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薄氷
【SM 官能小説】

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薄氷-13

雨上がりの黄昏は、冬だというのに暖かかった。薄氷は水たまりとなって澱んでいる。窓から遠くに見える葉の抜けたポプラの樹はまるで魚の骨のようにそそり立っている。
女はいつもの距離をとった席ではなく、体を寄せ合うようにあなたの隣の席に座った。歳の離れた男と女が寄り添った姿を周りの客もいつもの中年のウエイトレスも気にとめる様子はなかった。
その女を抱きたくなったとき、彼女がいつも目の前にいることが不思議に思えた。あなたに向けて開かれようとしている女の軀(からだ)は、閉じられたあなたの記憶を、まるで軟体動物の臓腑の中に吞み込んでいくようだった。あなたは女と交わる意味を曖昧にしたまま、いつものホテルに向かった。
肩紐がずり落ちた白いスリップの中から女の弾けるような乳房がのぞき、柔らかい太腿の付け根を覆う薄いショーツに柔らかな陰毛の翳りがうっすらと浮かんでいた。
あなたは女をベッドに押し倒し、強く抱きしめる。じっと見つめる女の瞳が、胸の奥を鷲づかみにするくらい迫ってくる。愛おしく首筋を愛撫し、スリップを剥ぎながら溶けてしまいそうな豊満な乳房に顔を押しつける。しっとりとした肌から絡みつくような匂いが漂い、女の胸の鼓動が愛撫するあなたの唇に伝わっている。なぜか氷のような冷たさを感じる肌に唇が微かに強ばる。

不思議な情感を湛えた彼女の瞳の中で、深い翳りが溶け始めていた。あなたの胸の鼓動は、やがて小刻みに脈打つ血流に変わる。まるで薄い皮膚を剥ぐように女のショーツを脱がせていく、柔らかな太腿の付け根には、どこか犯し難いくらい淡い絹糸のような淡い陰毛が、あなたを遠いまどろみに誘うように悩ましくなびいている。
開いた女の太腿の内側にいつもの小さな痣が見える。その痣は隠されているのではなく、あの男をあなたに思い出させるために女が故意にその痣をあなたに見せているようにさえ思えた。
あなたは女の開いた白い太腿のつけ根に鼻を寄せた。鼻腔から肺に続く気管に女の匂いが螺旋状にねじれ、吸い込まれていく。匂いはあなたの口の中に唾液を澱ませる。鼻先をこすりつけ、唇に陰毛の湿り気を嗅ぎ取りながら、可憐に閉じられた割れ目を唇でなぞっていく。女の肉の溝が蕩けるような光沢にきらめいている。
やがて女の肉の合わせ目は、しっとりとした蜜汁を含みながら貝の呼吸を始める。そんな憧憬をもしかしたら、ずっと以前、妻の太腿のあいだに見たのかもしれないとあなたは思った。ただ、妻の蜜巣の匂いも、果肉の色彩も、舌触りも、呼吸の音も、あなたの記憶のどこにもなかった。おそらくあなたが妻と結婚してから別れるまで。そして今でもその記憶は不在だった。

女はあなたの身体の上にのしかかり、あなたをベッドに押しつけると、ゆっくりと脚を開き、あなたの顔の上に白い腿を拡げて跨った。そして繁みに覆われた割目をあなたの唇に強く擦りつけるように太腿であなたの顔を挟む。
のけ反った女の薄い乳房が視線の先で微かに揺れる。あなたは跨った女の尻を両手で包み込む。指が張りのある肌に喰い込む。柔らかな陰毛があなたの頬をくすぐる。唇が女の肉の合わせ目と絡み、舌先が少しずつ溶けていく。
自分でも戸惑うような滑らかな舌の動きは、やがて女の敏感な部分へ徐々に入り込み、滲み出した蜜液を啜ろうとしている。差し入れられた舌が、皮を剥かれた甘い果実を舐めるように蠢き、ゆっくりと豆に吸いつく。


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