お満の特別稽古 準備編-5
【これお満。なんという破廉恥な格好をしておるのじゃ。乳とおまんこが丸出しではないですか】
しかし、母が娘を叱るその口調は悦びに満ちていた。
「あっ、母上、お目覚めになられたのですか?」
お満が返したその時だった。控えの間の外でシコシコと再開していた瓶之真の手の動きがピタリと止まった。
「ぬぬっ、この気配は…」
興奮から一転、瓶之真は真剣な目で控えの間を睨んだ。
【うむ。よく寝たようです。されどお満。母の目覚めを待って、そのような淫らな用意いたすとは中々の親孝行ではありませぬか。早く竿之介を呼んでこんな風に見せてあげなされ】
お満の脳内で、お敏の像が足を開いて中身を見せながら期待感を示した。
「違いまする。これは母上のためではありませぬ。小股家再興のためのお稽古着…のはずです…」
否定しつつも、お満自身も自信が持てなくなってきた。何せ、見下ろせば桃色の乳首が、さらに胸越しに覗き込めば卑猥な割れ目が晒されているのだから無理はなかった。
【へっ?小股家の再興?お満!まさか女を使って再興資金を稼ぐつもりではあるまいな。そのような事、この母は断じて許しませんよ!】
卑猥な事は大歓迎のお敏だったが、さすがに武士の娘が女を売り物にする事には反対だった。お敏は母親ならでわの反応を示した。
「違いまする。これも憎き荒利取之助を上意討ちするため。そのための剣のお稽古着でございまするぞ!」
打っては返す。母親の強い口調に、反射的にムッとしたお満の口調も強くなった。
【はああ?戯けた事を申すな!どこの世に、おまんこ丸出しで剣の稽古をする道場があるというのじゃ】
「や、やはりそうですよね。わたしも何かの間違いだと思っていたところです」
さすがのお満も同感だった。
【まあよい。せっかくモロ出しなのだから、ちょこっとやってくれませぬか】
脳内のお敏の像が上目遣いで頼んだ。
「さて、何をでしょう?」
お満は惚けた。
【やあん、意地悪なんだからあ】
「人の頭の中でそんなに腰をクネクネしても無駄ですよ。お満はこれからお稽古なんですからね」
【やだやだやだあ〜】
相念の塊と化したお敏は、我慢する事ができなくなっていた。お満の頭の中でひっくり返り、
手足をバタバタさせて幼児のように駄々を捏ねた。
「あーっ!うるっさい!お満から出て行きなされ!」
お満が強く念じるとお敏はお満に憑依はできなる。
【ひぇー…】
お満の掛け声に反応したお敏の像が、渦巻きに飲み込まれるようにお満の脳内からかき消えた。するとその直後、霧状の物質がお満の剥き出しの割れ目からプシューッと蒸気のように噴出された。
「やあん、何よこれ〜」
勿論、それは頭の軽いお満しか見えない霊的な現象だった。
噴き出された霧状のモノが渦を巻いて一つに纏まり、やがて♀の姿となって現れた。
『う〜ら〜め〜し〜や〜』
現れたお敏は未練たっぷりの怨みの隠った目でお満を睨んでいた。しかし、その姿を見ていたのはお満だけではなかった。その恐ろしげな姿は、研ぎ澄まされた感覚を持つ目がはっきりと捉えていた。
「な、なんと面妖な!」
幾ら助平でも瓶之真はやはり厳しい修業を積んだ剣者だった。修行を重ねるに連れて鋭敏になった感覚が、この世に在らざる者の存在を感知するようになっていったのだ。過去、目にした魑魅魍魎の中には人に厄をもたらす存在も居たが、剣者たる瓶之真はそれらと対峙しては、その尽くを退ける力を持つに至ったのだ。