「こんなとこ、はじめて」-1
さっきまで夕日が建物を照らしていた街は、数分で薄暗くなった。
友達の家で、プログラムでロボットを闘わせる遊びに夢中になり「暗くなったら帰ってきなさい」という門限を忘れかけていたs6年の某哉は、公園に急いでいた。
「こんな時にオシッコたまってしまった……」
この公園のトイレは明るく管理がいい。某哉があと数mで用が足せると思った時、
「ちょっと、少年!」某哉を呼びとめる声がした。前を見ると制服の女学生、某葉が笑顔で近づいてきた。
(わ、)某哉はその制服に覚えがあった。(某点学院のk等課の制服だ……)そこは家系も成績も「上流」のレベルの学生が集う学校として知られていた。
「少年、オシッコしたいんでしょ?」某葉が言った。「どうせするんなら、こっちに来てしてよ。」某葉は某哉の手をとって、トイレの前の道を走りはじめた。某哉は手を引かれて走るうちに、心にモヤモヤがわいてきた。
(これって『ドシ場』の方へ行く道じゃないのか……?)
『ドシ場』とはかつて公園の設備が建っていた場所である。設備自体はかなり前に撤去されたが、基礎の部分が残りちょっとした広場になっている。
だが、年を経てその周りの木々が森のようになってくると、そこは素行の良くない若者の集まる場所になった。
そして、しばしば子どもがここに連れこまれて金品を脅し取られることから『脅し場〜ドシ場』と呼ばれるようになっていた。
某哉はドシ場への道に不安になりながらも、某葉の強い「恋人つなぎ」に(このひとは、悪いひとじゃない)と、その暖かさを楽しんでいた。
某哉たちはやはりドシ場の近くにやってきた。
しかし、ドシ場を隠す植え込みの前に立つc等課の某花が笑顔で二人を案内するのを見ると某哉は(やっぱり、悪いひとなんかじゃない)と感じていた。
三人が木々をすり抜け、設備の基礎の古びたコンクリートにおおわれた地面が見えた時、某哉は息をのんだ。
まず目についたのは、全裸の身体に縄をかけられ、口に紙コップをくわえさせられた女のひとだった。
「お前」某葉に、加熱タバコを持つ制服女が声をかけた。「オトコつれて来いって言ったけど、ちっちゃ過ぎるだろ!」
「いえいえ、某恵さん。」某葉は某哉を抱き上げるように彼女の前に連れていった。「こんな子だから、活きのいいチンチン持ってますよ!」
そんな某哉たちをカメラをかまえて撮影する、メガネの三つ編み女某沙がいた。
某沙は表情を変えず黙って、カメラの画面を見つめていた。