一-2
仕事が終わったらそのまま来てね、と言われたが
流石に一日中働いて汗まみれの体のまま行くのは気が引けたので自宅でシャワーを浴びてからあゆみの家へと向かう。
女性の家に上がるとは、つまりそういうことがあるのだろうかと考えるのは若い男として自然なことだろう。
しかし男は、あの美しい大人の女がまだ学生の自分を相手にするわけがないと、すぐにその期待は押し込めた。
あゆみは先程の装いのまま出迎えてくれ、
初めてあゆみの家の玄関から先を見た。
シンプルにウッド調で統一された2LDKの部屋である。
入ってすぐの部屋には料理の並んだダイニングテーブルがあり、その脇に2人がけのソファがあった。
奥の部屋は戸が閉められて見えないが、おそらく寝室なのだろう。
「ごめんね、人が来るなんて滅多にないから、座るのソファで隣同士なんだけど、嫌じゃないかな?」
嫌なわけがなかった。こんな美人に手料理をもてなされ、並んで食事をするなど上京前に夢見ては打ち消してきた儚い妄想が現実になったのだ。