起-4
【4】
その時であった。
「あれっ!!」
通り過ぎた児童公園脇の路肩に、よく似たハイビースが止まっていたのである。
勿論、ほんの一瞬だったので見間違い、他人の空似の線は否定できない。
もっともハイビースは色んな意味で人気車、少し車を走らせればよく見かける。
持ち主自体は歓迎しないがだろうが、常に盗難被害ランキングの上位に名を連ねる車種でもある。
当初仲田がどこかの廃車ヤードに辺りにありそうと思ったのも、その手の場所で解体された盗難車が海外へ輸出されてる手口があるからだ。
(どうしても、確かめなければいけない!)
仲田の心のなかに、随分昔に忘れ去ってしまった思いが沸き立つ。
仲田はよく似たハイビースを見かけた児童公園から、少し離れたコンビニ駐車場に車を入れる。
逸る気持ちを抑えながら、コンビニ店内に入ると特段欲しくもない菓子を二、三個買う。
いくら田舎のコンビの駐車場が広めと言えども、律儀な仲田は無断駐車の免罪符代わりに買い物をしたのだ。
車の中へ買い物袋を放り込むと、急いで気になるワゴン車へと走り出した。
300M程の全力疾走し近づいた物陰から、呼吸を落ち着かせながらあらためてハイビースを見つめる。
児童公園のトイレ寄りに面した路肩に止まっていたのは、やはりガテン系の運転していたハイビースバンであった。
目立った傷凹みと退色したボディーカラーや濃いカーフィルからも、見間違うはずもなく、何よりナンバーが一致した。