから、疲れてるんだよ。本当は僕がしないといけないのに、ごめんね」
「それはいいの。わたしがしたいから。よしっ!もう絶対寝ないよ!」
そう言ってから10分後には、また眠ってしまっていた。