バトンリレー-1
あれ?
一瞬気が抜けていた。
何か山本から高額の商品を進められたけど、胡散臭くて断った事は覚えている、
しかし何の商品だったか忘れてしまった。
はたして何だったのか、でも今はそれよりだいじな事をしなければならない、
正面に立っている西野に
バトンリレーの指導をする必要があるのだ。
でも、なぜだか怯えている西野に向かってバトンを持って見せた。
「西野! バトンだ受け取れ」
「え、でも先生、それバトンじゃないです」
言われて見るとかなり短いバトンだ。
手のひらで隠れてしまうバトンは指でのばすと少し長くなった。
「何をしている、このバトンは短いけど、しっかり掴めば大きくなるんだ」
「先生、しまってください」
しまう? さっきから言っている意味が分からない。
「何を言ってるんだ、バトンリレーは教えただろう」
嫌がっている理由か分からない、
私の指導で反抗的なのは初めじゃないか。
強引だが、西野の手を掴んで引き寄せた。
そういえば初めて彼女に触れた事に少し背徳感がわいたけど、指導の一環だ。
そのまま彼女の手をバトンへ持っていく、
「先生、やめてください」と手のひらを開いて掴もうとしない。
「西野、バトンを手渡したいが、なぜだかこのバトンは私の体から離れないんだ、キミがつかむしかないんだぞ」
「だからバトンじゃないんです、先生正気に戻って下さい」
西野は真剣な顔で腰を引いて抵抗しているが、先生とゆう立場だからか無下に抵抗はできないらしい
もしかしたら強引に言えば、彼女は逆らえないのかもしれない、と黒い意思が出てくる。
こんな美少女を思うように操れるかもしれないと思っていたら、
「あ、バトンが伸びた、つかみやすくなったぞ」バトンが固く伸びてきた。
「先生、こんなの無理です、私には出来ません」
「特別指導してほしいとお願いしてきたのは西野だろう」
「違います、気づいたら職員室にいたんです」
「苦手な事は克服しないでどうする、逃げてはダメだ」
「バトンはヘタですが、それは持てないです」
「いいかげんにしなさい、まずは掴まないと始まらないじゃないか」
西野の手を両手で引き寄せた。
細く白く繊細で柔らかい西野の腕は気持ちいい、
肘あたりまで掴んでいるが、気にしていないみたいだ。
この細く伸びた指がバトンを掴んだら、どれだけ気持ちいいのだろう
って、あれ?何が気持ちいいのだろう?バトンの気持ちだろうか
不思議な事を考えたものだ……
「不思議ではないですよ、普通の事です」と、そばにいた山本が話しかけた。
なんだろう、俺の心が読めるのか?
「先生 正気に戻ってください」と西野
なぜそこまで嫌がるか分からない、困った、どうすればいいのか……と迷っていると
横にいる山本が「西野、あきらめなよ」と言った、
すると途端に力が抜けて
「これしたら、普通に戻ってくれますか?」聞いてきた。
何故か目に涙が溜まっている
「何んで泣いてるんだ?」と問うと
「今日の事は、誰にも言いませんから、先生の指導が行き過ぎただけだと思っていますので」と言う
確かにバトンリレーで手を強引に掴むのは行き過ぎだったと反省したが、
「無理やり手を引いてすまない、でも、今日、指導しないと終わらないように思えるんだ」
そう言うと、彼女の手がゆっくりとバトンに近づき、それを掴んだ。
西野の手は冷たくて気持ちいい。