第0章 旅の始まり-2
ネットでタイムスリップ、タイムマシーンと言うワードを打ち込み検索してみた。当然実際にタイムトラベルした人の書き込みや情報などなく、一体いくつになってこんな事を考えているんだと俯きため息をついた瞬間だった。馬鹿な自分に苛立つようにマウスを激しくクリックした修だが、ふと顔を上げると、パソコンの画面が次第に渦巻き、まるでSF映画のワープする時のような映像が流れた。
「な、何だ…!?」
パソコンが壊れたか、もしくは変なトコをクリックし、ウィルスに感染してしまったのかと思った。やがてワープが終わったような映像に変わり、画面が真っ白になった。
「ヤバっ!何のウィルス踏んだんだ!?」
キーボードを押しても何の反応もない。いよいよヤバいな、そう思った時、白い画面からうっすらと人の顔が浮かんできた。その顔は次第に輪郭をはっきりさせ、最後はまるで宗教の教祖のような男の顔がアップで映し出された。
「な、何だ…!?やっぱウィルスか!?気味悪っ!!」
その教祖のような男はじっとこっちを見ていた。
「やっべー!何のウィルスだよ!?くそっ!」
面倒くさい状況になったと思った。家電屋に持ち込んで駆除して貰いしかないなとため息をついた瞬間、何とその教祖が言葉を口にした。
「ため息をつくと幸せが逃げるぞ??」
「!?」
目を丸くして驚く修。
(お、俺に言ったのか?いや、んな訳ねーし!一体何の動画だよ。)
ビビる修に、教祖は言葉を続けた。
「君は過去に戻りたいのか?」
「!?」
更に驚いた。まるでリモート会議でもしているかのような雰囲気だ。しかし修のパソコンにカメラはついていない。しかしまるで自分を見て話しているかのような教祖に気味が悪くなる。
(AIか?過去に戻りたいかとか、今の検索履歴をAIが処理すれば予測機能で分かるだろうしな。)
やはり何かに誘導するウィルスにかかったのだと思った。だがそうではないようだ。次の言葉に修は驚いた。
「過去に戻りたいか?高梨修。特に大学時代に食い損なった女子高生を食いに。いや、中学生の時に好きだった今瀬恭子の処女を奪いに。」
「!?」
そんな事、誰にも話した事はない。誰も知る訳がない。なのにどうして目の前に映る教祖が知っているのか混乱する。
「な、何で知ってんだよ…」
もしかして教祖は自分に話しかけているのかもしれないと、半信半疑でそう言った。
「知ってるさ。君の後悔は全て、ね。」
間違いなく会話として成立している。修には何が何だか理解出来なかった。
「な、何で俺と会話できんだよ!アンタ、誰だよ!」
「私か?フフフ、教えない。」
「な、何なんだよ!」
ますます気味が悪くなってきた。あちらは完全に落ち着いている。修は動揺が隠せなかった。